転生したらBLゲームの攻略キャラになってたんですけど!

朝比奈歩

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君最!シリーズ日常編

翔太編①

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「凛ー!なんか趣味のことで悩んでるんだって?」
翔太はそういうと、おれの未だに空白のままのアンケートシートの趣味欄を指差す。
「うん……おれ、無趣味とか……すごい隠キャ感甚だしいよな」
おれのどんよりとした声に、翔太は笑う。
「凛が隠キャとかウケる!世間には陽キャ代表みたいに扱われてるのに!」
え?
そうなの?
おれ、一般的には陽キャ代表なの?
おれは世間のイメージと自分のイメージの乖離に頭を抱えた。
「……ちなみに、翔太はなんで書いたの」
「おれ?おれはねービンテージジーンズ集めと、あとリアル謎解きゲーム!」
謎解きゲームってあれか。
最近よくある街の中やパークや施設の中で、謎解きをしながらゴールを目指すってやつか。
面白そうだと思ったけど、おれは一回もやった事ないなー。
「謎解きゲームって面白いの?」
「めっちゃ面白いよ!凛はやったこと無い?」
「無い」
「えー!勿体無い!」
翔太はそう言うと、ズイッとおれの方へ顔を寄せる。
「ねねね。今さ『花やかた』で謎解きゲームやってるんだよね!それ、チームでも参戦できるから、一緒に行かない?!」
『花やかた』とは、都内にある老舗の遊園地だ。
そんなに場所も遠く無いし、謎解きゲームも翔太と一緒ならなんだか楽しそうだ。
「ん、いいよ。おれも体験してみたい」
「マジで?!やったー!」
翔太はそう言っておれの手を取って喜ぶ。
当日、おれは迎えに来てくれた翔太の車で花やかたへ向かうと、早速入場券と謎解きゲームの書類の入った封筒を購入して中に入った。
平日とはいえ、花やかたにはそれなりに人がいる。
一応二人とも変装してきたけど、明らかに翔太のイケメン華やかオーラは変装の外へ漏れ出していた。
それを翔太に言えば「いや、それ、凛が言うの?!」と言葉を返される。
まあ、本人は全く気にしていないからいいのかな。
おれたちはまずベンチに腰をかけると封筒を開いて中身を確認する。
中には冊子とメモ用紙、簡易鉛筆と様々な書類が入っている。
書類は然るべき時に使うようだ。
翔太は慣れた手つきで冊子の一ページ目を開くと、冒頭部分を読み始めた。
「えーとなになに。『探偵諸君、この度は私の依頼を受けてくれて感謝する。今回の依頼は……』」
つまり、おれたちは設定上私立探偵かなんかなんだな。
で、この依頼人の依頼を受けると。
今回の依頼は『遺言書のありかを探す』事。
ざっくり要約すれば、
『大富豪の父親が名前の書いていない遺言書をどこかに隠した。
その父親には息子が三人いて、自分の遺言書を最初に見つけた者を跡取りとして、名前を記入した遺言書を渡す』
といった内容。
今回の依頼人はその息子のうちの三男という事だった。
なるほど、設定も凝っている。
おれたちは指示書を読み進めると、まず最初の謎解きに当たった。
「えーっと、まずはこの記号の場所を見つけてそこへ行け、と……」
翔太は地図を広げると、該当の場所を探す。
「これってなんの記号?」
「んーなんだろ。円に点々がついてて三角の台座…………」
「あっ……もしかして観覧車?!」
「そーだよ!それだ!さあ、いくぞ!ワトソンくん!」
いつのまにおれはワトソンになったんだ。
おれたちは地図を見ながら観覧車までを歩く。
爽やかな風が気持ちいい。
観覧車まで来ると、次の指示を探す。
「んと……赤の番号を調べて、それに5をかけた場所にいけ」
「赤って……1?」
「1×5……5。いちかけるご。いちご……イチゴ?!」
地図の中には様々な記号が書いてあるが、そこにはイチゴも書かれている。
おれたちは顔を見合わせると、イチゴの記号の場所……メリーゴーランドの所まで向かった。
その後もいくつかの指示をこなし、クイズをこなし、かれこれ二時間。
なかなかに歩かせてくれる。
「翔太ぁ~!おれ喉乾いた!ちょっと休憩しない?」
「あ、賛成~!おれも喉乾いた!ってか、腹減った!」
そういうわけで、おれたちは園内のレストランに入ると、テーブルに着いた。
翔太など、もう堂々と帽子を脱いでいる。
いや、バレる。
流石にそれはバレるよ。
お前みたいなピンク頭のイケメン、そうそういないから!
「えーいいじゃん、バレても。フライデーされるようなヤバいことしてないし。おれと凛でデートしてるだけだもん」
そういうと、翔太はおれの帽子もえいっと脱がせ、メガネも外してしまった。
チラチラと他の人の視線が痛い。
ええい、仕方ない。
今更隠してもバレてるしな。
おれはわかったよと頷くと、メニューに目を通す。
ここはイタリアンの店なので、各々好きなパスタを注文した。
おれはトマトベース、翔太はオリーブオイルベースだ。
しばらくするとホカホカしたパスタが運ばれてくる。
遊園地のレストランにしては美味しそうだ。
おれたちは早速食べ始める。
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