63 / 106
パパラッチフィーバー!
パパラッチフィーバー!③3
しおりを挟む
side L
映画当日、おれは軽く変装をすると、秋生との待ち合わせの場所へ急いだ。
向かった映画館はちょっと郊外の人が少なめの映画館。
そもそもボーイズラブ映画なので、そんなに大きなスクリーンではやっていないから、ちょうど良かった。
待ち合わせ場所に着くと、3分もしない内に秋生は現れた。
一応メガネにマスクに帽子と変装はしているが、明らかにイケメンオーラが溢れ出している。
イケメンって出てるのが目と洗練されたスタイルってだけでイケメンなんだな……。
だからってこれ以上変装もできないしなあ。
まあいいか。
別に女性とデートしてるわけじゃないし。
いや、駄目か。
今から見るのはボーイズラブ映画だったな。
「はよ、秋生」
「おい、凛。イケメンが漏れてるぞ」
人の顔を見るやいなや、秋生はおれにそう言う。
「いや、それおまえもだからね?」
「え?」
「え?」
そうか、お互い無自覚か。
おれはこれ以上この件について話しても仕方がないと思い、話を変えた。
「じゃ、バレる前に劇場に入るか」
「そうだな」
そういって、おれたちは劇場に入った。
各々飲み物を買い、ハンカチを準備して席に着く。
四時間後、おれたちはしっとりと涙で濡れたハンカチを片手に、秋生の家にいた。
ウーロンハイを片手に、おれはパンフレットを広げて後から後から出てくる涙を拭いながら熱く語る。
「まさかさぁ、あそこでこんな展開になると思わないじゃん?!残酷過ぎるでしょ?!」
「だよなぁ!折角両思いになりかけたのに、あんまりだよ……!」
「でもさあ、おれが主人公ならやっぱり同じように身を引こうとしちゃうかも……」
「ぐっ……確かに解る……。先輩の止められなかった気持ちも解る……」
「でも、最後は良かったよねー!」
「だな!ちゃんとハッピーエンドでよかった!!」
確かに最後にお互い指輪つけて抱き合うシーンとか、マジで感動した。
物理的な距離は離れちゃったけど、心の距離は近いんだぞっていう演出……憎すぎる。
ああ……やっぱり腐男子同士のボーイズラブ語り楽しすぎる……。
「……ところでさ、凛」
「ん?」
「おまえ、好きな人とかいないの?」
「えっ?」
突然秋生にそう問われ、おれは思わず聞き返してしまった。
「な、何で急に?」
「や、何となく」
秋生はそう言うと、ニヤニヤとおれを見つめる。
「や、今のところはいない……というか、今はメンバーといるのが楽しくて、あんまり考えられないかな」
「ふぅん。その、メンバーの中で気になる人とか居ないのか?」
「へ?」
な、何を言い出すんだ秋生は。
おれはドキドキするのを隠しながら、至って平然と見えるように答えを返したつもり……だけど、この百戦錬磨のボーイズラブ好きには見抜かれていたらしい。
「や、だって明らかにメンバーはおまえ狙いでしょ。ゲームとはちょっと違う展開だけど」
うぐっ……。
おれは言葉に詰まると、仕方なく白状する。
「えーと…はい。多分、そうです」
おれは、メンバーの好意から目を背けないと決めたので、否定はしない。
「やっぱりな!ーーまあでも、おれたちが腐男子だからって、リアルで男を好きになるわけじゃないしな……」
そう、それ!
そうなんだよね!
勿論メンバーの事は好きだし、好意も嬉しい。
気持ち悪いとかいう気持ちは全くないし。
しかし、だからって、おれがその、誰かを好きになるとか……誰かを選ぶとか、まだ今は考えられない。
「まあ、おれたちの救いは、男同士の恋愛に否定的じゃないって事か」
秋生はそういうと、レモン酎ハイを飲む。
「おれは、おまえが誰を選ぼうと、男だろうと女だろうと応援してるぞ」
そう言って秋生はニッと笑う。
「……そういう秋生は?」
「ん?おれ?おれが何?」
キョトンとした顔の秋生に、おれはズイっと近づく。
「嘉神とどうなんだよ?」
「綾斗がなんだよ?」
「嘉神、どう考えてもおまえのこと好きじゃん」
「あーあれね。確かにおれのこと好きだと思うけど……あれはもうヒヨコが初めて見たものを親って思うようなもんで…単純に刷り込みなだけだよ」
え、そうか?
おれの目から見たら違うと思うぞ。
明らかに好き好きオーラが溢れてたけど……。
まあ、こればっかりはおれもそうだったけど、自分で気が付かなきゃいけない事だしな……。
おれはウーロンハイを飲んで秋生を見る。
「まあ、おれも同じだよ。おまえが誰を選んでも応援する」
おれはそういうと、あくびを噛み殺す。
「お、もうこんな時間か……そろそろシャワー浴びて寝るか。凛、今日泊まってくだろ?」
「いいのか?やった!」
そんなこんなで、おれたちの腐男子会は夜更けまで続いた。
映画当日、おれは軽く変装をすると、秋生との待ち合わせの場所へ急いだ。
向かった映画館はちょっと郊外の人が少なめの映画館。
そもそもボーイズラブ映画なので、そんなに大きなスクリーンではやっていないから、ちょうど良かった。
待ち合わせ場所に着くと、3分もしない内に秋生は現れた。
一応メガネにマスクに帽子と変装はしているが、明らかにイケメンオーラが溢れ出している。
イケメンって出てるのが目と洗練されたスタイルってだけでイケメンなんだな……。
だからってこれ以上変装もできないしなあ。
まあいいか。
別に女性とデートしてるわけじゃないし。
いや、駄目か。
今から見るのはボーイズラブ映画だったな。
「はよ、秋生」
「おい、凛。イケメンが漏れてるぞ」
人の顔を見るやいなや、秋生はおれにそう言う。
「いや、それおまえもだからね?」
「え?」
「え?」
そうか、お互い無自覚か。
おれはこれ以上この件について話しても仕方がないと思い、話を変えた。
「じゃ、バレる前に劇場に入るか」
「そうだな」
そういって、おれたちは劇場に入った。
各々飲み物を買い、ハンカチを準備して席に着く。
四時間後、おれたちはしっとりと涙で濡れたハンカチを片手に、秋生の家にいた。
ウーロンハイを片手に、おれはパンフレットを広げて後から後から出てくる涙を拭いながら熱く語る。
「まさかさぁ、あそこでこんな展開になると思わないじゃん?!残酷過ぎるでしょ?!」
「だよなぁ!折角両思いになりかけたのに、あんまりだよ……!」
「でもさあ、おれが主人公ならやっぱり同じように身を引こうとしちゃうかも……」
「ぐっ……確かに解る……。先輩の止められなかった気持ちも解る……」
「でも、最後は良かったよねー!」
「だな!ちゃんとハッピーエンドでよかった!!」
確かに最後にお互い指輪つけて抱き合うシーンとか、マジで感動した。
物理的な距離は離れちゃったけど、心の距離は近いんだぞっていう演出……憎すぎる。
ああ……やっぱり腐男子同士のボーイズラブ語り楽しすぎる……。
「……ところでさ、凛」
「ん?」
「おまえ、好きな人とかいないの?」
「えっ?」
突然秋生にそう問われ、おれは思わず聞き返してしまった。
「な、何で急に?」
「や、何となく」
秋生はそう言うと、ニヤニヤとおれを見つめる。
「や、今のところはいない……というか、今はメンバーといるのが楽しくて、あんまり考えられないかな」
「ふぅん。その、メンバーの中で気になる人とか居ないのか?」
「へ?」
な、何を言い出すんだ秋生は。
おれはドキドキするのを隠しながら、至って平然と見えるように答えを返したつもり……だけど、この百戦錬磨のボーイズラブ好きには見抜かれていたらしい。
「や、だって明らかにメンバーはおまえ狙いでしょ。ゲームとはちょっと違う展開だけど」
うぐっ……。
おれは言葉に詰まると、仕方なく白状する。
「えーと…はい。多分、そうです」
おれは、メンバーの好意から目を背けないと決めたので、否定はしない。
「やっぱりな!ーーまあでも、おれたちが腐男子だからって、リアルで男を好きになるわけじゃないしな……」
そう、それ!
そうなんだよね!
勿論メンバーの事は好きだし、好意も嬉しい。
気持ち悪いとかいう気持ちは全くないし。
しかし、だからって、おれがその、誰かを好きになるとか……誰かを選ぶとか、まだ今は考えられない。
「まあ、おれたちの救いは、男同士の恋愛に否定的じゃないって事か」
秋生はそういうと、レモン酎ハイを飲む。
「おれは、おまえが誰を選ぼうと、男だろうと女だろうと応援してるぞ」
そう言って秋生はニッと笑う。
「……そういう秋生は?」
「ん?おれ?おれが何?」
キョトンとした顔の秋生に、おれはズイっと近づく。
「嘉神とどうなんだよ?」
「綾斗がなんだよ?」
「嘉神、どう考えてもおまえのこと好きじゃん」
「あーあれね。確かにおれのこと好きだと思うけど……あれはもうヒヨコが初めて見たものを親って思うようなもんで…単純に刷り込みなだけだよ」
え、そうか?
おれの目から見たら違うと思うぞ。
明らかに好き好きオーラが溢れてたけど……。
まあ、こればっかりはおれもそうだったけど、自分で気が付かなきゃいけない事だしな……。
おれはウーロンハイを飲んで秋生を見る。
「まあ、おれも同じだよ。おまえが誰を選んでも応援する」
おれはそういうと、あくびを噛み殺す。
「お、もうこんな時間か……そろそろシャワー浴びて寝るか。凛、今日泊まってくだろ?」
「いいのか?やった!」
そんなこんなで、おれたちの腐男子会は夜更けまで続いた。
15
お気に入りに追加
1,835
あなたにおすすめの小説
【BL】国民的アイドルグループ内でBLなんて勘弁してください。
白猫
BL
国民的アイドルグループ【kasis】のメンバーである、片桐悠真(18)は悩んでいた。
最近どうも自分がおかしい。まさに悪い夢のようだ。ノーマルだったはずのこの自分が。
(同じグループにいる王子様系アイドルに恋をしてしまったかもしれないなんて……!)
(勘違いだよな? そうに決まってる!)
気のせいであることを確認しようとすればするほどドツボにハマっていき……。
転生したので異世界でショタコンライフを堪能します
のりたまご飯
BL
30歳ショタコンだった俺は、駅のホームで気を失い、そのまま電車に撥ねられあっけなく死んだ。
けど、目が覚めるとそこは知らない天井...、どこかで見たことのある転生系アニメのようなシチュエーション。
どうやら俺は転生してしまったようだ。
元の世界で極度のショタコンだった俺は、ショタとして異世界で新たな人生を歩む!!!
ショタ最高!ショタは世界を救う!!!
ショタコンによるショタコンのためのBLコメディ小説であーる!!!
甥っ子と異世界に召喚された俺、元の世界へ戻るために奮闘してたら何故か王子に捕らわれました?
秋野 なずな
BL
ある日突然、甥っ子の蒼葉と異世界に召喚されてしまった冬斗。
蒼葉は精霊の愛し子であり、精霊を回復できる力があると告げられその力でこの国を助けて欲しいと頼まれる。しかし同時に役目を終えても元の世界には帰すことが出来ないと言われてしまう。
絶対に帰れる方法はあるはずだと協力を断り、せめて蒼葉だけでも元の世界に帰すための方法を探して孤軍奮闘するも、誰が敵で誰が味方かも分からない見知らぬ地で、1人の限界を感じていたときその手は差し出された
「僕と手を組まない?」
その手をとったことがすべての始まり。
気づいた頃にはもう、その手を離すことが出来なくなっていた。
王子×大学生
―――――――――
※男性も妊娠できる世界となっています
人生イージーモードになるはずだった俺!!
抹茶ごはん
BL
平凡な容姿にろくでもない人生を歩み事故死した俺。
前世の記憶を持ったまま転生し、なんと金持ちイケメンのお坊ちゃまになった!!
これはもう人生イージーモード一直線、前世のような思いはするまいと日々邁進するのだが…。
何故か男にばかりモテまくり、厄介な事件には巻き込まれ!?
本作は現実のあらゆる人物、団体、思想及び事件等に関係ございません。あくまでファンタジーとしてお楽しみください。
眠り姫
虹月
BL
そんな眠り姫を起こす王子様は、僕じゃない。
ただ眠ることが好きな凛月は、四月から全寮制の名門男子校、天彗学園に入学することになる。そこで待ち受けていたのは、色々な問題を抱えた男子生徒達。そんな男子生徒と関わり合い、凛月が与え、与えられたものとは――。
乙女ゲーの隠しキャラに転生したからメインストーリーとは関係なく平和に過ごそうと思う
ゆん
BL
乙女ゲーム「あなただけの光になる」は剣と魔法のファンタジー世界で舞台は貴族たちが主に通う魔法学園
魔法で男でも妊娠できるようになるので同性婚も一般的
生まれ持った属性の魔法しか使えない
その中でも光、闇属性は珍しい世界__
そんなところに車に轢かれて今流行りの異世界転生しちゃったごく普通の男子高校生、佐倉真央。
そしてその転生先はすべてのエンドを回収しないと出てこず、攻略も激ムズな隠しキャラ、サフィラス・ローウェルだった!!
サフィラスは間違った攻略をしてしまうと死亡エンドや闇堕ちエンドなど最悪なシナリオも多いという情報があるがサフィラスが攻略対象だとわかるまではただのモブだからメインストーリーとは関係なく平和に生きていこうと思う。
__________________
誰と結ばれるかはまだ未定ですが、主人公受けは固定です!
初投稿で拙い文章ですが読んでもらえると嬉しいです。
誤字脱字など多いと思いますがコメントで教えて下さると大変助かります…!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる