上 下
49 / 106
君最!シリーズ日常編

翔太編①

しおりを挟む
「凛ー!なんか趣味のことで悩んでるんだって?」
翔太はそういうと、おれの未だに空白のままのアンケートシートの趣味欄を指差す。
「うん……おれ、無趣味とか……すごい隠キャ感甚だしいよな」
おれのどんよりとした声に、翔太は笑う。
「凛が隠キャとかウケる!世間には陽キャ代表みたいに扱われてるのに!」
え?
そうなの?
おれ、一般的には陽キャ代表なの?
おれは世間のイメージと自分のイメージの乖離に頭を抱えた。
「……ちなみに、翔太はなんで書いたの」
「おれ?おれはねービンテージジーンズ集めと、あとリアル謎解きゲーム!」
謎解きゲームってあれか。
最近よくある街の中やパークや施設の中で、謎解きをしながらゴールを目指すってやつか。
面白そうだと思ったけど、おれは一回もやった事ないなー。
「謎解きゲームって面白いの?」
「めっちゃ面白いよ!凛はやったこと無い?」
「無い」
「えー!勿体無い!」
翔太はそう言うと、ズイッとおれの方へ顔を寄せる。
「ねねね。今さ『花やかた』で謎解きゲームやってるんだよね!それ、チームでも参戦できるから、一緒に行かない?!」
『花やかた』とは、都内にある老舗の遊園地だ。
そんなに場所も遠く無いし、謎解きゲームも翔太と一緒ならなんだか楽しそうだ。
「ん、いいよ。おれも体験してみたい」
「マジで?!やったー!」
翔太はそう言っておれの手を取って喜ぶ。
当日、おれは迎えに来てくれた翔太の車で花やかたへ向かうと、早速入場券と謎解きゲームの書類の入った封筒を購入して中に入った。
平日とはいえ、花やかたにはそれなりに人がいる。
一応二人とも変装してきたけど、明らかに翔太のイケメン華やかオーラは変装の外へ漏れ出していた。
それを翔太に言えば「いや、それ、凛が言うの?!」と言葉を返される。
まあ、本人は全く気にしていないからいいのかな。
おれたちはまずベンチに腰をかけると封筒を開いて中身を確認する。
中には冊子とメモ用紙、簡易鉛筆と様々な書類が入っている。
書類は然るべき時に使うようだ。
翔太は慣れた手つきで冊子の一ページ目を開くと、冒頭部分を読み始めた。
「えーとなになに。『探偵諸君、この度は私の依頼を受けてくれて感謝する。今回の依頼は……』」
つまり、おれたちは設定上私立探偵かなんかなんだな。
で、この依頼人の依頼を受けると。
今回の依頼は『遺言書のありかを探す』事。
ざっくり要約すれば、
『大富豪の父親が名前の書いていない遺言書をどこかに隠した。
その父親には息子が三人いて、自分の遺言書を最初に見つけた者を跡取りとして、名前を記入した遺言書を渡す』
といった内容。
今回の依頼人はその息子のうちの三男という事だった。
なるほど、設定も凝っている。
おれたちは指示書を読み進めると、まず最初の謎解きに当たった。
「えーっと、まずはこの記号の場所を見つけてそこへ行け、と……」
翔太は地図を広げると、該当の場所を探す。
「これってなんの記号?」
「んーなんだろ。円に点々がついてて三角の台座…………」
「あっ……もしかして観覧車?!」
「そーだよ!それだ!さあ、いくぞ!ワトソンくん!」
いつのまにおれはワトソンになったんだ。
おれたちは地図を見ながら観覧車までを歩く。
爽やかな風が気持ちいい。
観覧車まで来ると、次の指示を探す。
「んと……赤の番号を調べて、それに5をかけた場所にいけ」
「赤って……1?」
「1×5……5。いちかけるご。いちご……イチゴ?!」
地図の中には様々な記号が書いてあるが、そこにはイチゴも書かれている。
おれたちは顔を見合わせると、イチゴの記号の場所……メリーゴーランドの所まで向かった。
その後もいくつかの指示をこなし、クイズをこなし、かれこれ二時間。
なかなかに歩かせてくれる。
「翔太ぁ~!おれ喉乾いた!ちょっと休憩しない?」
「あ、賛成~!おれも喉乾いた!ってか、腹減った!」
そういうわけで、おれたちは園内のレストランに入ると、テーブルに着いた。
翔太など、もう堂々と帽子を脱いでいる。
いや、バレる。
流石にそれはバレるよ。
お前みたいなピンク頭のイケメン、そうそういないから!
「えーいいじゃん、バレても。フライデーされるようなヤバいことしてないし。おれと凛でデートしてるだけだもん」
そういうと、翔太はおれの帽子もえいっと脱がせ、メガネも外してしまった。
チラチラと他の人の視線が痛い。
ええい、仕方ない。
今更隠してもバレてるしな。
おれはわかったよと頷くと、メニューに目を通す。
ここはイタリアンの店なので、各々好きなパスタを注文した。
おれはトマトベース、翔太はオリーブオイルベースだ。
しばらくするとホカホカしたパスタが運ばれてくる。
遊園地のレストランにしては美味しそうだ。
おれたちは早速食べ始める。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【BL】国民的アイドルグループ内でBLなんて勘弁してください。

白猫
BL
国民的アイドルグループ【kasis】のメンバーである、片桐悠真(18)は悩んでいた。 最近どうも自分がおかしい。まさに悪い夢のようだ。ノーマルだったはずのこの自分が。 (同じグループにいる王子様系アイドルに恋をしてしまったかもしれないなんて……!) (勘違いだよな? そうに決まってる!) 気のせいであることを確認しようとすればするほどドツボにハマっていき……。

転生したので異世界でショタコンライフを堪能します

のりたまご飯
BL
30歳ショタコンだった俺は、駅のホームで気を失い、そのまま電車に撥ねられあっけなく死んだ。 けど、目が覚めるとそこは知らない天井...、どこかで見たことのある転生系アニメのようなシチュエーション。 どうやら俺は転生してしまったようだ。 元の世界で極度のショタコンだった俺は、ショタとして異世界で新たな人生を歩む!!! ショタ最高!ショタは世界を救う!!! ショタコンによるショタコンのためのBLコメディ小説であーる!!!

甥っ子と異世界に召喚された俺、元の世界へ戻るために奮闘してたら何故か王子に捕らわれました?

秋野 なずな
BL
ある日突然、甥っ子の蒼葉と異世界に召喚されてしまった冬斗。 蒼葉は精霊の愛し子であり、精霊を回復できる力があると告げられその力でこの国を助けて欲しいと頼まれる。しかし同時に役目を終えても元の世界には帰すことが出来ないと言われてしまう。 絶対に帰れる方法はあるはずだと協力を断り、せめて蒼葉だけでも元の世界に帰すための方法を探して孤軍奮闘するも、誰が敵で誰が味方かも分からない見知らぬ地で、1人の限界を感じていたときその手は差し出された 「僕と手を組まない?」 その手をとったことがすべての始まり。 気づいた頃にはもう、その手を離すことが出来なくなっていた。 王子×大学生 ――――――――― ※男性も妊娠できる世界となっています

嫌われ者だった俺が転生したら愛されまくったんですが

夏向りん
BL
小さな頃から目つきも悪く無愛想だった篤樹(あつき)は事故に遭って転生した途端美形王子様のレンに溺愛される!

乙女ゲームのモブに転生したようですが、何故かBLの世界になってます~逆ハーなんて狙ってないのに攻略対象達が僕を溺愛してきます

syouki
BL
学校の階段から落ちていく瞬間、走馬灯のように僕の知らない記憶が流れ込んできた。そして、ここが乙女ゲーム「ハイスクールメモリー~あなたと過ごすスクールライフ」通称「ハイメモ」の世界だということに気が付いた。前世の僕は、色々なゲームの攻略を紹介する会社に勤めていてこの「ハイメモ」を攻略中だったが、帰宅途中で事故に遇い、はやりの異世界転生をしてしまったようだ。と言っても、僕は攻略対象でもなければ、対象者とは何の接点も無い一般人。いわゆるモブキャラだ。なので、ヒロインと攻略対象の恋愛を見届けようとしていたのだが、何故か攻略対象が僕に絡んでくる。待って!ここって乙女ゲームの世界ですよね??? ※設定はゆるゆるです。 ※主人公は流されやすいです。 ※R15は念のため ※不定期更新です。 ※BL小説大賞エントリーしてます。よろしくお願いしますm(_ _)m

不良高校に転校したら溺愛されて思ってたのと違う

らる
BL
幸せな家庭ですくすくと育ち普通の高校に通い楽しく毎日を過ごしている七瀬透。 唯一普通じゃない所は人たらしなふわふわ天然男子である。 そんな透は本で見た不良に憧れ、勢いで日本一と言われる不良学園に転校。 いったいどうなる!? [強くて怖い生徒会長]×[天然ふわふわボーイ]固定です。 ※更新頻度遅め。一日一話を目標にしてます。 ※誤字脱字は見つけ次第時間のある時修正します。それまではご了承ください。

人生イージーモードになるはずだった俺!!

抹茶ごはん
BL
平凡な容姿にろくでもない人生を歩み事故死した俺。 前世の記憶を持ったまま転生し、なんと金持ちイケメンのお坊ちゃまになった!! これはもう人生イージーモード一直線、前世のような思いはするまいと日々邁進するのだが…。 何故か男にばかりモテまくり、厄介な事件には巻き込まれ!? 本作は現実のあらゆる人物、団体、思想及び事件等に関係ございません。あくまでファンタジーとしてお楽しみください。

乙女ゲーの隠しキャラに転生したからメインストーリーとは関係なく平和に過ごそうと思う

ゆん
BL
乙女ゲーム「あなただけの光になる」は剣と魔法のファンタジー世界で舞台は貴族たちが主に通う魔法学園 魔法で男でも妊娠できるようになるので同性婚も一般的 生まれ持った属性の魔法しか使えない その中でも光、闇属性は珍しい世界__ そんなところに車に轢かれて今流行りの異世界転生しちゃったごく普通の男子高校生、佐倉真央。 そしてその転生先はすべてのエンドを回収しないと出てこず、攻略も激ムズな隠しキャラ、サフィラス・ローウェルだった!! サフィラスは間違った攻略をしてしまうと死亡エンドや闇堕ちエンドなど最悪なシナリオも多いという情報があるがサフィラスが攻略対象だとわかるまではただのモブだからメインストーリーとは関係なく平和に生きていこうと思う。 __________________ 誰と結ばれるかはまだ未定ですが、主人公受けは固定です! 初投稿で拙い文章ですが読んでもらえると嬉しいです。 誤字脱字など多いと思いますがコメントで教えて下さると大変助かります…!

処理中です...