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パパラッチフィーバー!

パパラッチフィーバー!③3

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映画当日、おれは軽く変装をすると、秋生との待ち合わせの場所へ急いだ。
向かった映画館はちょっと郊外の人が少なめの映画館。
そもそもボーイズラブ映画なので、そんなに大きなスクリーンではやっていないから、ちょうど良かった。
待ち合わせ場所に着くと、3分もしない内に秋生は現れた。
一応メガネにマスクに帽子と変装はしているが、明らかにイケメンオーラが溢れ出している。
イケメンって出てるのが目と洗練されたスタイルってだけでイケメンなんだな……。
だからってこれ以上変装もできないしなあ。
まあいいか。
別に女性とデートしてるわけじゃないし。
いや、駄目か。
今から見るのはボーイズラブ映画だったな。
「はよ、秋生」
「おい、凛。イケメンが漏れてるぞ」
人の顔を見るやいなや、秋生はおれにそう言う。
「いや、それおまえもだからね?」
「え?」
「え?」
そうか、お互い無自覚か。
おれはこれ以上この件について話しても仕方がないと思い、話を変えた。
「じゃ、バレる前に劇場に入るか」
「そうだな」
そういって、おれたちは劇場に入った。
各々飲み物を買い、ハンカチを準備して席に着く。
四時間後、おれたちはしっとりと涙で濡れたハンカチを片手に、秋生の家にいた。
ウーロンハイを片手に、おれはパンフレットを広げて後から後から出てくる涙を拭いながら熱く語る。
「まさかさぁ、あそこでこんな展開になると思わないじゃん?!残酷過ぎるでしょ?!」
「だよなぁ!折角両思いになりかけたのに、あんまりだよ……!」
「でもさあ、おれが主人公ならやっぱり同じように身を引こうとしちゃうかも……」
「ぐっ……確かに解る……。先輩の止められなかった気持ちも解る……」
「でも、最後は良かったよねー!」
「だな!ちゃんとハッピーエンドでよかった!!」
確かに最後にお互い指輪つけて抱き合うシーンとか、マジで感動した。
物理的な距離は離れちゃったけど、心の距離は近いんだぞっていう演出……憎すぎる。
ああ……やっぱり腐男子同士のボーイズラブ語り楽しすぎる……。
「……ところでさ、凛」
「ん?」
「おまえ、好きな人とかいないの?」
「えっ?」
突然秋生にそう問われ、おれは思わず聞き返してしまった。
「な、何で急に?」
「や、何となく」
秋生はそう言うと、ニヤニヤとおれを見つめる。
「や、今のところはいない……というか、今はメンバーといるのが楽しくて、あんまり考えられないかな」
「ふぅん。その、メンバーの中で気になる人とか居ないのか?」
「へ?」
な、何を言い出すんだ秋生は。
おれはドキドキするのを隠しながら、至って平然と見えるように答えを返したつもり……だけど、この百戦錬磨のボーイズラブ好きには見抜かれていたらしい。
「や、だって明らかにメンバーはおまえ狙いでしょ。ゲームとはちょっと違う展開だけど」
うぐっ……。
おれは言葉に詰まると、仕方なく白状する。
「えーと…はい。多分、そうです」
おれは、メンバーの好意から目を背けないと決めたので、否定はしない。
「やっぱりな!ーーまあでも、おれたちが腐男子だからって、リアルで男を好きになるわけじゃないしな……」
そう、それ!
そうなんだよね!
勿論メンバーの事は好きだし、好意も嬉しい。
気持ち悪いとかいう気持ちは全くないし。
しかし、だからって、おれがその、誰かを好きになるとか……誰かを選ぶとか、まだ今は考えられない。
「まあ、おれたちの救いは、男同士の恋愛に否定的じゃないって事か」
秋生はそういうと、レモン酎ハイを飲む。
「おれは、おまえが誰を選ぼうと、男だろうと女だろうと応援してるぞ」
そう言って秋生はニッと笑う。
「……そういう秋生は?」
「ん?おれ?おれが何?」
キョトンとした顔の秋生に、おれはズイっと近づく。
「嘉神とどうなんだよ?」
「綾斗がなんだよ?」
「嘉神、どう考えてもおまえのこと好きじゃん」
「あーあれね。確かにおれのこと好きだと思うけど……あれはもうヒヨコが初めて見たものを親って思うようなもんで…単純に刷り込みなだけだよ」
え、そうか?
おれの目から見たら違うと思うぞ。
明らかに好き好きオーラが溢れてたけど……。
まあ、こればっかりはおれもそうだったけど、自分で気が付かなきゃいけない事だしな……。
おれはウーロンハイを飲んで秋生を見る。
「まあ、おれも同じだよ。おまえが誰を選んでも応援する」
おれはそういうと、あくびを噛み殺す。
「お、もうこんな時間か……そろそろシャワー浴びて寝るか。凛、今日泊まってくだろ?」
「いいのか?やった!」
そんなこんなで、おれたちの腐男子会は夜更けまで続いた。
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