23 / 99
見誤る
22
しおりを挟む
そのあとで、芯しん亭の大女将の力を知った。人の記憶を操作できるのだ。よって、文子さんはいい人ができて嫁に行ってめでたしめでたしとみんなは思っているようだった。
「名智には効かんし、一心と心角は本当のことを知っておいたほうがいいと思って記憶はそのままにしておる」
とこっそり事の経緯を話された。
「わかりました」
名智というのは向かいの清しん亭の女将さんだ。双子だからだろうか。彼女には大女将と違い特別な力はないらしい。
知ってしまうと大女将のことが怖くなる。私の記憶を上書きして、もう一心さんと結婚したことにしてしまうかもしれない。
自分の力も怖い。人を見る目もないらしい。文子さんのこと、とてもいい人だと思っていた。ぱきぱきと段取りよく働き、みんなのためによく動く人だった。そんな人を、自分の意志とは無関係に消してしまった。文子さんのこと、あの瞬間だけ怖いと思ったことだけは確か。それに私の力が反応したのだろうか。
今日もテーブルに飾られた花はきれいに咲いていた。
文子さんの気持ちは嫉妬だったのだろうか。それとも一心さんへの愛だろうか。
『闇送り』という単語を知ったのは奇しくも彼女の残していった本の中だった。
「名智には効かんし、一心と心角は本当のことを知っておいたほうがいいと思って記憶はそのままにしておる」
とこっそり事の経緯を話された。
「わかりました」
名智というのは向かいの清しん亭の女将さんだ。双子だからだろうか。彼女には大女将と違い特別な力はないらしい。
知ってしまうと大女将のことが怖くなる。私の記憶を上書きして、もう一心さんと結婚したことにしてしまうかもしれない。
自分の力も怖い。人を見る目もないらしい。文子さんのこと、とてもいい人だと思っていた。ぱきぱきと段取りよく働き、みんなのためによく動く人だった。そんな人を、自分の意志とは無関係に消してしまった。文子さんのこと、あの瞬間だけ怖いと思ったことだけは確か。それに私の力が反応したのだろうか。
今日もテーブルに飾られた花はきれいに咲いていた。
文子さんの気持ちは嫉妬だったのだろうか。それとも一心さんへの愛だろうか。
『闇送り』という単語を知ったのは奇しくも彼女の残していった本の中だった。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
3
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる