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パパラッチフィーバー!

パパラッチフィーバー!第二章 最終話-2

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ピピピピピピピピピピ!!
「ーー?!」
おれは鳴り響くスマホの音に驚いて目を開くと、目に飛び込んできたのは見慣れた天井だった。
「ーーゆ、夢……」
おれはびっしょりかいた汗を拭うと、大きくため息をつく。
スマホの日付を見ると、今日は週間チャートが発表される日だ。
……まったく、縁起でもない夢を見た。
おれはベッドから起き上がると、流れ落ちる汗を拭う。
おれは嫌なことを振り払うように顔を洗うと、出かける支度を始めた。
おれたちは、事務所に着くと各々そわそわと落ち着かない様子で椅子から立ったり座ったりしている。
「おい、おまえら……少しは落ち着け」
そう言う一哉も、顔が硬っている。
おれは震える手を押さえつけると、椅子に腰掛けた。
「……雄谷は、皆さんに愛されてるんですね」
その様子を見て、浅見さんはにっこりと微笑む。
「え……あ……。あの、別に浅見さんが嫌なわけじゃないんだ!」
おれはそう言うと、浅見さんの方を向く。
そう、浅見さんはすごくいい人だし、有能だと思う。
敦士がいなければ、この人をメンバーとして慕っていただろう。
しかし、それよりも先に敦士と出会ってしまっていた。
苦しい時期を一緒に過ごした仲間として。
「ええ、わかってますよ。そして、皆さんがとても頑張ってきたことも。……大丈夫です、きっと一位取れますよ。そうしたら、ぼくも皆さんのお役に立てたことが嬉しい」
浅見さんの言葉に、おれたちは全員黙る。
発表まであと五分を切った。
おれたちはドキドキと破裂しそうな胸を押さえつけて、更新を待つ。
あと一分。
あと三十秒。
「…………出ました!速報……AshurA 『Do not believe』週間ランキング……一位です!!」
瞬間、おれたちは全員気が抜けたように座り込んだ。
喜びというより、ホッとした方が強い。
「皆さんどうしたんですか!喜んでください!一位なんです!ZIPSに勝ちましたよ!!」
浅見さんの言葉に、漸くおれたちは喜んで良い事態だという事に気がつき、お互いの顔を見合わせた。
「…………っし!」
誰よりも先に、優が拳を振り上げる。
それを皮切りに、おれたちは各々歓声をあげた。
「よっしゃああああ!」
「よおおおおし!」
「やったあああ!」
「うおおおおお!」
全員涙目でハイタッチをする。
それをニコニコと見ていた浅見さんがドアの外を見た。
「雄谷、いるんだろう?入ってこいよ」
その声におれたちは全員ドアを見る。
しばらくすると、静かにドアを開けて敦士が入ってきた。
その目には、おれたちと同じく光るものがある。
「皆さん……チャート一位……おめでとうございます!!」
「敦士ーー!」
「敦士!」
「いたんなら声かけろよ!」
「水くせえぞ!」
おれは、込み上げるものを飲み込むと、精一杯の笑顔を敦士に向けた。
「敦士……おかえり!!」
「凛さん……皆さん……ただいま帰りました!!」
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