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孝文とサクラコのプチ旅行(車検)①
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十一月も終盤になり、もう幾つ寝ると十二月だ。
最近は身を切るような寒さが辛くなってきた。そろそろ、本格的な冬支度をした方が良いだろう。
とはいえ、今日は冬支度をする日では無い。今日は、待ちに待った車の点検の日なのだ!
朝から気分の良い俺は、調子に乗ってサクラコに任せていた鶏小屋の掃除やその他諸々までを全て一人でやってしまい、無事サクラコに怒られました。
そして朝食を食べ終わった頃。食べ終わると同時にサクラコがバタバタとリビングを出て行ったので俺はため息を吐きながらサクラコの分の食器も片付けて洗い物をしていると、サクラコがついこの前買った厚手のワンピースとジャケットを着て、裾を翻しながら見せてきた。
「孝文、今日これで行ってもいい?」
「おぉ、似合ってるじゃないか。それじゃあそれ着てほなみさんに会いに行こうか」
「うんっ!」
きっと、今できる一番可愛いコーディネートをほなみさんに見せたかったのだろう。
大丈夫だぞ、サクラコ。君はそんな事をしなくても十分可愛いはずだ。
サクラコのコーディネートを見ながら洗い物を終わらせたが今の時刻は九時半。車の点検は十三時からなので出るには少し早いだろう。とは言え、特にやる事も無いんだよなぁ。
「よしサクラコ、少し早いけど行くか」
「えっ、十時半に行くんじゃなかったの?」
「いいかーサクラコ。これから高速道路を使って行くんだがな、高速道路にはSAがあるんだ」
「なにそれ?」
サクラコはSAを知らないのか首を傾げながら聞いてきた。
「そうだなぁ……簡単に言えば、高速道路にある休憩所、って感じだな。B級グルメがあって、その地域の特産品なんかが売ってる……うぅむ、実際に行けば分かるんだがいざ説明となると難しいな」
説明するのは難しいけど、SAって何故か楽しいんだよな。ただぐでーってしてるだけでもいつの間にか三十分とか経ってるし。
「ふおぉ……美味しいものがいっぱいのとこ……孝文、はやく行こっ!」
「お、おい押すなっ!」
サクラコは俺のだいぶ適当な説明でSAに興味を持ったらしく、早く行こうと背中を押して急かしてきたので洗い物で濡れた手を拭き、まだ部屋着だったのでそそくさと着替えた。
俺達が外出している間クロエ達は、野放しだ。だが、最近は夜になるとしっかりと小屋に入るし、クロエ達も分かっているのだろう。問題は、室内で飼っている子犬のアリスだ。最近は活発もいい所で、何度部屋を荒らされた事か。トイレの場所を覚えてくれたからまだ良いものの、アリスにとっては初めての長時間の留守番だ。部屋をこれまで以上に荒らされないか心配だが、ここはアリスを信じよう。留守番頼んだぞ。
そんなこんなで着替え終わって最後にサクラコと共に庭先に出ているわけだが。
クロエ達は何かを察したのか、俺達の方を向きジリジリと距離を詰めてくる。一歩、また一歩とゆっくりとだが確実にクロエと烏骨鶏達は俺達に近づいてくる。
「おいおい、どうしたってんだ……?」
「なんかゆっくり近づいてくるね! 何か始まりそうでワクワクするっ⁉」
「いや、ワクワクなんてしねぇよっ⁉」
サクラコは楽しそうにしているが、対して俺はこの異様な光景にクロエ達が近づいて来る度に後ずさっている。
「コォォォォォォッ!」
すると突然、一番体の大きな烏骨鶏が鳴きだし、全烏骨鶏とそれに続けとクロエが俺達に向かい全力疾走。烏骨鶏達は飛べもしないのに羽をバタバタと羽ばたかせながら迫って来る光景は、少し恐怖を感じた。
「うおぉぉふげっ!?」
烏骨鶏達はサクラコを取り囲み、クロエは俺に頭突きをブチかます。身体の芯を捉えるその頭突きは、内臓の奥底まで響くクリーンヒットと言ってもよいだろう。そんな一撃を食らった俺は、随分と情けない声を出してしまった。
「あははっ、みんなどうしたのーっ!」
「痛ぇ……鳩尾ぃ……」
楽しそうなサクラコと、対極に鳩尾に頭突きがクリーンヒットした俺。……俺、何か嫌な事しましたっけ?
俺が腹をさすっていると、今度は膝あたりに頭をスリスリと擦り付けるクロエ。
これが、飴と鞭ってやつか……。クロエは将来、良い女王様になるに違いない。俺、痛めつけられて悦ぶ性癖なんて持ってないけど。
「……ははっ、やっぱり動物は何考えてるか分からないな。でも、元気そうだから良しとするか」
俺はクロエの頭を撫でながら言う。
さぁて、動物達はどいつも元気そうだし問題無いだろ。
「サクラコ、行くぞー」
「はぁーい!」
元気な返事を聞いて、俺達は庭を後にする。
特に持っていく物も無いので手ぶらで車に乗り込んだ俺達は、ほなみさんのもとへと車を走らせた。
●あとがき
――孝文くん達に襲いかかった時の様子
クロエ「……きっと、私達を置いてどこかに出かけるつもりよ」
烏骨隊長「何っ⁉ 我らは、お留守番という事かっ⁉」
クロエ「なにお留守番とか、可愛こぶってるのよ。……でもそうよ。お留守番」
烏骨隊長「ぐぬぬ……総員、タカフミ様達を取り押さえろぉぉぉっ!」
クロエ「何言ってるのよ……でも、それも良いかもしれないわねっ!」
孝文に向けてドゴーン。
クロエ「……お土産買って来なさいよね」
クロエ、ツンデレしてた。
最近は身を切るような寒さが辛くなってきた。そろそろ、本格的な冬支度をした方が良いだろう。
とはいえ、今日は冬支度をする日では無い。今日は、待ちに待った車の点検の日なのだ!
朝から気分の良い俺は、調子に乗ってサクラコに任せていた鶏小屋の掃除やその他諸々までを全て一人でやってしまい、無事サクラコに怒られました。
そして朝食を食べ終わった頃。食べ終わると同時にサクラコがバタバタとリビングを出て行ったので俺はため息を吐きながらサクラコの分の食器も片付けて洗い物をしていると、サクラコがついこの前買った厚手のワンピースとジャケットを着て、裾を翻しながら見せてきた。
「孝文、今日これで行ってもいい?」
「おぉ、似合ってるじゃないか。それじゃあそれ着てほなみさんに会いに行こうか」
「うんっ!」
きっと、今できる一番可愛いコーディネートをほなみさんに見せたかったのだろう。
大丈夫だぞ、サクラコ。君はそんな事をしなくても十分可愛いはずだ。
サクラコのコーディネートを見ながら洗い物を終わらせたが今の時刻は九時半。車の点検は十三時からなので出るには少し早いだろう。とは言え、特にやる事も無いんだよなぁ。
「よしサクラコ、少し早いけど行くか」
「えっ、十時半に行くんじゃなかったの?」
「いいかーサクラコ。これから高速道路を使って行くんだがな、高速道路にはSAがあるんだ」
「なにそれ?」
サクラコはSAを知らないのか首を傾げながら聞いてきた。
「そうだなぁ……簡単に言えば、高速道路にある休憩所、って感じだな。B級グルメがあって、その地域の特産品なんかが売ってる……うぅむ、実際に行けば分かるんだがいざ説明となると難しいな」
説明するのは難しいけど、SAって何故か楽しいんだよな。ただぐでーってしてるだけでもいつの間にか三十分とか経ってるし。
「ふおぉ……美味しいものがいっぱいのとこ……孝文、はやく行こっ!」
「お、おい押すなっ!」
サクラコは俺のだいぶ適当な説明でSAに興味を持ったらしく、早く行こうと背中を押して急かしてきたので洗い物で濡れた手を拭き、まだ部屋着だったのでそそくさと着替えた。
俺達が外出している間クロエ達は、野放しだ。だが、最近は夜になるとしっかりと小屋に入るし、クロエ達も分かっているのだろう。問題は、室内で飼っている子犬のアリスだ。最近は活発もいい所で、何度部屋を荒らされた事か。トイレの場所を覚えてくれたからまだ良いものの、アリスにとっては初めての長時間の留守番だ。部屋をこれまで以上に荒らされないか心配だが、ここはアリスを信じよう。留守番頼んだぞ。
そんなこんなで着替え終わって最後にサクラコと共に庭先に出ているわけだが。
クロエ達は何かを察したのか、俺達の方を向きジリジリと距離を詰めてくる。一歩、また一歩とゆっくりとだが確実にクロエと烏骨鶏達は俺達に近づいてくる。
「おいおい、どうしたってんだ……?」
「なんかゆっくり近づいてくるね! 何か始まりそうでワクワクするっ⁉」
「いや、ワクワクなんてしねぇよっ⁉」
サクラコは楽しそうにしているが、対して俺はこの異様な光景にクロエ達が近づいて来る度に後ずさっている。
「コォォォォォォッ!」
すると突然、一番体の大きな烏骨鶏が鳴きだし、全烏骨鶏とそれに続けとクロエが俺達に向かい全力疾走。烏骨鶏達は飛べもしないのに羽をバタバタと羽ばたかせながら迫って来る光景は、少し恐怖を感じた。
「うおぉぉふげっ!?」
烏骨鶏達はサクラコを取り囲み、クロエは俺に頭突きをブチかます。身体の芯を捉えるその頭突きは、内臓の奥底まで響くクリーンヒットと言ってもよいだろう。そんな一撃を食らった俺は、随分と情けない声を出してしまった。
「あははっ、みんなどうしたのーっ!」
「痛ぇ……鳩尾ぃ……」
楽しそうなサクラコと、対極に鳩尾に頭突きがクリーンヒットした俺。……俺、何か嫌な事しましたっけ?
俺が腹をさすっていると、今度は膝あたりに頭をスリスリと擦り付けるクロエ。
これが、飴と鞭ってやつか……。クロエは将来、良い女王様になるに違いない。俺、痛めつけられて悦ぶ性癖なんて持ってないけど。
「……ははっ、やっぱり動物は何考えてるか分からないな。でも、元気そうだから良しとするか」
俺はクロエの頭を撫でながら言う。
さぁて、動物達はどいつも元気そうだし問題無いだろ。
「サクラコ、行くぞー」
「はぁーい!」
元気な返事を聞いて、俺達は庭を後にする。
特に持っていく物も無いので手ぶらで車に乗り込んだ俺達は、ほなみさんのもとへと車を走らせた。
●あとがき
――孝文くん達に襲いかかった時の様子
クロエ「……きっと、私達を置いてどこかに出かけるつもりよ」
烏骨隊長「何っ⁉ 我らは、お留守番という事かっ⁉」
クロエ「なにお留守番とか、可愛こぶってるのよ。……でもそうよ。お留守番」
烏骨隊長「ぐぬぬ……総員、タカフミ様達を取り押さえろぉぉぉっ!」
クロエ「何言ってるのよ……でも、それも良いかもしれないわねっ!」
孝文に向けてドゴーン。
クロエ「……お土産買って来なさいよね」
クロエ、ツンデレしてた。
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