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 目を覚まして手を握る。しきたりなのかしら。

「おはようございます」
「おはよう。むにゃむにゃとよだれをたらしながら寝言がすごかったぞ」
 おいしい夢を見ていたとは言いづらい。

 アルゼット様は朝食も一緒に取ることが増えた。
 遠くの席に座るユウカ様とソラカ様だってアルゼット様を愛していたら私の排除に動いているはず。
 親もいないし、そう思うと途端にアルゼット様が王帝なのに可哀想に見えてきた。強がっていなければならない理由もわかるわ。

「兄上様―」
 駆け寄ってくる女の子がどんどん大きく見える。
「クレア、どうした?」

 見間違いではなかった。アルゼット様と同じくらいの背丈。
「夏休みでございます。寄宿舎から戻ると手紙を書いたはずですわ」
「そうだったが、まだ朝だぞ」
「やっとあの監獄のような学校から抜け出せるのです。お友達も昨夜から馬車を呼び寄せて、早いうちに里帰りしましたのよ」
 顔もアルゼット様に似ている。

「バンロード国、第三王女ルラルと申します」
 席を立ち、私は挨拶をした。
「兄上様の妃を選んでいるのよね。妹のクレアです。お見知りおきを」
 きりっとした佇まいに、城の侍女もぴりっとする。こういう人は城には必要だ。

 城が自分の家だから自由に振る舞って当然。クレア様は妃候補の部屋を訪れているようだった。少しお話をしたユウカ様は、
「値踏みをされているようで感じが悪かった」
 と言った。
「まぁ、小姑ってやつですよね」
 ソラカ様も対応を失敗したと口を濁す。

 なぜか私の部屋には来ない。私だけ階が違うからだろうか。クレア様は妃候補よりもアルゼット様にかまってほしいようだった。
「兄上様、山登りへ行きましょう」
 と誘っても、
「俺は忙しいんだ」
 と一蹴されていた。
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