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漆黒の魔窟。
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マナの濃くなっていく方角に向け進むと、その最奥にそれはあった。
ダンジョンに続く門、仰々しい大きなその門が大きく開き、こちらに深淵を覗かせていた。
やっぱり。
イベントダンジョンだ。
人工的に作られたことを示す複雑な彫刻の入ったその大理石の門は、100年経っても劣化しないそんな永続魔法の魔法陣が描かれているという。
おまけに。
多分この門自体には全ての魔法を弾くアンチマジックバリアがかけられている。
門を壊し穴を塞ぐ、そういう手段は望めないのだろうな。
あたしはその門に触れる。
魔力が生きているのを感じる。
ダンジョンから溢れるマナを吸収し、魔法陣が永続魔法を発動しているのが頭の奥底で理解できた。
と、それと同時にこのダンジョンにつけられた、名付けられた真名もがあたしの頭の中に流れ込んできて。
理解した。
このダンジョンは「漆黒の魔窟」である、と。
ストーリークエスト、「悲しみの勇者ノア」
マギアクエストきっての名ストーリー。
悲劇の第六王子、勇者ノワールの物語の舞台でもあるその魔窟。
全てが漆黒に包まれたそんなエクストラダンジョンである、と。
⭐︎⭐︎⭐︎
ゆっくりとダンジョンの奥に進むあたし。
あたしが入ることができたっていうことは、この世界にはこの漆黒の魔窟を踏破するべきプレイヤーは存在しない、ということなのだろう。
もちろんあたしがその当事者でないことは自分が一番よくわかっている。
だって、元々このノワのイベントが発動するためには色々複雑な条件が必要なんだけど、あたしはそのどれすらもクリアをしていなかったわけだしね。
このまま奥にすすむべきか、それとも一度戻るべきか。
あたしは悲劇の王子ノワールが好きだった。
だからこそ、なんだけど。
因果の果てノワールが魔人と化してしまい、ラスボス黒獣になってしまうこのイベントはあまりにも悲しくて。
あの時はそう。
お仕事だったとはいえこの漆黒の魔窟の探索がつらくてつらくて。
上司にイベントの概要をあらかじめ聞かされていたもんだから、余計に落ち込んだあたしはとにかく辛いことは早めに終わらせようと、魔窟を最速で踏破しあっという間にイベントを終わらせたのだった。
だから、このダンジョンをそのままにしては置けないという使命感みたいなものもあるけれどできればノワとは戦いたくないとそう思って。
それと。
っていうかノワールには昨日会ったばかりだよねあたし。
なら、まだ彼にも悲劇のイベントは訪れていないかもしれない。
そうであるなら。
あんな悲劇がこの世界でも起こらないように、このダンジョンを早めに潰しておくのも一つの方法かも?
そんなことも考えて。
とにかく頑張って奥まで進んでみよう。そう思ったのだ。
ダンジョンに続く門、仰々しい大きなその門が大きく開き、こちらに深淵を覗かせていた。
やっぱり。
イベントダンジョンだ。
人工的に作られたことを示す複雑な彫刻の入ったその大理石の門は、100年経っても劣化しないそんな永続魔法の魔法陣が描かれているという。
おまけに。
多分この門自体には全ての魔法を弾くアンチマジックバリアがかけられている。
門を壊し穴を塞ぐ、そういう手段は望めないのだろうな。
あたしはその門に触れる。
魔力が生きているのを感じる。
ダンジョンから溢れるマナを吸収し、魔法陣が永続魔法を発動しているのが頭の奥底で理解できた。
と、それと同時にこのダンジョンにつけられた、名付けられた真名もがあたしの頭の中に流れ込んできて。
理解した。
このダンジョンは「漆黒の魔窟」である、と。
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全てが漆黒に包まれたそんなエクストラダンジョンである、と。
⭐︎⭐︎⭐︎
ゆっくりとダンジョンの奥に進むあたし。
あたしが入ることができたっていうことは、この世界にはこの漆黒の魔窟を踏破するべきプレイヤーは存在しない、ということなのだろう。
もちろんあたしがその当事者でないことは自分が一番よくわかっている。
だって、元々このノワのイベントが発動するためには色々複雑な条件が必要なんだけど、あたしはそのどれすらもクリアをしていなかったわけだしね。
このまま奥にすすむべきか、それとも一度戻るべきか。
あたしは悲劇の王子ノワールが好きだった。
だからこそ、なんだけど。
因果の果てノワールが魔人と化してしまい、ラスボス黒獣になってしまうこのイベントはあまりにも悲しくて。
あの時はそう。
お仕事だったとはいえこの漆黒の魔窟の探索がつらくてつらくて。
上司にイベントの概要をあらかじめ聞かされていたもんだから、余計に落ち込んだあたしはとにかく辛いことは早めに終わらせようと、魔窟を最速で踏破しあっという間にイベントを終わらせたのだった。
だから、このダンジョンをそのままにしては置けないという使命感みたいなものもあるけれどできればノワとは戦いたくないとそう思って。
それと。
っていうかノワールには昨日会ったばかりだよねあたし。
なら、まだ彼にも悲劇のイベントは訪れていないかもしれない。
そうであるなら。
あんな悲劇がこの世界でも起こらないように、このダンジョンを早めに潰しておくのも一つの方法かも?
そんなことも考えて。
とにかく頑張って奥まで進んでみよう。そう思ったのだ。
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