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 勉強に追われる私とは違い、結婚前からサラ様は花嫁修業をしており、勉強という勉強はすんでいるらしかった。日がな一日、空を見て過ごしていることが多いそうだ。そんなの、勿体ない。土は耕せば野菜を実らせる。人間も動かねば朽ちるだけ。

 サラ様の苦しみを取り除いてあげたいな。

「それは簡単だ。お前が俺を受け入れればいいだけのこと」
 アルゼット様が言う。疲れているようで、ベッドに入るなり目を閉じていた。
「それはどういう意味ですの?」
 私が決断をすることで、助かる人もいるのだろうか。

 珍しい。アルゼット様がもう眠っている。知らなかったのだが、城の中でいろんなことを決めたり書類に目を通すだけでなく、あちこち視察などにも出かけているらしかった。それで遠方から珍しいかぼちゃを持ってきてくださるのね。

 あっちではがけ崩れ、こっちでは民が暴徒化。考えなくてはいけないことがたくさんあるから妻選びなんてどうでもいいのかもしれない。

王帝だからいつも命を狙われているってどういう気持ちなのだろう。王女だけれど私はその点は理解してあげられない。
 今、私がアルゼット様を殺してしまえば王帝になれるのだろうか。違う。王帝を殺したら、罪になる。僅かな殺気を感じて瞼をぴくりとさせる。面白い人。

「おやすみなさい」
 こめかみにキスをして眠ったらこの国のお菓子を食べる夢を見た。パンに砕いたナッツがぎっしり入っていて、甘くて大好きなの。トベールじいもミスズも優しい。この国を好きだとは断言してもいい。でもまだあなたを好きかははっきりしない。

 このままでは知らず知らずのうちに誰かを傷つけてしまうかもしれない。
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