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翼が欲しいと思ったりした日
翼が欲しいと思ったりした日 side B
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好きな人がいます。
その人のそばにいたいと思います。
でも、その人とは離れていなくちゃいけなくて。
その人にも俺にも、生活ってものがあって。
わがままを言っちゃいけないのは解ってるけど。
それでもどうしても会いたい日っていうのがあって。
そんな日は。
背中に翼が欲しいなんて、思ってしまったりします。
あの人のところへ……飛んでいけるから。
「こら、歩……そんなところで寝てると風邪を引くぞ」
俺はソファーで転寝をはじめている彼にそう声をかけると、軽く頭を撫でてやる。
「う……まだ寝ない……」
歩は、はっと気が付いたようにソファーから飛び起きる。俺は軽く苦笑しながらまだ寝ぼけているだろう、彼の彼の頬をつまんだ。
「無理をするな。今日はサッカーの試合だったんだろう?疲れているに決まっているさ」
「うう……でも……」
そうは言いながらも、歩の瞼はかなり重いのだろう。彼の頭はまるで首の据わらない乳児のようにゆらゆらと揺れている。俺はそんな彼の姿が可愛くて、ちょっとだけ笑った。
「もう、限界だろう。心配しなくても、明日は一日キミに付き合えるから」
俺は彼の頭をあやすように叩くと、彼を無言でベッドへと促す。
「だって……せっかく義直と会えたのに……」
歩は俺に寄りかかるようにしてかろうじて起き上がると、ふにゃふにゃになってしまった声でそう呟く。
「…………」
「一週間ぶりに……会えたのに……」
「そうだけど」
「義直は……俺と違って忙しいし……」
「そんなことはないよ」
「そんなことなくはないよ。仕事……忙しいって聞いてるから……」
「……気にしなくてもいいのに」
そんなことを、誰に聞いたのだろう?まぁ、検討はついているけど。
「せっかく会えたのに……」
――トクン、と鼓動が跳ね上がったのを感じる。
「……歩」
「……いっぱい……話したいこと……」
――僅かに、体温が上昇したかのような錯覚を覚える。
歩は、無意識のうちにも俺の脈拍を早くする術を覚えているらしい。いや、そんな彼だから、俺が惹かれたのだろうか?
「ある……に……」
そうは言いながらも、彼の口調はままならない。でも、そんな彼がいとおしく思えて、俺は彼の頬に唇を寄せた。
「よしな……お?」
「まったく……そんなにふにゃふにゃで、キミは何を話そうというの?」
「う……だって……」
俺がそういうと、歩は少しだけ拗ねたように端整な眉を寄せる。キミは本当に……くるくると表情が変わるんだね。
「俺としては今日はゆっくり疲れを取って、明日を一日めいっぱい一緒にいる方が有効だと思うんだけれど?」
「…………」
「勿論寝ぼけた歩も可愛いから、このまま見ていても飽きないんだけれどね」
それは、本心だ。でも、それでは彼の身体がもたない。彼にはできる限り無理をして欲しくないから。
「さぁ、今日はもう寝よう」
俺は彼を少々強引に抱き上げると、寝室へと向かう。歩は日本人では長身な方だが、その身長の割に彼の体重は軽い。それに気がついたのはちょっと前の事だ。身長自体は俺と5~6センチしか変わらないのだが、洋服は2サイズ違う。前に歩に貸したシャツの肩幅の違いに、彼自身かなりショックを受けていたようだった。
――もし、翼があったら。
「わ……義直……降ろして……!」
「すぐ着くよ」
俺は軽く笑うと、歩をそっとベッドに降ろす。
「到着」
「は……恥ずかしいよ!」
「大丈夫、誰も見てはいないよ」
「そういう問題?」
そう言いながら膨れる歩の頬に一度キスをすると、俺は彼の髪を撫でる。
「そう、そういう問題なの。さ、早く寝なさい」
「……子ども扱いしてるだろ」
「してないよ」
「……本当?」
「ああ、本当だ」
ゆっくりと、彼の柔らかな髪を撫でる。こういう動作が、きっと子ども扱いをしていると思われる所以なのだろう。けれど、本当に子ども扱いをしているつもりはない。彼だから……触れたくなるのだけれど。でも、それを言葉で説明するのは難しい。
「……義直」
「なんだい?」
「……俺、義直の事好きだからな」
「…………」
「……義直は?」
「俺も歩が好きだよ」
「本当?」
「勿論、本当に」
――もし、自分の背中に翼があったら。
キミを包み込んで、君を傷つける総てのものから守りたいと思う。
「信じてくれないのかい?」
――でも俺は天使ではないから……俺には2本の腕しかないから。
この腕で君を守ろう、自分が存在する限り。
「おやすみ……歩」
自由に飛び回る……キミを守ろう。
キミが存在する限り……永遠に……。
その人のそばにいたいと思います。
でも、その人とは離れていなくちゃいけなくて。
その人にも俺にも、生活ってものがあって。
わがままを言っちゃいけないのは解ってるけど。
それでもどうしても会いたい日っていうのがあって。
そんな日は。
背中に翼が欲しいなんて、思ってしまったりします。
あの人のところへ……飛んでいけるから。
「こら、歩……そんなところで寝てると風邪を引くぞ」
俺はソファーで転寝をはじめている彼にそう声をかけると、軽く頭を撫でてやる。
「う……まだ寝ない……」
歩は、はっと気が付いたようにソファーから飛び起きる。俺は軽く苦笑しながらまだ寝ぼけているだろう、彼の彼の頬をつまんだ。
「無理をするな。今日はサッカーの試合だったんだろう?疲れているに決まっているさ」
「うう……でも……」
そうは言いながらも、歩の瞼はかなり重いのだろう。彼の頭はまるで首の据わらない乳児のようにゆらゆらと揺れている。俺はそんな彼の姿が可愛くて、ちょっとだけ笑った。
「もう、限界だろう。心配しなくても、明日は一日キミに付き合えるから」
俺は彼の頭をあやすように叩くと、彼を無言でベッドへと促す。
「だって……せっかく義直と会えたのに……」
歩は俺に寄りかかるようにしてかろうじて起き上がると、ふにゃふにゃになってしまった声でそう呟く。
「…………」
「一週間ぶりに……会えたのに……」
「そうだけど」
「義直は……俺と違って忙しいし……」
「そんなことはないよ」
「そんなことなくはないよ。仕事……忙しいって聞いてるから……」
「……気にしなくてもいいのに」
そんなことを、誰に聞いたのだろう?まぁ、検討はついているけど。
「せっかく会えたのに……」
――トクン、と鼓動が跳ね上がったのを感じる。
「……歩」
「……いっぱい……話したいこと……」
――僅かに、体温が上昇したかのような錯覚を覚える。
歩は、無意識のうちにも俺の脈拍を早くする術を覚えているらしい。いや、そんな彼だから、俺が惹かれたのだろうか?
「ある……に……」
そうは言いながらも、彼の口調はままならない。でも、そんな彼がいとおしく思えて、俺は彼の頬に唇を寄せた。
「よしな……お?」
「まったく……そんなにふにゃふにゃで、キミは何を話そうというの?」
「う……だって……」
俺がそういうと、歩は少しだけ拗ねたように端整な眉を寄せる。キミは本当に……くるくると表情が変わるんだね。
「俺としては今日はゆっくり疲れを取って、明日を一日めいっぱい一緒にいる方が有効だと思うんだけれど?」
「…………」
「勿論寝ぼけた歩も可愛いから、このまま見ていても飽きないんだけれどね」
それは、本心だ。でも、それでは彼の身体がもたない。彼にはできる限り無理をして欲しくないから。
「さぁ、今日はもう寝よう」
俺は彼を少々強引に抱き上げると、寝室へと向かう。歩は日本人では長身な方だが、その身長の割に彼の体重は軽い。それに気がついたのはちょっと前の事だ。身長自体は俺と5~6センチしか変わらないのだが、洋服は2サイズ違う。前に歩に貸したシャツの肩幅の違いに、彼自身かなりショックを受けていたようだった。
――もし、翼があったら。
「わ……義直……降ろして……!」
「すぐ着くよ」
俺は軽く笑うと、歩をそっとベッドに降ろす。
「到着」
「は……恥ずかしいよ!」
「大丈夫、誰も見てはいないよ」
「そういう問題?」
そう言いながら膨れる歩の頬に一度キスをすると、俺は彼の髪を撫でる。
「そう、そういう問題なの。さ、早く寝なさい」
「……子ども扱いしてるだろ」
「してないよ」
「……本当?」
「ああ、本当だ」
ゆっくりと、彼の柔らかな髪を撫でる。こういう動作が、きっと子ども扱いをしていると思われる所以なのだろう。けれど、本当に子ども扱いをしているつもりはない。彼だから……触れたくなるのだけれど。でも、それを言葉で説明するのは難しい。
「……義直」
「なんだい?」
「……俺、義直の事好きだからな」
「…………」
「……義直は?」
「俺も歩が好きだよ」
「本当?」
「勿論、本当に」
――もし、自分の背中に翼があったら。
キミを包み込んで、君を傷つける総てのものから守りたいと思う。
「信じてくれないのかい?」
――でも俺は天使ではないから……俺には2本の腕しかないから。
この腕で君を守ろう、自分が存在する限り。
「おやすみ……歩」
自由に飛び回る……キミを守ろう。
キミが存在する限り……永遠に……。
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