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脅迫状パニック!
脅迫状パニック!⑥
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「なるほどな……」
一哉は敦士の説明を聞き、その腕を優雅に組んで頷いた。
しかし、その姿とは裏腹に、顔には激しい怒りが浮かんでいる。
……美形の怒ってる顔って凄みがあるんだな……。
おれはそんな事を考えながら、淹れてもらった温かい紅茶で心を落ち着けていた。
「今、事務所の方でも犯人を探していますが…まだ見つかってはいません」
敦士は悔しそうにそう言う。
「警察には?」
「昨日の時点で届出をしました」
「一つ聞きたいんだが、その脅迫状というのは、昨日が最初なのか?」
清十郎の言葉に、敦士はピクリと肩を強張らせる。
ーーまさか。
「……実は、ドラマの出演が決まった時から、事務所に同様の脅迫状が届いていました……」
そう言って、敦士は自分のスマホを取り出す。
画面を操作して写真のフォルダを開くと、何枚かの写真を見せた。
そこにはパソコンのワープロソフトで打たれたらしい『LINのドラマ出演をやめさせろ』といった類の脅迫状が何通か写っていた。
「これらについて、事務所と相談したんですけど……凛さんには知らせない方がいいだろうっていう判断になって……すみません」
「いや、敦士たちはおれがショックを受けないように気を遣ってくれたんだろ?ありがとな」
「でも……結果、凛さんを傷つけてしまいました……心身ともに」
敦士はそう言って俯くと、組んでいた自分の手を握りしめた。
「それで、優の家に泊まるってことか」
合点がいった様に、翔太が頷く。
「確かに、この状況では一人でいない方がいいな」
清十郎の言葉に、一哉が言葉を繋いだ。
「だったら、別に優の家じゃなくてもいいんじゃないか?むしろ、居るところを不定にした方が安全な気がする」
「あ、じゃあ毎日おれらの誰かの家に泊まればいいんじゃん?」
み、皆いい奴だ……。
「えー!おれの家って決まったのに!」
「凛だって、ずっと同じやつの家に泊まるよりは、皆の家に分けて泊まった方が心苦しくないんじゃないか?」
あ、それはそうかも。
優にばっかり迷惑かけるの悪いもんなー。
「え、おれは全然迷惑じゃない……」
優の言葉を遮る様に、一哉は言葉を発する。
「じゃあ、決まりだな。今日は誰の家に泊まる?」
え、おれが決めるの?
おれは誰の家でも……と視線を彷徨わせると、清十郎とバッチリ目が合う。
め、目線が『おれを選べ!』と言っている…!
イケメンの目ヂカラすご!
おれは思わず清十郎を指さしていた。
「じゃ、じゃあ清十郎で」
こんな貧乏くじを自ら引き受けてくれるなんて、皆いいやつだ。
おれは紅茶を飲み干すと、ふうと息をつく。
収録も押してきてしまっている。
おれはゆっくりと立ち上がると、軽く伸びをした。
「凛さん、大丈夫ですか?」
「ああ。脅迫状が怖くて芸能人やってられるか!おれは待ってるファンのためにいい歌を歌うんだ!もちろん、ドラマもな!」
「さっすが!」
翔太が囃し立てる。
こんな事でへこたれたら、おれのために奔走してくれてる事務所のスタッフ達にも申し訳ないしな。
そうして、アルバム曲の収録が始まった。
「LIN……なんでぼくの言う事を聞かないんだ……」
ぼくはLINの写真を見ながら歯噛みする。
こんなにこんなにこんなにこんなにこんなにこんなにこんなにこんなにこんなに応援してるのに。
こんなにこんなにこんなにこんなにこんなにこんなにこんなにこんなにこんなにこんなにこんなにこんなにこんなにこんなにこんなにこんなにこんなにこんなにこんなにこんなにこんなにこんなにこんなに愛してるのに。
ぼくはLINのブロマイドに頬擦りをすると、はぁ、と息をつく。
LINは歌ってる姿が最高に良いのに。
他のファンに迎合する様なドラマになんか出なくて良いのに……!
ぼくにだけ笑顔を見せていれば良いのに!
画面の中で歌い踊るLINを見て、ぼくは目を細める。
いつか、きみをぼくだけのものにしてあげるよ。
ーーそれまで……待っててね?
一哉は敦士の説明を聞き、その腕を優雅に組んで頷いた。
しかし、その姿とは裏腹に、顔には激しい怒りが浮かんでいる。
……美形の怒ってる顔って凄みがあるんだな……。
おれはそんな事を考えながら、淹れてもらった温かい紅茶で心を落ち着けていた。
「今、事務所の方でも犯人を探していますが…まだ見つかってはいません」
敦士は悔しそうにそう言う。
「警察には?」
「昨日の時点で届出をしました」
「一つ聞きたいんだが、その脅迫状というのは、昨日が最初なのか?」
清十郎の言葉に、敦士はピクリと肩を強張らせる。
ーーまさか。
「……実は、ドラマの出演が決まった時から、事務所に同様の脅迫状が届いていました……」
そう言って、敦士は自分のスマホを取り出す。
画面を操作して写真のフォルダを開くと、何枚かの写真を見せた。
そこにはパソコンのワープロソフトで打たれたらしい『LINのドラマ出演をやめさせろ』といった類の脅迫状が何通か写っていた。
「これらについて、事務所と相談したんですけど……凛さんには知らせない方がいいだろうっていう判断になって……すみません」
「いや、敦士たちはおれがショックを受けないように気を遣ってくれたんだろ?ありがとな」
「でも……結果、凛さんを傷つけてしまいました……心身ともに」
敦士はそう言って俯くと、組んでいた自分の手を握りしめた。
「それで、優の家に泊まるってことか」
合点がいった様に、翔太が頷く。
「確かに、この状況では一人でいない方がいいな」
清十郎の言葉に、一哉が言葉を繋いだ。
「だったら、別に優の家じゃなくてもいいんじゃないか?むしろ、居るところを不定にした方が安全な気がする」
「あ、じゃあ毎日おれらの誰かの家に泊まればいいんじゃん?」
み、皆いい奴だ……。
「えー!おれの家って決まったのに!」
「凛だって、ずっと同じやつの家に泊まるよりは、皆の家に分けて泊まった方が心苦しくないんじゃないか?」
あ、それはそうかも。
優にばっかり迷惑かけるの悪いもんなー。
「え、おれは全然迷惑じゃない……」
優の言葉を遮る様に、一哉は言葉を発する。
「じゃあ、決まりだな。今日は誰の家に泊まる?」
え、おれが決めるの?
おれは誰の家でも……と視線を彷徨わせると、清十郎とバッチリ目が合う。
め、目線が『おれを選べ!』と言っている…!
イケメンの目ヂカラすご!
おれは思わず清十郎を指さしていた。
「じゃ、じゃあ清十郎で」
こんな貧乏くじを自ら引き受けてくれるなんて、皆いいやつだ。
おれは紅茶を飲み干すと、ふうと息をつく。
収録も押してきてしまっている。
おれはゆっくりと立ち上がると、軽く伸びをした。
「凛さん、大丈夫ですか?」
「ああ。脅迫状が怖くて芸能人やってられるか!おれは待ってるファンのためにいい歌を歌うんだ!もちろん、ドラマもな!」
「さっすが!」
翔太が囃し立てる。
こんな事でへこたれたら、おれのために奔走してくれてる事務所のスタッフ達にも申し訳ないしな。
そうして、アルバム曲の収録が始まった。
「LIN……なんでぼくの言う事を聞かないんだ……」
ぼくはLINの写真を見ながら歯噛みする。
こんなにこんなにこんなにこんなにこんなにこんなにこんなにこんなにこんなに応援してるのに。
こんなにこんなにこんなにこんなにこんなにこんなにこんなにこんなにこんなにこんなにこんなにこんなにこんなにこんなにこんなにこんなにこんなにこんなにこんなにこんなにこんなにこんなにこんなに愛してるのに。
ぼくはLINのブロマイドに頬擦りをすると、はぁ、と息をつく。
LINは歌ってる姿が最高に良いのに。
他のファンに迎合する様なドラマになんか出なくて良いのに……!
ぼくにだけ笑顔を見せていれば良いのに!
画面の中で歌い踊るLINを見て、ぼくは目を細める。
いつか、きみをぼくだけのものにしてあげるよ。
ーーそれまで……待っててね?
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