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パパラッチフィーバー!

パパラッチフィーバー!13-2

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綾斗は去っていく皆川の背を見送ると、次いでおれに向き直る。
「……何もされてないか?」
「されてない」
「よかった」
「おまえが言う?」
「……っ」
おれの言葉に僅かに眉根を寄せると、綾斗は視線を下げた。
「……すまない」
ちょっと意地悪が過ぎたか。
「ナンパはされた」
「っ!」
おれの言葉に眉を顰めると、綾斗は口を開きかけて閉じた。
「オッケーしてないから」
明らかにホッとした様子の綾斗を見て、おれはため息をつくとその背を叩く。
「ほら、撮影始まるぞ」
「ああ……」
番犬、ねえ。
今思えば、ああいう時必ず何処からともなく綾斗が現れて追い払ってくれてたな。
おれに悪い虫がつかないように、いつも目を光らせていたんだろう。
おれのためなのか、自分のためなのかは分からないが……。
なんにせよ、快適に過ごさせてもらっていたのは事実だ。
そこは感謝しよう。
「では皆さん、歌パートの撮影スタートします!」
プロデューサーの声に、メンバーが集まってくる。
skeleton headsの歌は割としっかり目のロックだ。
見た目はヴィジュアル系バンドのように派手だが、しっかり演奏技術も歌唱力もある。
おれはマイクを持つと、セットにスタンバイした。
AMBの音楽パートでは、基本的にゲストミュージシャンの曲をメインに歌う。
今回もskeleton headsの曲がメインだ。
他人の歌を歌うのはなかなかない機会だから、新鮮で良い。
おれはskeleton headsのヴォーカル上野遥希ことHARUと並んで目線を合わせる。
キューがかかり、前奏が始まった。
生バンドの演奏は心地よい。
皆川もあんなこと言わなきゃ良いミュージシャンなんだけどな……。

『頭がクシャクシャした時は
全部頭の中身をひっくり返して出してみな!
心がグチャグチャなった時は
全部心の中身を曝け出して見せてみな!
身体がソワソワした時には
身体中の力を全部全部弾けさせてみな!
bang!bang! bang!
悩んでたってイイことない
思った通りにやってみろ
 bang! bang! bang!
腐ってたってイイことない
周り気にせず生きてみな
 bang! bang! bang!
泣いてたってイイことない
さあ痺れる歌を歌おう』

間奏パートで皆川が接近してくる。
流石に撮影中に変な顔もできないし、仕方なく笑顔で乗る。
皆川はおれと背中合わせでギターを弾くと、最後におれの肩を組んで頬を合わせた。
このやろう、調子に乗りやがって……。
おれはピクリとこめかみがヒクくつのを感じながら軽い調子で腕を叩く。
いや、結構強めに叩いてやった。
ヴォーカルの上野が苦笑いしているのを感じる。
そんな調子で音楽パートの撮影が終わると、皆川がスマホを片手におれの方へとやってきた。
「なあ、秋生」
「……なんだよ」
「一枚写真撮ってくれよ」
そう言うと、皆川はグイとおれの腕を引き抱き寄せると、スマホで写真を撮る。
「おい!」
「怒るなよ、写真の一枚くらい」
怒るさ……主にうちの番犬が。
皆川はそう言うと、ズカズカと近づいてくる綾斗から逃げるように、その場から去っていく。
「じゃあな!返事、考えておいてくれよ!」
「断るって言っただろ!」
「つれねえな!もっと考えてからでいいんだぜ」
そう言うと、後ろ手を振ってスタジオから去る。
「アキ!」
「ああ……何にもされてねえよ」
「写真を撮られた」
不満そうな綾斗に、おれは苦笑をする。
「おまえ……独占欲強過ぎ」
「……否定はしない。アキのことに関しては」
いや、否定してくれよ。
おれは頭をかくと、綾斗を見上げる。
「……決行は近いんだぞ。冷静になれよ。もちろん、奴らが現れなきゃ始められないけど……」
おれの言葉に、綾斗は頷く。
「任せておけ」
おれは綾斗の背を叩いて促すと、スタジオを出る。
まさか、この皆川の写真がまた一波乱を起こすことになるとは思いもしないで……。
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