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手をひかれ、森を駆け抜ける

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 アメリアは貨幣が入っている革袋を懐へとしまうと、森の中を歩き始める。

 この森には昔からの友達が住んでいる。まずは、その友達に会おうと思ったのだ。
 そういえば侯爵家に引き取られるとき、ちゃんとお別れを言えていなかったなあ、今でもそのことについては心残りだった。
 最後にあったのが数年前だから・・もしかしたら私のこと忘れているかもしれない。

 そんなことを考えていると、前方の草むらがガサガサと音を立てたのだ。
 すると数人のガラの悪そうな男たちが道を塞ぐように姿を現す。
 顔に傷がある人や、手に刃物をもちちらつかせている人たちもいる。いかにもガラが悪く盗賊のようだ。

「おじさん達って、もしかして盗賊って呼ばれる人たちなの?」

 アメリアがキョトンとした顔で、小首を傾げ聞いてくると、どっと笑い声が上がる。

「よくわかっているじゃねえか、なら話が早えな・・。おとなしく俺たちについて来れば命までは取らねえ、その代わり金目のものは全て渡してもらうがな、クククッ」
「ねえ、おじさん達・・悪いことは言わないから、すぐに森を出て行った方がいいわ」

 盗賊たちの高圧的な態度に、アメリアは怯えるどころか場違いにも、心配そうに声をかけたのだ。

 「あぁ、何言ってるんだ!この女、自分の立場がわかっているのか?」
 「そうじゃなくて・・おじさん達、つい最近この森に来たばかりなんじゃないの」

 「おお、よく知っているな。実は山向こうで軍による盗賊狩りがあってな。命からがら逃げてきたばかりなんだよ。ちょうどいい森があったからここの新しい根城にしようと思って・・いてっ」
 「馬鹿野郎!余計なことをぺらぺらしゃべるんじゃねえ」

 盗賊の頭のような人物に、子分らしき男は小突かれたのだ。

 やっぱり――だからこの森のこと知らないんだ。
 アメリアは盗賊たちに憐れみの目を向けるとため息を吐く。

「この女!下でに出てれば調子に乗りやがって・・少し痛い目みないとわからないようだな」

 仕方がないよね・・悪い人たちのようだし痛い目に遭わないときっと理解できないんだ思いアメリアも決意を固める。
 そして盗賊たちが、刃物を振り上げ彼女に襲い掛かろうとした時だった。

 ――ボワッンン

 白い煙が突然、辺りに広がったのだ。煙幕のようだ。

「・・!」

 アメリアは拳を握りしめて、盗賊を殴ろうとしたその手首を誰かに捕まれたのだ。

「話はあとだ・・・ここから逃げるよ!」

 盗賊たちとは違う、若い男の声のようだ。
 アメリアは頷くと若い男に手を引かれるままその場から逃げだしたのだ。
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