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脅迫状パニック!

脅迫状パニック!②-2

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「は?ドラマ?凛が?」
案の定、メンバーの反応は『なんで?』というものだった。
「そう……今流行りのボ、ボーイズラブ小説のドラマ版」
おれの言葉に、もう我慢できないとばかりに翔太が吹き出す。
「ちょ、マジでウケる!ボーイズラブ!凛が!」
「おれだって嘘だと思いたいよ!」
おれの悲痛な叫びに、真面目な顔で清十郎が答える。
「……凛がそんなに嫌なら、断っても良いんじゃないか?」
「んー…おれもそう思う」
珍しく意見が合ったようで、優も清十郎の言葉に頷いた。
「嫌っていうか……演技だけでも初めてなのに、なんでボーイズラブ…って思ったらさ…」
おれはため息をつくと、メンバー唯一の演技経験者の一哉に意見を求める。
「一哉はどう思う?おれに演技とか……無理だと思わない?」
おれの言葉に、今まで黙っていた一哉が真面目な顔で答えた。
「そうだな……ハッキリ言えば、お前演技はできると思うよ。悔しいけど器用だもんな」
「は?」
え、一哉っておれの事そんなふうに思ってたの?
やだ意外。
「プロモ撮影の時から思ってたけど、才能あると思う……けど」
「けど?」
一哉はなんと言って良いものかと思案したような顔でしばらく考えると、おれの方に視線をよこした。
「おまえ、多分タイプなんだよなぁ」
「憑依役者?」
「ああ。役者ってのは大きく分けて2パターンあって……役を理論的に調べて分析して作り込んでいく俳優と、その役に心底なりきってる俳優といるんだが…おまえは後者だと思う」
あ、なんとなくわかる。
おれ、本とか読んでても主人公とかに自己投影しちゃうタイプなんだよなー。
「で、それの何が問題なんだよ?」
一哉はそのサラサラの金髪をかきあげると、小さくため息をついた。
「問題というか……その役をやってる期間はその役になりきってるわけだから、本気で相手に恋しちまったりするんだよ」
「へ?」
「プロの俳優はそのあたり心得てて、ちゃんとオンオフ切り替えができるけど、おまえは演技経験が浅いからその切り替えができるかどうか……」
一哉の言葉に、優と清十郎が眉を顰める。
「え、それって……リアルボーイズラブになるって事?」
「可能性だけどな」
一哉はそういうとそれきり黙ってしまった。
妙な沈黙がこの場を支配する。
やめろよ、皆黙るなよ。
やっぱりおれがそんなふうになったらみんな気持ち悪いって事だよな?
皆からシカトさせるとか……うう、嫌だ!
「やっぱり……受けるのやめようかな」
「ちょっと!皆さん、なに凛さんのやる気削ぐような事言ってるんですか!ネガティヴキャンペーンダメ!絶対!」
敦士はそう言うと、おれの肩をバンと叩いた。
「大丈夫です凛さん!オンとオフの切り替えはおれがちゃんと撮影終わりに切り替えさせます!凛さんは凛さん!瑞樹は瑞樹!」
「おい、なに凛をけしかけてんだよ」
優が不満げにそう言うと、敦士は優の方を振り返る。
「皆さんは、凛さんの新しい魅力…演技という境地を見たくないんですか?!」
「いや、それは……」
「おれは見たい!!凛さんの演技する姿を!」
「そう言われちゃうとなー。確かに見てみたいよなー」
翔太がニヤニヤしながら頷く。
「ですよね?!」
「いや、それはそれとして役が……」
優の言葉を遮るように敦士はおれを振り返る。
「ね!凛さん!受けますよね!」
肩をガクガクと揺らされながらそう問われ、おれは思わず……本当に思わず、頷いてしまった。
「わ、わかったよ…」
「凛!」
清十郎は眉根を寄せておれの名前を呼ぶが、敦士はもう聞いていない。
「聞きましたよ凛さん!全12回がんばりましょうね!」
敦士は飛び跳ねる勢いで楽屋を出て行く。
「いいのか、凛」
清十郎の言葉に、おれは苦笑いをする。
「まあ、やれるだけやってみるよ。一哉が言うほどおれが演技にのめり込むかどうかもわかんないし……万が一の時は…どうすっかなぁ」
「ーーわかった。万が一の時は、おれが引き戻してやる」
清十郎の真剣な瞳に、おれはドキドキする。
も、もしかしてそれって殴ったりして気を取り戻させてくれる気かな……頼むから顔はやめて……。
「そ、その時は手加減よろしくな?」
「加減はできん。覚悟しておけ」
やっぱり本気殴りする気じゃね?!
こ、こわーー!
なるべく憑依しないようにしよ!!
「ぷっ!清なんか勘違いされてる、マジウケる」
「……」
「勘違い?」
「いーの。凛は気にしなくて」
かくして、おれはドラマ初主演が決まったのである。
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