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かぼちゃの実がどんどん大きくなって引っ張られたツルがかわいそうになる。実の重さで切れてしまうんじゃないだろうか。
「じい、もう収穫していいのでは?」
空中栽培だから実が落ちたらきっと割れる。
「ルラル様、まだですぞ。ここがコルクのようになってからです」
「まだ?」
もういいのではないだろうか。収穫してから追熟すると本にも書いてあった。
「早く取りすぎると実の水分が多いのです」
「そう」
割れたら困るので下に藁を敷いて保護。念のため、実を紐で括る。
かぼちゃって、形がかわいい。芋や大根は土の状態によっては曲がったり石があったら二股になったりぼこぼこになったりもする。かぼちゃは上から見たらまん丸で、横から見たら楕円形。空中栽培のものはそれが顕著。りんごなどの果実はもっと盾にふっくら。なんだろう、この独特な形は。色もこっちは濃くて、この部分は薄い。日当たりの問題かしら。
「これは腐りそうそうなので」
とトベールじいがひとつくれた。
私が作っているのより大きめ。確かに土についていた部分が変色している。てっきり重さでそうなってしまったのかと思ったが、太陽の光を存分に浴びたところが緑になるらしい。実や葉の影になってしまうと黄色いまま。
日々、学びである。部屋に戻る前にノートに書き足す。
さてさて、この子はどうやって食べようか。グラタンにしてもらおうかしら。潰してコロッケ、いやサラダもスープも食べたい。素材を活かし、素揚げもいいな。
「嬉しそうな顔だな。婚姻が決まったときよりも嬉しそうにしてないか、トベール?」
アルゼット様だった。また仕事を放棄していらっしゃる。
「もうお仕事してください。怒りますよ」
わざわざ会いに来なくても夜はどうせ一緒に過ごすのだ。
「怒られるのは嫌だから、職務をしてくる。俺を叱れるのはお前だけだな。じゃあまた夜な、ルラル」
私だって畑にばかりはいられない。勉強に礼儀作法にダンスまで。誰と競うでもなく、これは己との戦い。
私たちよりも婚儀の対応に追われるソフィアさんたちのほうがバタバタしている。
「ルラル様、生地だけでも選んでくださいよ。ベールの柄と長さも職人に発注するので急いでください」
「この国のあなたに決めてもらいたいわ」
本心なのにただの面倒臭がりと思われている。
「じゃあ、これにこれ。ベールの長さはここからドアぐらいでようございますか?」
「長すぎるわ。7尺でいいのでは?」
「その倍でも短いくらいですわ」
侍女たちの気合の入りようが怖い。髪の見本を見せられて、
「鳥かごみたい」
と言ってしまった。
私のためにと体に塗り込むオイルや、それって夜着なの? と思うようなスケスケの衣類を取り寄せて、絶対に楽しんでる。
女の人が楽しそうに働く姿を見るのは心地いい。
「じい、もう収穫していいのでは?」
空中栽培だから実が落ちたらきっと割れる。
「ルラル様、まだですぞ。ここがコルクのようになってからです」
「まだ?」
もういいのではないだろうか。収穫してから追熟すると本にも書いてあった。
「早く取りすぎると実の水分が多いのです」
「そう」
割れたら困るので下に藁を敷いて保護。念のため、実を紐で括る。
かぼちゃって、形がかわいい。芋や大根は土の状態によっては曲がったり石があったら二股になったりぼこぼこになったりもする。かぼちゃは上から見たらまん丸で、横から見たら楕円形。空中栽培のものはそれが顕著。りんごなどの果実はもっと盾にふっくら。なんだろう、この独特な形は。色もこっちは濃くて、この部分は薄い。日当たりの問題かしら。
「これは腐りそうそうなので」
とトベールじいがひとつくれた。
私が作っているのより大きめ。確かに土についていた部分が変色している。てっきり重さでそうなってしまったのかと思ったが、太陽の光を存分に浴びたところが緑になるらしい。実や葉の影になってしまうと黄色いまま。
日々、学びである。部屋に戻る前にノートに書き足す。
さてさて、この子はどうやって食べようか。グラタンにしてもらおうかしら。潰してコロッケ、いやサラダもスープも食べたい。素材を活かし、素揚げもいいな。
「嬉しそうな顔だな。婚姻が決まったときよりも嬉しそうにしてないか、トベール?」
アルゼット様だった。また仕事を放棄していらっしゃる。
「もうお仕事してください。怒りますよ」
わざわざ会いに来なくても夜はどうせ一緒に過ごすのだ。
「怒られるのは嫌だから、職務をしてくる。俺を叱れるのはお前だけだな。じゃあまた夜な、ルラル」
私だって畑にばかりはいられない。勉強に礼儀作法にダンスまで。誰と競うでもなく、これは己との戦い。
私たちよりも婚儀の対応に追われるソフィアさんたちのほうがバタバタしている。
「ルラル様、生地だけでも選んでくださいよ。ベールの柄と長さも職人に発注するので急いでください」
「この国のあなたに決めてもらいたいわ」
本心なのにただの面倒臭がりと思われている。
「じゃあ、これにこれ。ベールの長さはここからドアぐらいでようございますか?」
「長すぎるわ。7尺でいいのでは?」
「その倍でも短いくらいですわ」
侍女たちの気合の入りようが怖い。髪の見本を見せられて、
「鳥かごみたい」
と言ってしまった。
私のためにと体に塗り込むオイルや、それって夜着なの? と思うようなスケスケの衣類を取り寄せて、絶対に楽しんでる。
女の人が楽しそうに働く姿を見るのは心地いい。
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