包んで、重ねて ～歳の差夫婦の極甘新婚生活～

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　帰りの電車ではよのぎさんがうとうと。身長差があるはずなのにどうして肩にしっくりなのだろう。座高の問題か。

「初夏の風　美人の頬を　撫でたがる」
　よのぎさんを真似て、一句。

　この歳になってもちゃんと生きようと思う。妻の寄りかかる頭が重いから。小顔なのに重いのだ。それを受け止められる人でありたい。支え続けていたい。


「人生はプラマイゼロって言うもんね。昔の私、勝手に苦悩してくれてありがとう」

　家に着くまでの道でよのぎさんが言った。辛いときは誰かに相談できたらいいけど、そういう人がいない場合はどうしたらいいのだろう。公的機関があることは知っている。見ず知らずの人と話すことが苦手な人もいる。

　服作りが仕事でよかった。いつでも逃避できた。

　今は坂道に疲れたらよのぎさんが手を引いてくれる。僕の人生はもう充分プラスです。マイナスなことに耐性がないから、もっとお賽銭を入れてくればよかったと後悔。また行こう。君の体温を感じるくらいだからそんなにすぐは死にそうにない。