78 / 106
パパラッチフィーバー!
パパラッチフィーバー!⑧3
しおりを挟む
歌番組の本番が始まる。
「A’sのお二人です!」
おれは、不機嫌さを押し隠して笑顔を作った。
「どーも!ダンスヴォーカルグループ界のエースです!」
「こんばんは」
「秋生はいつも通り強気だねぇ」
タバヤシさんのコメントに、おれはいつも通りの返事をする。
「あはっ!それが取り柄なんで!」
「最近AshurAのLINと仲がいいんだって?」
突如挟まれるアドリブにおれはヒクッと顔が引き攣るが、ギリ笑顔を絶やさずに答える。
「そうなんですよ!一度話してみたらめちゃくちゃ意気投合しちゃって!」
「いつか二人で曲出しちゃったりしてね~」
「あはは、それも良いですね」
おれはそういうと、綾斗の顔を見る。
綾斗はいつも通りクールな表情でおれたちの話を黙って聞いていた。
しかし、明らかに不機嫌なオーラが出ている。
この辺りは長年組んできた勘だ。
「でもまあ、まずはおれたちA’sの新曲を聴いてください」
おれはサラッとフォローすると、綾斗の雰囲気が少し和らぐ。
おれたちはオープニングの撮影が終わるとひな壇へと移った。
先程の女性歌手が綾斗を見ている。
目が合うと、小さく手が振られた。
ムカッ……。
おれはまた正体不明なムカつきを感じると、綾斗のジャケットを掴む。
綾斗はおれを見下ろすとクスッと笑った。
「……愛してる」
綾斗はおれの耳元に唇を近づけると、その美声で囁く。
おれはその言葉に、誇らしいようなくすぐったい様な不思議な気持ちを感じると、女性歌手にムカついていた気持ちがなんとなく落ち着いて来るのを感じた。
ひな壇の位置が変わり、次の演者席に移動する。
「次はA’sのお二人の新曲、energyですが、今回はどなたが作詞作曲されましたか?」
アナウンサーの女性の質問におれが答える。
「今回はおれが作曲、綾斗が作詞です」
「綾斗は何かイメージがあって作詞したの?」
タバヤシさんの質問に、綾斗は微笑みながら答える。
「題名の通り、おれのenergyになる人を想像して書きました」
「へえ!それは誰?」
「勿論、相方のアキです」
綾斗の言葉に、むず痒いようなソワソワするような、でもちょっと気持ちが浮上するような感覚になる。
「ははっ!女の子とかじゃないの?」
タバヤシさんの茶々に、綾斗はきっぱり答えた。
「おれが一番好きなのはアキなので」
「相変わらず相方大好きだねえ」
「はい」
今までならこういう受け答えも「相方愛が強いなあ」で流して来れたのに、最近はそれも出来ない。
おれはなんとなく照れてポーカーフェイスが出来なくなっていた。
「では、A’sのお二人に歌っていただきましょう!曲は『energy』。A’sのお二人はスタンバイお願いします」
おれたちがスタンバイするために席を立つと、件の女性歌手がタバヤシさんとトークを始めた。
「リナはA’sのファンなんだって?」
「そうなんですー!今日は生でパフォーマンスが見られるの、楽しみにしてきました!」
「じゃあ、energyみたいな曲書いてもらいたいでしょ!」
「それ、めちゃくちゃイイですね!わたしも自分をイメージして曲を書いてもらいたいです!」
……なに?
おれは今日何度目かになるムカつきを感じて、唇を尖らせる。
「リナ、プロデュースして貰ったら?」
「わあ、是非お願いしまーす!」
誰がするか!
おれはスタジオを移動しながら心の中で悪態をつく。
「アキ」
「……なんだよ」
「断ったから。曲作りの話」
はあ?
もうすでに頼まれてたのかよ!
「当たり前だ!おまえが曲を書くのはおれにだけだ!作詞するのもおれにだけだ!」
おれはぶっきらぼうにそういうと、綾斗の襟首を掴んで睨みつける。
綾斗はそんなおれの言葉に、耐えきれずにフッと笑うと、言葉を漏らした。
「……超わがまま」
その通りだと思うけど、そうして欲しいんだから仕方ない。
「でも、死ぬほど可愛い」
綾斗はそう言って皆の死角になるように触れるだけのキスをする。
「勿論、おれの曲は全部アキのものだ。詩もアキのものだ。おれの持ってるものなら、全部アキにやるよ」
「……っ!」
おれは綾斗の台詞に心が満たされると、急激に恥ずかしくなった。
これじゃあまるで、おれが綾斗のことを好きみたいじゃないかーー。
「A’sのお二人、スタンバイお願いします!」
スタッフにそう呼ばれ、おれはハッと現実に戻る。
おれは恥ずかしさを振り払うように所定の位置に立つと、深く呼吸をした。
ヘッドセットの位置を調整してカメラを向く。
綾斗と視線を交わし、一つ頷いた。
前奏が流れ、おれはステップを踏み込む。
『君の笑顔は僕を幸せにする
何気ない言葉も 少し笑った顔も
全てが僕の心を熱くさせる
君の歌声は僕を幸せにする
つれない言葉も 少し怒った顔も
全てが僕の心を焦がすんだ
君はenergy 僕のenergy
君さえいれば僕は生きていける
君のenergy 僕に届け
君と一緒に僕は歩いていく
僕のenergy 君はenergy
僕とならきっと幸せになれるよ
僕のenergy 君に届け
僕と一緒にずっと歩いて行こう』
……今改めて聴いてみると、確かに完全におれのことじゃないか!
しかも、めちゃくちゃ告白してるし。
ていうか、これ『おれ宛』って言ってイイの?
物議を醸さない?!
おれは内心で動揺しながら間奏を踊る。
はっ!
だめだ、パフォーマンスに集中しよう。
おれはなんとか最後までパフォーマンスをすると、最後のポーズを決め、ふうとため息をついた。
「A’sのお二人です!」
おれは、不機嫌さを押し隠して笑顔を作った。
「どーも!ダンスヴォーカルグループ界のエースです!」
「こんばんは」
「秋生はいつも通り強気だねぇ」
タバヤシさんのコメントに、おれはいつも通りの返事をする。
「あはっ!それが取り柄なんで!」
「最近AshurAのLINと仲がいいんだって?」
突如挟まれるアドリブにおれはヒクッと顔が引き攣るが、ギリ笑顔を絶やさずに答える。
「そうなんですよ!一度話してみたらめちゃくちゃ意気投合しちゃって!」
「いつか二人で曲出しちゃったりしてね~」
「あはは、それも良いですね」
おれはそういうと、綾斗の顔を見る。
綾斗はいつも通りクールな表情でおれたちの話を黙って聞いていた。
しかし、明らかに不機嫌なオーラが出ている。
この辺りは長年組んできた勘だ。
「でもまあ、まずはおれたちA’sの新曲を聴いてください」
おれはサラッとフォローすると、綾斗の雰囲気が少し和らぐ。
おれたちはオープニングの撮影が終わるとひな壇へと移った。
先程の女性歌手が綾斗を見ている。
目が合うと、小さく手が振られた。
ムカッ……。
おれはまた正体不明なムカつきを感じると、綾斗のジャケットを掴む。
綾斗はおれを見下ろすとクスッと笑った。
「……愛してる」
綾斗はおれの耳元に唇を近づけると、その美声で囁く。
おれはその言葉に、誇らしいようなくすぐったい様な不思議な気持ちを感じると、女性歌手にムカついていた気持ちがなんとなく落ち着いて来るのを感じた。
ひな壇の位置が変わり、次の演者席に移動する。
「次はA’sのお二人の新曲、energyですが、今回はどなたが作詞作曲されましたか?」
アナウンサーの女性の質問におれが答える。
「今回はおれが作曲、綾斗が作詞です」
「綾斗は何かイメージがあって作詞したの?」
タバヤシさんの質問に、綾斗は微笑みながら答える。
「題名の通り、おれのenergyになる人を想像して書きました」
「へえ!それは誰?」
「勿論、相方のアキです」
綾斗の言葉に、むず痒いようなソワソワするような、でもちょっと気持ちが浮上するような感覚になる。
「ははっ!女の子とかじゃないの?」
タバヤシさんの茶々に、綾斗はきっぱり答えた。
「おれが一番好きなのはアキなので」
「相変わらず相方大好きだねえ」
「はい」
今までならこういう受け答えも「相方愛が強いなあ」で流して来れたのに、最近はそれも出来ない。
おれはなんとなく照れてポーカーフェイスが出来なくなっていた。
「では、A’sのお二人に歌っていただきましょう!曲は『energy』。A’sのお二人はスタンバイお願いします」
おれたちがスタンバイするために席を立つと、件の女性歌手がタバヤシさんとトークを始めた。
「リナはA’sのファンなんだって?」
「そうなんですー!今日は生でパフォーマンスが見られるの、楽しみにしてきました!」
「じゃあ、energyみたいな曲書いてもらいたいでしょ!」
「それ、めちゃくちゃイイですね!わたしも自分をイメージして曲を書いてもらいたいです!」
……なに?
おれは今日何度目かになるムカつきを感じて、唇を尖らせる。
「リナ、プロデュースして貰ったら?」
「わあ、是非お願いしまーす!」
誰がするか!
おれはスタジオを移動しながら心の中で悪態をつく。
「アキ」
「……なんだよ」
「断ったから。曲作りの話」
はあ?
もうすでに頼まれてたのかよ!
「当たり前だ!おまえが曲を書くのはおれにだけだ!作詞するのもおれにだけだ!」
おれはぶっきらぼうにそういうと、綾斗の襟首を掴んで睨みつける。
綾斗はそんなおれの言葉に、耐えきれずにフッと笑うと、言葉を漏らした。
「……超わがまま」
その通りだと思うけど、そうして欲しいんだから仕方ない。
「でも、死ぬほど可愛い」
綾斗はそう言って皆の死角になるように触れるだけのキスをする。
「勿論、おれの曲は全部アキのものだ。詩もアキのものだ。おれの持ってるものなら、全部アキにやるよ」
「……っ!」
おれは綾斗の台詞に心が満たされると、急激に恥ずかしくなった。
これじゃあまるで、おれが綾斗のことを好きみたいじゃないかーー。
「A’sのお二人、スタンバイお願いします!」
スタッフにそう呼ばれ、おれはハッと現実に戻る。
おれは恥ずかしさを振り払うように所定の位置に立つと、深く呼吸をした。
ヘッドセットの位置を調整してカメラを向く。
綾斗と視線を交わし、一つ頷いた。
前奏が流れ、おれはステップを踏み込む。
『君の笑顔は僕を幸せにする
何気ない言葉も 少し笑った顔も
全てが僕の心を熱くさせる
君の歌声は僕を幸せにする
つれない言葉も 少し怒った顔も
全てが僕の心を焦がすんだ
君はenergy 僕のenergy
君さえいれば僕は生きていける
君のenergy 僕に届け
君と一緒に僕は歩いていく
僕のenergy 君はenergy
僕とならきっと幸せになれるよ
僕のenergy 君に届け
僕と一緒にずっと歩いて行こう』
……今改めて聴いてみると、確かに完全におれのことじゃないか!
しかも、めちゃくちゃ告白してるし。
ていうか、これ『おれ宛』って言ってイイの?
物議を醸さない?!
おれは内心で動揺しながら間奏を踊る。
はっ!
だめだ、パフォーマンスに集中しよう。
おれはなんとか最後までパフォーマンスをすると、最後のポーズを決め、ふうとため息をついた。
11
お気に入りに追加
1,835
あなたにおすすめの小説
【BL】国民的アイドルグループ内でBLなんて勘弁してください。
白猫
BL
国民的アイドルグループ【kasis】のメンバーである、片桐悠真(18)は悩んでいた。
最近どうも自分がおかしい。まさに悪い夢のようだ。ノーマルだったはずのこの自分が。
(同じグループにいる王子様系アイドルに恋をしてしまったかもしれないなんて……!)
(勘違いだよな? そうに決まってる!)
気のせいであることを確認しようとすればするほどドツボにハマっていき……。
転生したので異世界でショタコンライフを堪能します
のりたまご飯
BL
30歳ショタコンだった俺は、駅のホームで気を失い、そのまま電車に撥ねられあっけなく死んだ。
けど、目が覚めるとそこは知らない天井...、どこかで見たことのある転生系アニメのようなシチュエーション。
どうやら俺は転生してしまったようだ。
元の世界で極度のショタコンだった俺は、ショタとして異世界で新たな人生を歩む!!!
ショタ最高!ショタは世界を救う!!!
ショタコンによるショタコンのためのBLコメディ小説であーる!!!
甥っ子と異世界に召喚された俺、元の世界へ戻るために奮闘してたら何故か王子に捕らわれました?
秋野 なずな
BL
ある日突然、甥っ子の蒼葉と異世界に召喚されてしまった冬斗。
蒼葉は精霊の愛し子であり、精霊を回復できる力があると告げられその力でこの国を助けて欲しいと頼まれる。しかし同時に役目を終えても元の世界には帰すことが出来ないと言われてしまう。
絶対に帰れる方法はあるはずだと協力を断り、せめて蒼葉だけでも元の世界に帰すための方法を探して孤軍奮闘するも、誰が敵で誰が味方かも分からない見知らぬ地で、1人の限界を感じていたときその手は差し出された
「僕と手を組まない?」
その手をとったことがすべての始まり。
気づいた頃にはもう、その手を離すことが出来なくなっていた。
王子×大学生
―――――――――
※男性も妊娠できる世界となっています
乙女ゲームのモブに転生したようですが、何故かBLの世界になってます~逆ハーなんて狙ってないのに攻略対象達が僕を溺愛してきます
syouki
BL
学校の階段から落ちていく瞬間、走馬灯のように僕の知らない記憶が流れ込んできた。そして、ここが乙女ゲーム「ハイスクールメモリー~あなたと過ごすスクールライフ」通称「ハイメモ」の世界だということに気が付いた。前世の僕は、色々なゲームの攻略を紹介する会社に勤めていてこの「ハイメモ」を攻略中だったが、帰宅途中で事故に遇い、はやりの異世界転生をしてしまったようだ。と言っても、僕は攻略対象でもなければ、対象者とは何の接点も無い一般人。いわゆるモブキャラだ。なので、ヒロインと攻略対象の恋愛を見届けようとしていたのだが、何故か攻略対象が僕に絡んでくる。待って!ここって乙女ゲームの世界ですよね???
※設定はゆるゆるです。
※主人公は流されやすいです。
※R15は念のため
※不定期更新です。
※BL小説大賞エントリーしてます。よろしくお願いしますm(_ _)m
不良高校に転校したら溺愛されて思ってたのと違う
らる
BL
幸せな家庭ですくすくと育ち普通の高校に通い楽しく毎日を過ごしている七瀬透。
唯一普通じゃない所は人たらしなふわふわ天然男子である。
そんな透は本で見た不良に憧れ、勢いで日本一と言われる不良学園に転校。
いったいどうなる!?
[強くて怖い生徒会長]×[天然ふわふわボーイ]固定です。
※更新頻度遅め。一日一話を目標にしてます。
※誤字脱字は見つけ次第時間のある時修正します。それまではご了承ください。
眠り姫
虹月
BL
そんな眠り姫を起こす王子様は、僕じゃない。
ただ眠ることが好きな凛月は、四月から全寮制の名門男子校、天彗学園に入学することになる。そこで待ち受けていたのは、色々な問題を抱えた男子生徒達。そんな男子生徒と関わり合い、凛月が与え、与えられたものとは――。
乙女ゲーの隠しキャラに転生したからメインストーリーとは関係なく平和に過ごそうと思う
ゆん
BL
乙女ゲーム「あなただけの光になる」は剣と魔法のファンタジー世界で舞台は貴族たちが主に通う魔法学園
魔法で男でも妊娠できるようになるので同性婚も一般的
生まれ持った属性の魔法しか使えない
その中でも光、闇属性は珍しい世界__
そんなところに車に轢かれて今流行りの異世界転生しちゃったごく普通の男子高校生、佐倉真央。
そしてその転生先はすべてのエンドを回収しないと出てこず、攻略も激ムズな隠しキャラ、サフィラス・ローウェルだった!!
サフィラスは間違った攻略をしてしまうと死亡エンドや闇堕ちエンドなど最悪なシナリオも多いという情報があるがサフィラスが攻略対象だとわかるまではただのモブだからメインストーリーとは関係なく平和に生きていこうと思う。
__________________
誰と結ばれるかはまだ未定ですが、主人公受けは固定です!
初投稿で拙い文章ですが読んでもらえると嬉しいです。
誤字脱字など多いと思いますがコメントで教えて下さると大変助かります…!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる