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閻魔様からのデートの申し込み
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閻魔様と雑貨屋さんへ。たぶん、おかしな組み合わせ。
かわいい商品がずらりと並んだ店にいる閻魔様が滑稽でこっそり笑った。冷たい印象のイケメンさんと見えなくもないが、閻魔様である。
「鼻がもげそうな匂いだ。表にいる」
「了解です」
いい香りが苦手なのだろうか。雑貨屋さんは甘くていい匂いなのに。
私は自分のものをぱぱっと買った。かわいいものがいいけれど、ここは実用性を選ぶ。買い物はそんなに悩まないほう。でも、収入がないのだから持って来たお財布のお金が減るだけ。芯しん亭にいれば減らない。使うところもない。
修行の身だから、賃金は発生しないのだろうか。そんなの違反だろうが、地獄に法はない。無法地帯なのに暴動が起きないのは閻魔様が立派だからだろう。地獄の鬼には給与の制度があるようだ。
「お待たせしました」
閻魔様は車の中でちゃんと待っていてくれていた。服も地獄と違って仰々しくない。シャツに薄手のジャケット。水色が似合っている。
「次はどこだ?」
「私の行きたいところばかりいいのですか?」
「構わん」
「じゃあ電気屋さんへ」
洗濯機は無理でもオーブンくらいなら車に積めそうだ。ホットプレートを選ぶつもりがホットサンドメーカーも捨てがたい。タコ焼き器もほしい。ジューサーも必要だろうか。
そうこうしていたら、美顔器まで欲しくなる。最新のダイエットマシーンは板のようなものに乗っていればいいだけらしい。鏡に映った自分を見て太ったんじゃないかと感じる。あっちには姿見がないんだもの。着物って締めてはいるが、帯の分だけ自分に甘くなる。
ジューサーよりはブレンダーのほうが凌平くんは使うだろうか。あれこれ選別して、お財布と相談。
「足りぬなら出してやろう」
閻魔様が札束を出す。ブラックカードもお持ちだった。
どこからお金が出ているのだろう。閻魔様にとってもお裁きは仕事なのだろうか。あの紙の六文銭がどこかで換金できるのだろうか。
「大丈夫です」
閻魔様に恩を売りたくない。
「つまらぬ女子(おなご)だ」
「すいませんね。あ、あっちも見ていいですか?」
「好きにせい」
電気店は無臭だ。というか、閻魔様が空気清浄機に興味津々。
「買おうかな」
花粉症と大きな文字で表記してある。閻魔様も現代病に悩まされているのかしら。
エレベーターの前を通りながら鏡にうつった自分たちを見て、ちょっとデートっぽいと思ったりした。
「危ないぞ」
と閻魔様に引き寄せられたら勘違いしてしまう。地獄だと、あまり休日気分が味わえないので。閻魔様って地獄の鬼たちでハーレムを作っていたりするのだろうか。
大部屋用と納屋にランタン。芯しん亭にもあったらきれいだろうか。蝋燭よりは安全だろう。電池はあっちにも売っている。
「庭にさして置ける照明もいいな」
「儂も買おう」
そう言って、手にしていたカゴを奪われ支払いもされてしまった。あっちは領収書とか必要ないのだろうか。経費の感覚がない? その前に役所がないのか。
「一心のところから昨年は二人もうちに召し抱えたから何か買ってやらねば」
それでみんな忙しいのか。文子さんは私が消してしまったし。物でどうこうしようなんてちょっと違うのでは? 芯しん亭で働くには逃げないことが前提だろう。鬼でも悪いことをしない人。そういう人はきっと地獄でも重宝される。余暇が少ないから退屈な時間を持て余さない人。
澪さんはいつも読書、麻美さんはストレッチをしている。
かわいい商品がずらりと並んだ店にいる閻魔様が滑稽でこっそり笑った。冷たい印象のイケメンさんと見えなくもないが、閻魔様である。
「鼻がもげそうな匂いだ。表にいる」
「了解です」
いい香りが苦手なのだろうか。雑貨屋さんは甘くていい匂いなのに。
私は自分のものをぱぱっと買った。かわいいものがいいけれど、ここは実用性を選ぶ。買い物はそんなに悩まないほう。でも、収入がないのだから持って来たお財布のお金が減るだけ。芯しん亭にいれば減らない。使うところもない。
修行の身だから、賃金は発生しないのだろうか。そんなの違反だろうが、地獄に法はない。無法地帯なのに暴動が起きないのは閻魔様が立派だからだろう。地獄の鬼には給与の制度があるようだ。
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閻魔様は車の中でちゃんと待っていてくれていた。服も地獄と違って仰々しくない。シャツに薄手のジャケット。水色が似合っている。
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「構わん」
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ジューサーよりはブレンダーのほうが凌平くんは使うだろうか。あれこれ選別して、お財布と相談。
「足りぬなら出してやろう」
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どこからお金が出ているのだろう。閻魔様にとってもお裁きは仕事なのだろうか。あの紙の六文銭がどこかで換金できるのだろうか。
「大丈夫です」
閻魔様に恩を売りたくない。
「つまらぬ女子(おなご)だ」
「すいませんね。あ、あっちも見ていいですか?」
「好きにせい」
電気店は無臭だ。というか、閻魔様が空気清浄機に興味津々。
「買おうかな」
花粉症と大きな文字で表記してある。閻魔様も現代病に悩まされているのかしら。
エレベーターの前を通りながら鏡にうつった自分たちを見て、ちょっとデートっぽいと思ったりした。
「危ないぞ」
と閻魔様に引き寄せられたら勘違いしてしまう。地獄だと、あまり休日気分が味わえないので。閻魔様って地獄の鬼たちでハーレムを作っていたりするのだろうか。
大部屋用と納屋にランタン。芯しん亭にもあったらきれいだろうか。蝋燭よりは安全だろう。電池はあっちにも売っている。
「庭にさして置ける照明もいいな」
「儂も買おう」
そう言って、手にしていたカゴを奪われ支払いもされてしまった。あっちは領収書とか必要ないのだろうか。経費の感覚がない? その前に役所がないのか。
「一心のところから昨年は二人もうちに召し抱えたから何か買ってやらねば」
それでみんな忙しいのか。文子さんは私が消してしまったし。物でどうこうしようなんてちょっと違うのでは? 芯しん亭で働くには逃げないことが前提だろう。鬼でも悪いことをしない人。そういう人はきっと地獄でも重宝される。余暇が少ないから退屈な時間を持て余さない人。
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