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パパラッチフィーバー!

パパラッチフィーバー!14-2

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「あーあ。今日は午後からなのに早く起きちゃったね?」
優はそう言うと、肘をついて顎を支える。
「もっかい寝る?」
「ううん。……ねえ、凛のこと教えてよ」
「おれのこと?」
突如そんな事を言い出した優に、おれはわけがわからず言葉を返した。
「例えば、凛の初恋っていつ?」
「へ?」
突如始まった恋話に、おれはポカンと口を開ける。
「おれはね、幼稚園の頃、担任の先生が好きだったよ」
昔を思い出してそう言うと、優は懐かしそうに笑う。
「凛は?」
おれの初恋か……。
残念ながら、おれはいまだに恋というものをしたことがない。
前世から推しは沢山いたけどな。
雅紀の時から凛として今まで生きてきて、恋という恋をしたことが無いかもしれない。
ああ、でも。
「恋っていうか……単純に憧れっていうなら、いとこのお姉ちゃんだな。でも、恋ってものじゃない」
すごく優しくて、よく遊んでくれたから大好きなお姉ちゃんだった。
それだけだ。
「そう考えると、おれは……初恋もまだなんだなぁ」
いい歳の大人になって、初恋もまだだとか……優に笑われるかな。
おれは優をチラリと見ると、以外にも優は優しげな目でおれを見ていた。
「へぇ……初恋がまだ、か。凛らしいね」
なんだよ、おれらしいって。
おれが少し唇を尖らせると、優は小さく笑う。
「馬鹿にしてるんじゃないよ。かわいいなって思っただけ」
なんでそれがかわいいんだよ……。
お前のかわいいの基準がわからない。
「ねえ」
「何?」
「……凛の初恋、ちょうだい」
「……は?」
「凛のファーストキス貰ったし。初恋も欲しい」
不意に真剣な目をした優に、おれは心臓がドキドキとするのを感じる。
「な……」
おれは口をパクパクとさせると、視線を彷徨わせた。
「っていうか、もらう気満々だから。覚悟しておいてよね」
そう言うと、優はその端正な顔をにっこりと微笑ませる。
おれは顔面に熱が上がってくるのを感じると、視線を逸らした。
「凛……好きだよ」
そう言って、そっとキスをされる。
触れるだけのキス。
おれは既にそれだけで気持ち良さに反応してしまう身体を呪った。
「凛のファーストキスも、初恋も……その先の初めても、全部おれがもらうから」
そう耳元で囁くと、優はクスリと笑った。
おれはその色気のある声にゾクリと背筋に電流が走ったように感じると、身を捩る。
優はそんなおれを見て吐息だけで笑うと、おれの唇を自分の唇で覆った。
初めは優しく柔らかく触れていた唇が、次第に激しく重ね合わされる。
「……っ…」
おれは思わずピクリと身を跳ねさせた。
差し込まれた舌が歯列を這い、おれの舌を絡め取る。
ピチャピチャと水音が鳴るたびに、おれの背に電気が走ったような甘い感覚に翻弄された。
「……ゆ…う」
「……ふ。凛かわいいね」
名残惜しそうに唇を離すと、優はそんなことを言って笑う。
「それに、めちゃくちゃエロい」
「お、お前がエロいキスするからだろ!」
おれは赤くなる顔を押さえながら反論する。
「それは気持ちよかったってことでいい?」
「うぐっ……」
おれは言葉に詰まると優から視線を外した。
「ふふ。反応は上々。良い傾向だね」
おれは余裕ぶった優のおでこをピシャリと叩くと、背中を向けてスマホをいじる。
「ねえ、凛。怒った?」
優が焦った様子もなく、おれの腰に手を回しながらそう聞く。
怒ってないことなんかお見通しなくせに。
「……怒った」
おれは、思ってもない事を言うと、ぷっと頬を膨らませる。
「ごめんって」
優は耳元でそう囁くと、耳朶にキスをした。
「ねえ、どうしたら許してくれる?」
「……帝国ホテルのアフタヌーンティーで許す」
「オーケー。今度行こう」
優はそう言うと、おれの身体を自分の方へと向ける。
その目はとても優しくて、思わず見惚れてしまった。
「ねえ、他のことも聞きたい。凛のこと、知りたい」
「……どんな事?」
おれの頬を撫でながら、優はそうだな、と考えるような仕草を見せた。
「好みのタイプは?」
優の言葉に、おれは言葉を詰まらせる。
初恋もまだだと言うのに、そんなのわかるか!
強いて言えばおれだ、西園寺凛だ。
でも、それは推しであって恋じゃないもんなぁ……。
「まだ……わからないな。好きになった人がタイプだ、多分」
「えー」
優は残念そうにそう声を上げる。
「優は?」
「おれ?」
優はビックリしたように目を見開くと、おれの瞳を見る。
「おれも同じ。好きになった人がタイプ。つまり、凛」
そう言うと、優はおれの鼻をつんとつついた。
な、なんか改めて言われると照れる。
「……いい趣味してるじゃないか」
「うん、おれもそう思う」
おれは優の答えに少しだけ笑うと、ベッドから起き上がる。
「せっかく起きたし、朝ごはんでも食べに行く?美味しいフレンチトーストの店があるんだけど」
優の言葉に、おれは頷く。
決行までの間、少しくらいゆったりした時間があっても良いだろう……。
おれはそう考えて身体を伸ばした。
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