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脅迫状パニック!
脅迫状パニック!⑭-2
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「ーーさん!ーーんさん!!凛さん!!」
「……ん……」
「大丈夫ですか?!」
「……あ、おれ…寝てた…」
「はい……。打ち合わせが長くなる旨の電話を入れても出ないし……心配しました」
敦士はホッとしてそう言うと、おれの台本を覗き込む。
「ーー凛さん」
「ん?」
敦士の表情が険しい。
敦士はおれの手元から視線を離さない。
「その手紙ーー何ですか?」
「手紙?」
おれは開きっぱなしの台本に視線を落とす。
そこには、見覚えのある白い封筒が挟まれていた。
「ーー?!」
こんなもの、おれが台本を読み始めたときには、間違いなく無かった。
つまりーーおれが寝ている間に誰かがこの部屋へ侵入し、この手紙を挟んだと言う事だ。
「あ……敦士……」
「大丈夫です、凛さん。おれが開けます」
敦士は慎重にその封筒を開ける。
そこに書かれていたのはーー。
『警告 ハ しタ 。 死 ネ 』
敦士は静かに手紙を閉じると、その唇を噛む。
おれは情けない事に、カタカタと震える指を止めることができなかった。
「凛さん!」
敦士はおれの名前を呼ぶと、震える手を握る。
「なあ……犯人、捕まったんだよな…?」
なのに、なんで……。
「凛さん、落ち着いてください」
敦士はおれの手を強く握りしめると、しっかりとした口調で言う。
「とりあえず、ここを出ましょう。先程、ホテルの手配をしました。そこに行きましょう」
敦士はそう言うと、おれの手荷物をまとめる。
そして、おれのスマホの電源を切った。
「気持ち悪いかもしれませんが……聞いてください。万が一、部屋に侵入されたとき、凛さんのスマホの位置情報のデータを取られていたらまずいので……明日の朝までスマホの電源は入れないでください」
「わ、わかった……」
「では、行きましょう。おれの車も同様に使えませんから、タクシーを呼んであります」
敦士はそう言っておれの肩を抱くと、外へ促す。
タクシーの中でも、おれは頭の中をグルグルと様々な疑問が回っていた。
ホテルに着くと、敦士がフロントにチェックインをしにいく。
おれはソワソワとしながらそれを待っていた。
誰もが怪しく見え、誰もが自分を見ている様な、不信感が募る。
おれは、敦士が早く戻ってきてくれる様に祈った。
「あの…すみません」
「?!」
突然声をかけられ、おれはビクリと身体を跳ねさせた。
心臓がバクバクし、背中に冷たい汗が流れる。
「AshurAのLINさんですよね?あたし、ファンなんです!握手して貰えませんか?」
「あ……ああ……はい、いいですよ……」
おれはぎこちなく笑うと、手を差し出す。
「きゃあ!ありがとうございます!一生の思い出にします!!」
女性は嬉しそうに握手をすると、そのままペコリとお辞儀をして歩き去った。
まるで、耳のすぐ横に心臓があるのではないかというほど、心臓の音がうるさい。
おれは深呼吸をすると、震える手を握りしめた。
「凛さん!すみません……チェックイン手間取って……大丈夫ですか?」
おれは何とか頷くと、敦士はその眉を顰める。
「顔が、真っ青です。早く部屋に行きましょう」
部屋に入ると、私はおれの荷物を置いて、さっと部屋の中のチェックをした。
そうしてカーテンをしっかり閉めると、おれをベッドに座らせる。
「凛さん。ここなら大丈夫です。おれが出たら鍵はもちろんチェーンもしっかりかけて、誰がきてもおれが来るまで開けないでくださいね」
そう言って、敦士は部屋を出て行こうとする。
「あ、敦士…!行っちゃうの?!」
おれは、そう言って思わず敦士のシャツを掴んだ。
「コンビニに行って、飲み物と食事を買ってきます。凛さん、昼から何も口にしてないでしょう?」
「……食べられる気がしない」
「ーーそうかもしれませんが、少しは何か食べてください。食べやすい物、買ってきますから」
そういうと、敦士はおれの背をさすって落ち着かせてから足早に部屋を出ていく。
最後にドアから少し顔を出し、もう一度チェーンをする様に念を押して、敦士はドアを閉めた。
おれは言われた通りチェーンをかけると、ソファに座る。
ベッドに横になると、また寝てしまいそうだったからだ。
敦士が帰ってくるまでの間が長い。
おれはソワソワと視線を動かすと、溜息をついた。
たったの十五分が、まるで一時間にも二時間にも感じる。
おれは、自分の情け無さに自嘲した。
「……ん……」
「大丈夫ですか?!」
「……あ、おれ…寝てた…」
「はい……。打ち合わせが長くなる旨の電話を入れても出ないし……心配しました」
敦士はホッとしてそう言うと、おれの台本を覗き込む。
「ーー凛さん」
「ん?」
敦士の表情が険しい。
敦士はおれの手元から視線を離さない。
「その手紙ーー何ですか?」
「手紙?」
おれは開きっぱなしの台本に視線を落とす。
そこには、見覚えのある白い封筒が挟まれていた。
「ーー?!」
こんなもの、おれが台本を読み始めたときには、間違いなく無かった。
つまりーーおれが寝ている間に誰かがこの部屋へ侵入し、この手紙を挟んだと言う事だ。
「あ……敦士……」
「大丈夫です、凛さん。おれが開けます」
敦士は慎重にその封筒を開ける。
そこに書かれていたのはーー。
『警告 ハ しタ 。 死 ネ 』
敦士は静かに手紙を閉じると、その唇を噛む。
おれは情けない事に、カタカタと震える指を止めることができなかった。
「凛さん!」
敦士はおれの名前を呼ぶと、震える手を握る。
「なあ……犯人、捕まったんだよな…?」
なのに、なんで……。
「凛さん、落ち着いてください」
敦士はおれの手を強く握りしめると、しっかりとした口調で言う。
「とりあえず、ここを出ましょう。先程、ホテルの手配をしました。そこに行きましょう」
敦士はそう言うと、おれの手荷物をまとめる。
そして、おれのスマホの電源を切った。
「気持ち悪いかもしれませんが……聞いてください。万が一、部屋に侵入されたとき、凛さんのスマホの位置情報のデータを取られていたらまずいので……明日の朝までスマホの電源は入れないでください」
「わ、わかった……」
「では、行きましょう。おれの車も同様に使えませんから、タクシーを呼んであります」
敦士はそう言っておれの肩を抱くと、外へ促す。
タクシーの中でも、おれは頭の中をグルグルと様々な疑問が回っていた。
ホテルに着くと、敦士がフロントにチェックインをしにいく。
おれはソワソワとしながらそれを待っていた。
誰もが怪しく見え、誰もが自分を見ている様な、不信感が募る。
おれは、敦士が早く戻ってきてくれる様に祈った。
「あの…すみません」
「?!」
突然声をかけられ、おれはビクリと身体を跳ねさせた。
心臓がバクバクし、背中に冷たい汗が流れる。
「AshurAのLINさんですよね?あたし、ファンなんです!握手して貰えませんか?」
「あ……ああ……はい、いいですよ……」
おれはぎこちなく笑うと、手を差し出す。
「きゃあ!ありがとうございます!一生の思い出にします!!」
女性は嬉しそうに握手をすると、そのままペコリとお辞儀をして歩き去った。
まるで、耳のすぐ横に心臓があるのではないかというほど、心臓の音がうるさい。
おれは深呼吸をすると、震える手を握りしめた。
「凛さん!すみません……チェックイン手間取って……大丈夫ですか?」
おれは何とか頷くと、敦士はその眉を顰める。
「顔が、真っ青です。早く部屋に行きましょう」
部屋に入ると、私はおれの荷物を置いて、さっと部屋の中のチェックをした。
そうしてカーテンをしっかり閉めると、おれをベッドに座らせる。
「凛さん。ここなら大丈夫です。おれが出たら鍵はもちろんチェーンもしっかりかけて、誰がきてもおれが来るまで開けないでくださいね」
そう言って、敦士は部屋を出て行こうとする。
「あ、敦士…!行っちゃうの?!」
おれは、そう言って思わず敦士のシャツを掴んだ。
「コンビニに行って、飲み物と食事を買ってきます。凛さん、昼から何も口にしてないでしょう?」
「……食べられる気がしない」
「ーーそうかもしれませんが、少しは何か食べてください。食べやすい物、買ってきますから」
そういうと、敦士はおれの背をさすって落ち着かせてから足早に部屋を出ていく。
最後にドアから少し顔を出し、もう一度チェーンをする様に念を押して、敦士はドアを閉めた。
おれは言われた通りチェーンをかけると、ソファに座る。
ベッドに横になると、また寝てしまいそうだったからだ。
敦士が帰ってくるまでの間が長い。
おれはソワソワと視線を動かすと、溜息をついた。
たったの十五分が、まるで一時間にも二時間にも感じる。
おれは、自分の情け無さに自嘲した。
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