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パパラッチフィーバー!

パパラッチフィーバー!① 2

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そんな感じで午前のダンスレッスンは終わり、おれたちは午後のバラエティー番組の打ち合わせにテレビ局に来た。
うう……身体中が痛い。
普段からダンスをしてるおれでも筋肉痛になりそうだ。
おれは肩を回して身体をほぐしながら、ミーティングルームに入る。
「ううー身体が痛いよー」
翔太がそう言いながらおれにしなだれかかってくる。
うん、おれもだよ……。
今回は珍しくAshurA全員が出演するバラエティー番組だ。
なんと、今回出演するのはA’sの二人の名前が入った冠番組である。
A’sの二人がミュージシャンと対談しながら色々な企画をするという番組だ。
A’s自体の人気もさることながら、A’s二人の掛け合いが面白いと深夜枠からゴールデンに進出した人気番組なのである。
歌って踊れて、トークもできるなんて凄いよな。
そこに、今回おれたちAshurAがゲストに呼ばれたのだ。
打ち合わせでは、A’sの二人とのダンスバトルの企画や、音程当てやメンバーの好みを当てるクイズなどが企画されている。
負けた方は酸っぱいジュースを飲むと言う罰ゲーム付き。
……おれはいつもクールな顔をしてる一哉あたり負けないかな、なんて意地悪なことを考えてしまった。
「企画の説明は以上になります。何かご質問等ありますか?」
一通り企画の説明や打ち合わせが終わると、プロデューサーからそう聞かれ、おれたちは首を振る。
「では、打ち合わせは以上になります。後は当日リハーサルと本番、よろしくお願いします」
そう言われて、おれたちがミーティングルームを出ると、丁度A’sの二人も打ち合わせが終わって部屋から出てきたところだった。
「お、AshurAじゃん」
A’sの日比野秋生がそう言って笑う。
「今度よろしくなー!」
「よろしくお願いします、でしょうアキ!」
マネージャーの女性が、そう言って日比野の頭をバチンと叩くと、おれたちに向かって頭を下げる。
「次回はよろしくお願いします」
眼鏡をかけて一見地味にしてるけど、この人凄い美人だ。
おれの目は誤魔化せない。
……なーんて、そういう設定だから知ってるだけだけどね。
でも、ほんとに美人だ。
おれはA’sの二人とマネージャーに視線をやると、ペコリと頭を下げる。
「こちらこそよろしくお願いします」
「よろしく」
嘉神綾斗がそう言ってクールに挨拶する。
くー、格好いいな!
おれが嘉神を見ていると、不意に日比野と目が合った。
「?」
「なあ、LIN。ちょっとで良いんだけど、今時間ある?」
日比野は突然おれにそんなことを言い出す。
「えっ?!」
おれは意味がよくわからずに日比野を見つめると、日比野は悪戯っぽい目でおれを見た。
「だからーちょっと顔貸してって言ってんの」
「ちょっとアキ!何言ってんの!」
マネージャーが目を見開いて日比野に問う。
「ありすちゃん。おれ今日一人で帰るから、綾斗だけ連れて帰って」
「何を言って……」
「いいから。ね、お願い!」
そう言って日比野はマネージャーに手を合わせて片目を瞑ると、おれの方を振り返る。
「な、LIN。行こうぜ!」
「おい、ちょっと待て……」
押し留めようとする一哉の手をするりと交わし、日比野はおれの肩を抱いて歩き出す。
「ちょ、ちょっと……」
おれが慌てて止めようとすると、日比野が耳元である言葉を囁いた。
「……徳重雅紀」
おれはその言葉に一瞬固まると、そのまま日比野は開いている会議室へと滑り込む。
日比野は後ろ手に鍵を閉めると、ゆっくりとおれの方を向いた。
「な……んで、おまえがその名前を知っているんだよ……」
ドクドクと脈打つ心臓を感じながら、おれは日比野にそう問う。
「ーーわかんないか?」
「わかるわけ……」
おれがそう言いかけると、日比野はおれの言葉に被せるように声を発する。
「ーー藤代涼太」
「……え」
突如、再び聞き覚えのある名前を出されて、おれは酷く混乱する。
藤代涼太とは、前世でのおれーー徳重雅紀の友人の名前だ。
と、言うことは、まさかーー。
「え……もしかしてーーおまえ涼太なの?」
おれはこれ以上大きくならないんじゃないかってほど目を見開き、日比野を見つめる。
「やっぱり、おまえ雅紀か!」
おれたちは一瞬見つめ合った後、激しく抱き合って再会を喜んだ。
日比野ーー藤代涼太はおれの前世の腐男子仲間で、親友だった男だ。
毎晩のようにネットでボーイズラブについて熱く語っていたのを覚えている。
勿論、涼太も『君は最推し!』をプレイしていた。
ーーそういえば、涼太の最推しは秋生だったな。
おまえもおれと同じで最推しに転生したのか。
おれはなんとも言えない顔をして涼太を見ると
、同じ事を思ったのか向こうも苦笑する。
「おれ、記憶を思い出したのが最近でさ……。いや、ビックリしたのなんのって」
「あ、おれもだよ。つい4、5ヶ月くらい前」
「まじかー!ほぼ同じくらいの時に覚醒したのな。いやあ、今日不審に思われるの覚悟で話しかけてよかったわ!」
そう言って涼太は笑う。
「しかし……おれはともかくとして、おまえも転生したってことは、何かで死んだの?」
「あ、おれね、バイク事故……。バイク乗ってたらトラックに追突された。お前が死んで、三ヶ月くらい後だったかな」
いや、明るく笑ってるけど結構壮絶な過去じゃない?
おれは苦笑いすると、涼太を見る。
「ていうかさ。happiness見たよ、ヤバすぎ。めっちゃ良かった」
「ぐわー!恥ずかしい!」
おれは顔を覆うと、ジタバタと動いた。
「何でだよ、褒めてんだよ!語りたくて仕方ないよおれは。語りたすぎて、匿名で腐男子Twitterアカウント開設しちゃったよ!!」
「おまえ……なにおれと同じ事してんだよー!」
おれたちは懐かしさから話が盛り上がりに盛り上がると、まだまだ語り足りずに涼太の家に行って存分に近況報告をし合うこととなった。
「えーと、日比野?」
「秋生でいいよ。おれも凛て呼ぶし」
おれらは軽く変装すると、近所のコンビニで酒と肴を買い込み、秋生の家で存分に語り合った。
まさか、そこからこんな騒動になるなんて思いもせずに……。
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