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脅迫状パニック!

脅迫状パニック!⑨

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なんとか三時間で目の腫れも引き、歌番組『Music Terminal』の収録には間に合いそうだ。
おれの前後両脇はメンバーががっちりとガードしている。
な、なんかここまでくるとおれが連行されてるみたいじゃね?
ていうか、前が見えないんですけど。
敦士は番組プロデューサーに、脅迫状の件を話しに行っている。
リハの最中も最大警護の状態で、自分たちの曲かけリハの時以外、ずっとメンバーに囲まれている。
ていうか、前が見えない(二回目)。
リハも終わり、いよいよオープニングの撮影が始まる。
この番組は生放送なので、一度撮影が始まれば止まることはない。
流石にここではおれを真ん中に、皆横並び一線で立つ。
…が、おれの隣の優がさりげなくおれの背中に手を回して後ろをガードしていた。
し、心配性すぎる!
「AshurAの皆さんです!よろしくお願いします」
司会のアナウンサーに紹介され、カメラに手を振る。
「よろしくお願いします!」
「久しぶりだね!Mタミ出演は二週間ぶり?」
「はい、ご無沙汰してます」
「二週間でご無沙汰って、AshurAも相変わらず忙しいねえ(笑)」
司会のタバヤシさんがリハ通りの絡みを進めてくれる。
「LINは今度ドラマやるんだって?」
突如、ここでタバヤシさんがアドリブを挟んでくる。
メンバーの緊張感がマックスになったのを感じながら、おれは出来る限り平静を装って返事をする。
「そうなんです!大人の土10です。オトナの方は是非見てください(笑)」
「おじさんオトナだから、ぜひ見るよ(笑)」
「ありがとうございます!」
「では次は……A’sのお二人!」
無事オープニングのおれたちのターンの撮影は終了。
おれたちはセットの雛壇へ移動する。
ここでも、きっちり隣に座った一哉がおれの腰を支えている。
いや、このスタジオで背後から襲われるって……それもう暗殺者だから。
「アルバムと言えば、AshurA!いまレコーディング中なんだって?」
「はい、順調に滞ってます」
優の冗談に、笑いが起こる。
「えー?ちゃんとリリースできる?」
タバさんのツッコミに、翔太が笑いながら返事をする。
「あはは、今うちのメインヴォーカルのお尻を叩いてるところなので、大丈夫でーす」
「LINはドラマにレコーディングに大変だねぇ」
「今、お尻真っ赤にしながら頑張ってます!」
おれは翔太のボケに乗っかりながら返すと、またもスタジオから笑いが起きる。
よっしゃ、ウケた!
おれは心の中でガッツポーズをすると、翔太に視線を送る。
翔太は軽くウインクすると、ニカっと笑った。
「では、AshurAの皆さんは準備をお願いしまーす」
そう言われて、おれたちは立ち上がり歌の準備に入る。
おれたちのスタンバイまではTrident PromotionのユニットA'sがつなぎを受け持っている。
おれはバミリの位置に立つと、ふうと息を吐く。
温かい蜂蜜入りのルイボスティーを飲んだし、喉の調子も悪くない。
歌を歌う時は神経の全てをパフォーマンスに集中する。
おれは右手にマイクを持つともう一度深呼吸をした。
キューがかかって、前奏が流れる。

『Go!Go!Go!Go!Go!
 今日、転んだって
 明日一歩前に進んでいればいい
 明日、転んだって
 何かを掴んで立ち上がればいい
 今日の痛みは明日の糧
 出来た傷跡は、人生の誇りだから
 Go ahead!進め!前を向いて
 Go ahead!後ろを見るな
 Go ahead!進め!上を向いて
 Go ahead!下を向くな』
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