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君最!シリーズ日常編

清十郎編①

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「何をそんなに悩んでるんだ?」
アンケート用紙と睨めっこをして悩んでいるおれの手元を覗き込みながら、清十郎はそう聞く。
「んんー。おれ、趣味が少なくてさぁ……」
いや、いくらなんでもBL作品漁りとか書けないしね。
歌や作詞作曲なんかは趣味じゃないし、ゲームって書くのもどうよって感じだし。
「清十郎はさあ、何?なんて書いた?」
「おれか?おれはバイクとキャンプだな」
うっわー!
趣味まで男前。
「キャンプってソロキャンプ?」
「普段はソロが多いな。バイクで最低限の荷物を持って、キャンプをする」
ワイルドー!
なんかモテる男の趣味って感じ。
「キャンプって楽しい?」
「もちろん楽しいぞ。凛も一度一緒に行ってみるか?」
「え、行きたい!」
おれがそう言うと、清十郎は少し笑う。
「なら次のオフはキャンプに行こう。ちょっと気になる所があってな、ちょうど良かった」
次のオフ、早速おれたちはキャンプ場へと車を走らせていた。
今回は二人だと言うことで、バイクではなくレンタカーを借りている。
バイク二人乗りでも良かったんだけど、それはこの次の機会にってことになった。
清十郎の運転、初めてみるけど新鮮!
ていうか、何やってもサマになるな、この男は……。
サングラスをかけて、RVを軽やかに運転する姿はいつも近くで清十郎を見ているおれでも見惚れる。
ていうか、おれが運転しても良かったんだけど、清十郎は頑なに「おれが運転する」と言って聞かなかった。
おれの運転技術はそんなに頼りないか……?
まあでも清十郎の運転見えたからよしとしよう。
途中、道の駅で少しだけ名物を食べたりして、おれたちはドライブも楽しんだ。
3時間ほど車を走らせ、着いた場所はいわゆるグランピングができるおしゃれな場所だ。
湖の辺りで、魚釣りもできるしボート遊びもできるらしい。
すでに豪華なコテージテント……ホテル並みの施設!が建っていて、係の人が迎え入れてくれる。
今日は一般的には平日ということで、比較的空いているらしい。
もちろん、混んでいてもコテージ内の客同士の目線が合わないような作りにはなっているが。
おれたちは案内されたコテージに入ると、荷物を置いて早速散策に出かけた。
夕食は十八時過ぎに食材をコテージの冷蔵庫に運んで置いてくれるらしい。
それを好きな時間に好きなように自分でバーベキューするそうだ。
おれたちはそれまでの間、湖の周りを散歩したりして過ごした。
「ここは足場が悪いぞ、気をつけろ」
そう言って散歩中、清十郎が手を差し出してくれる。
おれはその手を握るとその場所を通り過ぎるが、そこを通り過ぎても手を離される気配がないので、そのまま繋いでおいた。
あれか、迷子防止か?
おれもこんなところで逸れるのは嫌だから、そのままにしておく。
それにしても……。
周り、カップルしかいないな。
すれ違った数人は全員カップルだった。
いや別に寂しいとか悔しいとかじゃないぞ?
おれは清十郎と二人でこられて大満足だ。
側から見たらどう思われるか分からんけども……。
おれは清十郎をチラリと見る。
すると、向こうもおれを見ていたらしく、目線が合った。
「ん?なんだ?」
「いや、カップルばっかりだよなーって」
おれの言葉に、清十郎はしれっと答える。
「ああ、ここは有名なデートスポットだからな」
え!
そうなの?!
そりゃカップルが多いわけだ!
「おれたちもデートだし、いいだろう」
これ、デートだったんか!
おれは心の中でそう突っ込むとニコニコ笑う清十郎を見て苦笑した。
まあ、おれも楽しいし、清十郎も楽しそうだし、いいか……。
おれたちはしばらく散策を楽しむと、そろそろ日も暮れそうなのでコテージへ戻る。
コテージに着くと、果たして冷蔵庫には沢山のバーベキューの食材が入っていた。
肉や野菜、めっちゃ豪華だ!
おれたちは食材をバーベキューグリルに準備すると焼き始める。
中にはビザ生地の準備まであった。
おれは肉を清十郎に任せて、ピザの盛り付けにかかる。
「清十郎、嫌いなものある?」
「いや、無いぞ」
うん、無さそう。
おれはピザソースを生地に塗りたくると、ベーコン、パイナップル、玉ねぎ、コーン、チーズと乗せてゆく。
うん、なかなか美味しそうじゃね?
出来上がったピザを小さいピザ窯に入れる。
あとは焼き上がりを待つだけだ。
清十郎の肉もいい感じに焼けてきた。
ジュージューといい音と香りだ。
おれは清十郎の手元を覗き込むと、手際良く肉を焼く姿に惚れ惚れした。
さすが慣れてるね。
「一人で来る時は何を食べてるんだ?」
「そうだな……バーベキューの時もあれば、クッカーで簡単に料理する時もある。まあ、その時の旅の状態にもよるな」
肉を返しながら清十郎はそう言う。
「この場所は雑誌で見つけて、凛を是非連れてきたかったから……叶って良かったよ」
そ、そんな男前なこと言うなよ!
おれは赤くなった頬を手で隠すと、清十郎を見上げる。
「なんだ、照れたのか?」
「……照れた」
おれの言葉に清十郎はクックッと笑うと、かわいいと呟く。
いやだからおれは……まあいいか。
おれが何言っても、かわいいで丸め込まれるのがオチだからな。
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