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 花はどの国でもきれい。この国の花は茎が太く艶やかなものが多い気がする。城の周りは特にきれい。要人をもてなすからだろうか。あんな顔してアルゼット様が好きなのかもしれない。大ぶりの白い花はたったの一日しか咲いていなかった。美しさを保つのは大変なのね。

 王帝との時間を過ごした時間すら候補者たちにとっては試験の一環だと思っている。だからドキドキしながらみんな結果待ち。
「私は、いつでしたか?」
 夜、また私の部屋に滞在するアルゼット様に聞いた。もしかしたらこの部屋が最も警備がしやすいのかもしれない。

「お前は、今だ」
 こんな添い寝でいいのだろうか。2人でゴロゴロしながらお話ししているだけ。
「そんな、適当な」
「王帝にとって睡眠は大事だ」
「確かに」
 私の横でくつろぐ姿を見るのはかわいらしい。

「それに、お前の特技はなんだ? 俺は畑なんぞに行きたくない」
「なんぞって、畑で作られたものを食べているくせに」
 そんな言い草ひどい。
「それはそうだな。じゃあ己の長所でも申してみろ。他の女は『子をたくさん成します』とか『国が後ろ盾になる』と言ってたぞ」
「お金はうちは無理ですよ。幼い弟が3人もおりますし」
「子だくさんは利点だな」
「私の母は女の子ばかり3人です。兄と弟は父が他の妃に…」
 つまるところ、兄と弟たちとは半分しか血がつながっていない。それでも似ているから不思議。

「うちは基本的には第一子が王帝につく。女でも」
 アルゼット様が私の腹を抱き締めながら仰った。こうされるとあなたに寄りかかるしかない。
「そうなのですね」
 他の国ではそうらしいと聞いていた。一番上の姉の嫁ぎ先もそう。女王の弟に嫁がされ気苦労が絶えないと手紙に書いてあった。兄も婿に取られたから王女を助けているのだろうか。帰ってこないところから察するに、どちらも不仲ではないのだろう。

 私の長所を言わなくちゃと考えているうちに寝てしまった。いつでも眠れる、それが長所だと思ってください。
 実際のところ、秀でていることがない。というか、他の候補者が素晴らしすぎる。今残っている人ならば誰でも妃に向いている。私以外は。

 数日経っても勉強続けで特に結果は開示されず、さすがに妃候補たちもピリピリと苛立つ。紙のテスト問題なら翌日には返されるから。
「なにか失礼を働いたのでは…」
 いつもは堂々としているユウカ様まで神妙な面持ち。これも忍耐力を競うテストなのかもしれない。

 正妃の座は一人だけ。アルゼット様だって国のために妃を選ぶ重要性はわかっているはず。
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