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脅迫状パニック!
脅迫状パニック!③-2
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『橘堂さん……おれは今まで、おれ自身のためだけに歌を歌ってきました。でも……これからは、二人のために歌を歌いたい……!』
『瑞樹……』
「………」
「………」
「……ど、どう?」
「………悪くない」
「よっしゃー!」
おれは早速仕事の空き時間に一哉に本読みを付き合ってもらっていた。
一哉は橘堂春人役の台詞を読んでくれている。
周りのメンバーはギャラリーだ。
今は恥ずかしいとか言ってられないもんな。
一人でも建設的な意見を言ってくれるならその方がいい。
「……というか、普通にうまいんじゃない?」
翔太が口笛を吹きながらそう言う。
え、まじ?
それめっちゃ嬉しい!
「いつの間に練習したんだ?」
清十郎の言葉に、おれは首を傾げる。
「昨日台本一通り読んだだけだよ」
な、なんだよ……みんなしてそんな顔して。
しまった、もっと真面目に台詞覚えてました!って言わなきゃダメだった?!
やるって言ったくせにやる気ねー!って思われたかな……。
「これだから高スペ男は……」
「まあ、予想は出来てたけどねー?」
え、なに?
皆でボソボソおれの悪口言ってる?!
「ちょ、ちょっと待って!もっと真面目にやるから皆見放さないで!もう少し付き合ってよ!」
焦ったようなおれの台詞に、一哉が丸めた台本でポコリとおれの頭を叩く。
「いいから集中!ほら、続き行くぞ!」
それからおれは皆に付き合ってもらって、なんとかそれなりに演技らしい演技ができるようになった……はず。
クランクイン日、おれはドキドキしながら現場に向かう。
「葉山瑞樹役のAshurA、LINさんでーす」
拍手で迎えられ、おれは緊張マックスで頭を下げた。
「あ、あの…。演技経験ゼロなのでご迷惑をおかけすると思いますが、精一杯頑張りますのでよろしくお願いしみゃす」
か、噛んだーー!
こんな時におれのあほーー!
おれのポカに現場に笑いが広がる。
「ふはっ!いや、きみいいキャラしてるね…!」
そう言って笑ったのは事務所社長役の千葉大輔。
俳優の大御所だ。
「す、すみません…!緊張してて」
おれはアワアワと頭を下げると、これまた女優の大御所、和田弘子が笑う。
「ふふ。正直、ヒットチャート常連の若い子って聞いてたから、もっと鼻っ柱の強い子が来るかと思ってたのに、意外。でも、わたしはすきよ」
ありがたい事に、こんなおれのポカミスで大御所二人のつかみはオーケーらしい。
たまにはおれの凡ミスも役に立つもんだな!
「改めてお願いします」
おれは再び頭を下げると、拍手がわく。
「最後は橘堂春人役の久我拓海さんです!」
「久我です。精一杯やりますのでよろしくお願いします」
か、格好いい……!
ただ挨拶しただけなのに、パッと空気変わった!
みんなの視線を釘付けにしてる。
くっそ、声まで格好いいとか反則だ。
おれは拍手を送りながら、久我さんを見る。
ん?あれ、久我さんもこっち見てる。
とりあえず笑っておこう。
あ、あれ?
視線逸らされちゃった。
なんで?おれなんかした?
そんな感じで、おれの撮影は始まった。
『Rainy 雨粒が涙を隠してくれるから
雨の日は嫌いじゃない
Cloudy 雲間から除く光が
ゆく道を照らしてくれるから
君の元まで歩いてゆこう』
「……流石にうまいね!けど、ここはまだデビュー前の指導を受ける前なんだ。もう少し荒削りな感じで歌える?」
「はい、やってみます」
荒削り……そうだな。
少しだけ、感情と勢いが空回ってる感じで良いかな?
『Rainy 雨が全てを洗い流して
綺麗な空を連れてくる
Rainy Rainy morning
こんな日は君に会いたい』
「うーん、いいね。ちょっと感情が昂ってる感じが最高!」
よし、よかった!
オーケー出た!
「じゃぁ次、そのまま瑞樹と春人のファーストコンタクトのシーン行くよ!……じゃあ瑞樹の歌い終わりから!……スタート!」
『Rainy Rainy morning
こんな日は君に会いたい』
おれが歌い終わると、背後から拍手が聞こえる。
『……君、歌手でも目指してるの?』
拓海さんの言葉に、おれは驚いたように振り返って……照れたように頷く。
『あ、あの…拍手、ありがとうございます。おれ……その、大それた夢かもしれませんけど…歌手になりたいと思っています…!』
照れながらも、意思は強くハッキリと答えた。
拓海さんの視線がおれを射抜く。
おれを見るその瞳の力はとても強くて、じんわりと胸が熱くなっていく。
視線が絡まって、台詞がない瞬間もまるで恋の初めの、熱くてジリジリと心が焼かれるような感覚が支配していた。
「はい、カット!」
監督の声に、緊張が解かれる。
「LINくん、いいよ!本当に演技初挑戦?」
「よかった……ありがとうございます」
本当に演技は初挑戦だけど、一哉の言った通り役になりきればできそうな気がする。
昔から読んでる人の本だしな!
そんな感じで、初日の撮影は終わった。
『瑞樹……』
「………」
「………」
「……ど、どう?」
「………悪くない」
「よっしゃー!」
おれは早速仕事の空き時間に一哉に本読みを付き合ってもらっていた。
一哉は橘堂春人役の台詞を読んでくれている。
周りのメンバーはギャラリーだ。
今は恥ずかしいとか言ってられないもんな。
一人でも建設的な意見を言ってくれるならその方がいい。
「……というか、普通にうまいんじゃない?」
翔太が口笛を吹きながらそう言う。
え、まじ?
それめっちゃ嬉しい!
「いつの間に練習したんだ?」
清十郎の言葉に、おれは首を傾げる。
「昨日台本一通り読んだだけだよ」
な、なんだよ……みんなしてそんな顔して。
しまった、もっと真面目に台詞覚えてました!って言わなきゃダメだった?!
やるって言ったくせにやる気ねー!って思われたかな……。
「これだから高スペ男は……」
「まあ、予想は出来てたけどねー?」
え、なに?
皆でボソボソおれの悪口言ってる?!
「ちょ、ちょっと待って!もっと真面目にやるから皆見放さないで!もう少し付き合ってよ!」
焦ったようなおれの台詞に、一哉が丸めた台本でポコリとおれの頭を叩く。
「いいから集中!ほら、続き行くぞ!」
それからおれは皆に付き合ってもらって、なんとかそれなりに演技らしい演技ができるようになった……はず。
クランクイン日、おれはドキドキしながら現場に向かう。
「葉山瑞樹役のAshurA、LINさんでーす」
拍手で迎えられ、おれは緊張マックスで頭を下げた。
「あ、あの…。演技経験ゼロなのでご迷惑をおかけすると思いますが、精一杯頑張りますのでよろしくお願いしみゃす」
か、噛んだーー!
こんな時におれのあほーー!
おれのポカに現場に笑いが広がる。
「ふはっ!いや、きみいいキャラしてるね…!」
そう言って笑ったのは事務所社長役の千葉大輔。
俳優の大御所だ。
「す、すみません…!緊張してて」
おれはアワアワと頭を下げると、これまた女優の大御所、和田弘子が笑う。
「ふふ。正直、ヒットチャート常連の若い子って聞いてたから、もっと鼻っ柱の強い子が来るかと思ってたのに、意外。でも、わたしはすきよ」
ありがたい事に、こんなおれのポカミスで大御所二人のつかみはオーケーらしい。
たまにはおれの凡ミスも役に立つもんだな!
「改めてお願いします」
おれは再び頭を下げると、拍手がわく。
「最後は橘堂春人役の久我拓海さんです!」
「久我です。精一杯やりますのでよろしくお願いします」
か、格好いい……!
ただ挨拶しただけなのに、パッと空気変わった!
みんなの視線を釘付けにしてる。
くっそ、声まで格好いいとか反則だ。
おれは拍手を送りながら、久我さんを見る。
ん?あれ、久我さんもこっち見てる。
とりあえず笑っておこう。
あ、あれ?
視線逸らされちゃった。
なんで?おれなんかした?
そんな感じで、おれの撮影は始まった。
『Rainy 雨粒が涙を隠してくれるから
雨の日は嫌いじゃない
Cloudy 雲間から除く光が
ゆく道を照らしてくれるから
君の元まで歩いてゆこう』
「……流石にうまいね!けど、ここはまだデビュー前の指導を受ける前なんだ。もう少し荒削りな感じで歌える?」
「はい、やってみます」
荒削り……そうだな。
少しだけ、感情と勢いが空回ってる感じで良いかな?
『Rainy 雨が全てを洗い流して
綺麗な空を連れてくる
Rainy Rainy morning
こんな日は君に会いたい』
「うーん、いいね。ちょっと感情が昂ってる感じが最高!」
よし、よかった!
オーケー出た!
「じゃぁ次、そのまま瑞樹と春人のファーストコンタクトのシーン行くよ!……じゃあ瑞樹の歌い終わりから!……スタート!」
『Rainy Rainy morning
こんな日は君に会いたい』
おれが歌い終わると、背後から拍手が聞こえる。
『……君、歌手でも目指してるの?』
拓海さんの言葉に、おれは驚いたように振り返って……照れたように頷く。
『あ、あの…拍手、ありがとうございます。おれ……その、大それた夢かもしれませんけど…歌手になりたいと思っています…!』
照れながらも、意思は強くハッキリと答えた。
拓海さんの視線がおれを射抜く。
おれを見るその瞳の力はとても強くて、じんわりと胸が熱くなっていく。
視線が絡まって、台詞がない瞬間もまるで恋の初めの、熱くてジリジリと心が焼かれるような感覚が支配していた。
「はい、カット!」
監督の声に、緊張が解かれる。
「LINくん、いいよ!本当に演技初挑戦?」
「よかった……ありがとうございます」
本当に演技は初挑戦だけど、一哉の言った通り役になりきればできそうな気がする。
昔から読んでる人の本だしな!
そんな感じで、初日の撮影は終わった。
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