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パパラッチフィーバー!

パパラッチフィーバー!②2

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side A
漸く漢方薬が効いてきた頃、おれはタクシーの中であくびを噛み殺した。
昨夜は前世からの親友、徳重雅紀ーー西園寺凛との再会にテンションが上がりすぎて、ちょっと調子に乗って飲みすぎた。
おれは昨夜おれが投稿したらしいインスタグラムを再度見ると、嬉しそうに肩を組んで顔を赤くして笑い合うおれたちがいる。
昨日からイイネは順調に増え続け、コメント欄も凄いことになっていた。
『秋生とLINの最強コンビ!』
『可愛すぎて死にそう』
『尊すぎて崇めた』
などなど。
うん、そりゃそうだろう。
秋生はおれの最推しだからな!
凛だってAshurAの人気ナンバーワンだ。
おれはふふん、と自慢げに一人で笑う。
ーーが。
この後は面倒臭いことが待っている事は確定している。
きっとありすちゃんと綾斗に質問攻めにあうのだ。
まあ、ありすちゃんはわかる。
マネージャーとして把握しとかなきゃいけないからな。
でも綾斗に根掘り葉掘り聞かれるのは正直面倒臭い。
巷では綾斗はクールとか涼やかとか言われてるが、実際は全然違う。
表情があまり大きく出ないだけで、すっっっごくわかりやすい大型犬だ。
しかも、異常に相方愛が強い。
おれが他のやつと仲良くすると、すぐに拗ねたりぐずったりする。
結構面倒くさいやつなのだ。
ゲーム上ではもっと本当にクールだったんだけどなぁ。
まあ、ゲーム上でも相方愛は強いキャラではあったけど……。
だから、綾斗攻略の難易度は高めに設定されていた筈だ。
おれは「はあ」とため息をつくと局の玄関でタクシーを降りた。
「「アキ!」」
「「あれはいったいどう言う事」だ」
案の定、楽屋で二人に捕まったおれは、二人の事情聴取が始まる。
こうなる事は目に見えていたので、おれはあらかじめ凛と決めてあった理由を説明した。
「あー。前から同じダンスヴォーカルグループだし、気にはなってて話をしたかったんだよね。で、番組をきっかけに話してみたらさー、めっちゃ盛り上がって。もうさ、前世からの友達なんじゃないか?って位意気投合してさー。おれの部屋に誘って二人で飲んだ」
「そう……仲が良くなったのはいいけど、これからはちゃんと連絡して頂戴ね?プライベートに口を出す気はないけど、公式インスタに出す以上、仕事にも絡んでくるんだから……」
あ、おっしゃる通りです。
ぐうの音も出ません。
「ありすちゃん、ごめんねー」
おれはありすちゃんに謝ると、ずっと不機嫌そうにしている綾斗に向き直る。
「なんだよ、その顔」
「……のが……い」
「は?聞こえないし」
「おれの方がおまえと仲がいい!」
はあ?!
え、引っかかってたのってそこ?!
おれは思わず間抜けな声を出すと、綾斗をじっとり睨め付ける。
「ーーなんでおまえがそんな事決めつけるんだよ……」
「ーー!」
おれの言葉に、綾斗が目を見開いた。
まさか、否定されるとは思ってなかったようだ。
いや、前世からの仲の良さ舐めんな。
数少ない趣味の合う腐男子の友情はそんじょそこらの友情じゃないんだぜ。
「LINよりおれの方がおまえの事を好きだ。この世界でおれが一番おまえを好きだ」
あー……なに変な対抗意識燃やしちゃってるの。
ていうか、おまえはそうかもしれないけど、おれはそうじゃないかもしれないからね?
本当に残念だな、このイケメンは……。
変な事を言いながらおれにのしかかって抱き潰す綾斗に、おれはため息をつく。
ええい暑苦しい。
おれはベリっと綾斗を引き離すと、ありすちゃんに今日の予定を聞く。
「今日の予定は?」
「CM撮影と歌番組の打ち合わせよ」
ああ、そうだった。
サニーのワイヤレスヘッドホンのCM撮影だったな。
おれは有線派だけど、CMが来たから一度聞いてみたら、結構いい音だったんだよな。
あ、そう言えば凛も有線派って言ってたから、無線でもいいのあるよって教えてやってもいいなー。
「なんだかご機嫌ね?」
「あ、わかる?」
「LINくんとよっぽどウマがあったのかしら」
「そうなんだよー。音楽性から本の好みまでほぼ一緒!」
腐男子としての話をこんなにオープンにできることなんてなかったしな!
おれは上機嫌でそう言うと、再び綾斗がのしかかってくる。
「アキはおれのパートナーだ」
あーもう。
「わかってるよ。別におれはAshurAに移籍しようとか思ってないから。おれはあくまでもA’sの日比野秋生。凛とは仲のいい友達。おれの相方はおまえだって」
おれは綾斗にそう言ってやると、漸く満足したように頷く。
いや、納得したなら離せって。
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