マギアクエスト!

友坂 悠

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浄化のブレス。

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 すうすうと寝息を立てている少年カイを洞窟の端に寝かせ、あたしはその周囲を透明なアウラの盾で覆った。

 風のアウラ。あたしのこの万能の盾、マギア・アウラクリムゾンの名前の元にもなったギア・アウラがこの子と外界とを断絶するように覆う。

「これで」
 しばらくは大丈夫だろう。

 肉体の傷は癒した。
 もう起きて歩いても、走ったりすることだってできるだろう。

 でも。
 大勢の魔物に襲われた恐怖は、きっとこのこのトラウマとして残っているに違いない。
 今起こしても、きっと心が耐えられないかもしれない、と、そう思ったあたしは。
 彼にスリープの魔法をかけてここにしばらく寝かせておくことにした。

 街まで連れ帰ってあげる余裕はない。
 かといってダンジョンの外に連れ出したとしても溢れた魔獣に襲われないとも限らない。
 多分、この漆黒の魔窟を塞いでしまわないと、この先魔獣が溢れ人の街にも甚大な被害をもたらすだろう。
 そんな未来しか見えない。

「ごめんね。帰りに絶対拾ってあげるから」

 そう言って、あたしはその場を離れた。

 ちょっと急がないと。
 きっと、最下層にはダンジョンボスが生まれているはず。

 昨日の今日だから、そのダンジョンボスがノワールの可能性はまだ薄い。
 だから今のうちに。

 ⭐︎⭐︎⭐︎

 下にいく階段はすぐに見つかった。
 蛇蝎のなんとか達ももう下層に行っているのかな。
 ここまでの道では遭遇しなかった。

 まああんな奴らはどうなったって知らない。
 瀕死の状態で出くわせば、しょうがないから辻ヒールくらいは飛ばしてやってもいいけれど。
 そんなことを思いつつ急ぐ。

 この階層のモンスターはさっきの集団で全部だったのかな?

 まあこの下は確かゴブリンとは違うのが出てきた気がするし。



 あたしは階段を飛び降りるように滑り降り、そしてそのまま次の階層への階段を目指し走る。

 途中、グールの集団を見かけたけどエクスカリバーひと薙ぎで対処する。
 ああもう臭いなぁ。
 このまま普通にダンジョンを踏破してたら日が暮れちゃう。

 もしかしたらあの子、召喚ってできるのかな?

 左手に、聖竜エレメンタルクリスタルの召喚魔法陣を展開。

 この洞窟サイズに小さくなった召喚竜、エレメンタルクリスタルがその白銀の体を実体化させた。

「クワオーン」
 聖なる氣を纏ったその白銀の竜はあたしの頬にほおずりすると、そううれしげに鳴いた。

 あは。
 ちゃんとこの子までこの世界にこられたのね。

 あたしはエレメンタルクリスタルの首筋を撫で回し、ハグすると。

「ドラコ。久しぶり」

 そう声をかけた。


 マギアクエストでは戦った相手が時々仲間になりたそうにこちらをみてくる時があった。
 こちらの能力が完全に優った時。もしくは相性の良いアイテム等を使用したときに現れるそんなビジョン。
 ティマーのスキルを取得していることが条件ではあったけど、そうして仲間にしたモンスターには独自な名前を付けることができた。

 この聖竜は聖魔法を操りそのブレスはアンデットを浄化する。
 あたしはドラコに、
「いい? ドラコ。この先にいるアンデットたちを浄化してちょうだい。お願いね?」

 そう声をかけるとにっこりと微笑んだ。

「クワオーン!」

 ドラコもわかったよとばかりにそう答えてくれて。

 そのまま前方に向き直り、

 バオーン!!

 と、まずは浄化のブレスを放ったのだった。
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