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第二部。

大災厄。

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 そのままふわっとした動作でシルフィーナの横にぽすんと腰掛けるサラ皇女。
 にこにこと笑みをこぼしながら、シルフィーナの両手をとって。

「最初の質問に戻りますね。シルフィーナ様、貴女は白と黒の予言のどちらをお聞きになりたいかしら?」

 そう言って小首を傾げた。

 相変わらず彼女の周囲にいるギアたちはキラキラと輝いている。
 それは、サラ皇女へのギアたちの好意の表れでもあり、そして彼女がシルフィーナに一切の悪意を持ち得ていないことの証明にも見える。
 サラの周囲のギアたちがシルフィーナに対しても好意を示してくれていることは、よくわかる。
 だから。
 もしも彼女がシルフィーナにとって害をなそうとする存在であるのなら、間にいるギアたちはこんなにも彼女たちに好意を示し続けることはないだろう。そんなふうに漠然と感じているだけであったけれど。

(この人は信用しても大丈夫)

 そう、確信できた。

「予言、とは、どういうことなのでしょう?」

 であれば、素直に聞いても問題はないはず。そう思えて。

「帝国には代々、神の御言葉をお預かりする預言者という者がおりますの。今はわたくしがその職務についておりますが、その神の言葉は、時には天啓やビジョンとなってわたくしの中に降りてくるのですわ」

 笑みは崩していない。
 その微笑みはゆったりとして、優しく、そして美しく。

 まるで子供におとぎ話でも話し聞かせるようなそんなゆったりとした口調で彼女はそんな言葉を綴った。

「そんなビジョンのうち、特に未来の出来事を指し示した予感を、わたくしは予言と呼んでおりますの」

 そう言いながらシルフィーナの目を覗き込む彼女。

 微笑みの中にあるその瞳の奥底に映る光は真剣そのものにみえ。
 嘘は、無い。
 彼女の言葉には全く嘘のかけらもないのだと、そう感じられて。

「教えていただきありがとうございます。もしかしたらその予言はわたくしの未来に関係あることなのでしょう。でも」

 シルフィーナは被りを振って。

「未来を知ることは、怖いです」

 そう、目を伏せる。

「ほんとう、正直ね」

 サラ皇女、シルフィーナの両手を包み込むようにぎゅっと握って。

「でも、これだけは聞いて。わたくしはこの地に姉様、大聖女マリアリアの後継となりうるものが現れたと、そう天啓を受けてまいりましたの。十数年前の大厄災はご存じ? 帝国に現れた魔王とそれと対峙した勇者、そして大聖女マリアリアのお話は……」

(大厄災!!?)

 そこまで聞いたところで、シルフィーナの心臓は跳ね上がった。

 あの。

 厄災の時の、恐怖と怒り。
 心の中に巻き上がった嵐。
 そして。
 力を使い切った後の、お父様のあの恐怖に歪んだ顔。
 心の中を吹き荒れた、あの悲しみ、が。

 突然に、目の前に鮮明な映像と共に浮かび上がった。
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