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 夕方、原沢さんとラクの散歩に行った。あのカーブを通ったけれど、男の子には会わなかった。あのどきっとした気持ちは運命的なものだろうか。その点についてはむうちゃんに聞けない。たーくんはむうちゃんの運命の人だったかもしれない。それなのに殺されちゃって、その場合は運命の人から降格するのだろうか。
 ママに相談するほどのことじゃない。原沢さんに聞いてみようか。しかしご飯のときはむうちゃんがいて、話をするタイミングがない。

 もったいないな。出っぱなしの温泉を見て、今日も思った。あとどれくらいしたらそう思わなくなるのだろう。止められないのだからしょうがない。たーくんが殺されたことも止められなかったのだろうか。むうちゃんは傍にいたのに、身を呈してまでたーくんの命を守ろうとしなかったのだろうか。愛は関係ないのかな。お金を使いこまれたり浮気をされて、とっくに愛はなかったのかな。それなのに一緒に暮らしていたのは惰性だったのかな。子どもだから何も聞けない。
 むうちゃんは仕事が手を離せないらしく、私は広いお風呂に一人でのんびり浸かった。私は何かを考えようとしていた。でもそれがたーくんのことであるのかむうちゃんのことであるのか、両親のことなのか見当もつかない。自分のことでも考えてみるか。この歳にしては大人びているのかもしれない。友達たちはがちゃがちゃと騒ぎすぎている。敏感。それに急いでいる感じがする。私が鈍感なのかな。普通の標準。成績で悩んだことはない。体も普通。お金に困ったこともない。イコール、幸せということだ。

 あの男の子、どの辺に住んでいるのだろう。周辺には民宿が多いから同じように温泉に浸かっているといいな。
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