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第二部。
最上階で。
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魔力紋ゲートを抜けると目の前の円筒型の扉が開く。
「こちらへ」
そうジェラルドに手を引かれるままその扉の奥に入るシルフィーナ。
スーッと扉が閉まった後。
その円筒が上昇を始めた。
「きもち、わるい……」
お腹の中が引っ張られるような、そんな感覚を味わって思わずそう呟いてしまった彼女。
「すみません。こちらは自動昇降機と言います。この塔の最上部まで一気に昇っていきますから」
こちらを気遣うようなジェラルドに。
「ええ、ごめんなさい。少しだけ何だかお腹がおかしくて」
「すみません、急激に上昇するとなれないうちはそういった感じになるかもしれません。もう着きましたから」
ギュンと昇降機が停まった。
不思議と、少し酔ったような感覚に襲われたシルフィーナ。
気を取り直し開いた扉から外に出て。
目の前に急に広がった街の景色。
まるで、雲の上から見ているかのような、そんな光景に足がすくむ。
「素晴らしいでしょう。ここからなら聖都が一望できるのですよ」
空は青く。雲ひとつ無い。
まるで塔のてっぺんに立っているかのような錯覚に陥るくらい外の様子が目の前に広がる。
けれど。
風は感じ無い。
外では、無い?
そう、よく見ると床も天井もある。透き通ってまるで何も遮るものがないように見えた壁にも、どうやらガラスがはまっているらしい。
窓枠、は、見えない。
なんとか勇気を振り絞り窓のところまで歩き、そしてその窓ガラスに触れてみる。
「とても、透き通っているのですね。最初はそのまま吹きさらしの場所なのかと勘違いしました」
「ええ。これは実は実際に外を直接見ているわけではないのですよ。この壁全体に外の景色をそのまま映し出しているのです。これも特殊な魔具、聖魔具なのですよ」
そうこちらを見てニコリと微笑むジェラルド。
そのまま右手を掲げ、パチンと指を鳴らす。
その途端、周囲の光がスッと消えた。
今まであった陽光も、空の青さも、全てが幻であったかのように消え失せ。
そして再び明るくなったそこには、ただただ何もない広いフロアがあるだけで。
周囲には白い壁。
しかし、その中央には別の部屋に通じる扉が見える。
「さっきまであそこにはお外の景色しか見えませんでした……」
急に変わったその景色に、思わずそう呟いて。
「驚かせてすみませんシルフィーナ様。アグリッパ様は普段あまりどなたともお会いにならず引きこもっていらっしゃるのですよ。ここもこうしてカモフラージュすることで、許可のないものは師の部屋には辿り着けぬよう工夫がしてあるのです」
「そうなの、ですね……」
驚くことばかりで呆然としてしまったシルフィーナ。
それでも、と。
「さあ、この扉の先でアグリッパ様がお待ちです」
そう微笑み再びシルフィーナの手をとるジェラルドに。
ただただ、あまり何も考えることもせずついて行くのみだった。
「こちらへ」
そうジェラルドに手を引かれるままその扉の奥に入るシルフィーナ。
スーッと扉が閉まった後。
その円筒が上昇を始めた。
「きもち、わるい……」
お腹の中が引っ張られるような、そんな感覚を味わって思わずそう呟いてしまった彼女。
「すみません。こちらは自動昇降機と言います。この塔の最上部まで一気に昇っていきますから」
こちらを気遣うようなジェラルドに。
「ええ、ごめんなさい。少しだけ何だかお腹がおかしくて」
「すみません、急激に上昇するとなれないうちはそういった感じになるかもしれません。もう着きましたから」
ギュンと昇降機が停まった。
不思議と、少し酔ったような感覚に襲われたシルフィーナ。
気を取り直し開いた扉から外に出て。
目の前に急に広がった街の景色。
まるで、雲の上から見ているかのような、そんな光景に足がすくむ。
「素晴らしいでしょう。ここからなら聖都が一望できるのですよ」
空は青く。雲ひとつ無い。
まるで塔のてっぺんに立っているかのような錯覚に陥るくらい外の様子が目の前に広がる。
けれど。
風は感じ無い。
外では、無い?
そう、よく見ると床も天井もある。透き通ってまるで何も遮るものがないように見えた壁にも、どうやらガラスがはまっているらしい。
窓枠、は、見えない。
なんとか勇気を振り絞り窓のところまで歩き、そしてその窓ガラスに触れてみる。
「とても、透き通っているのですね。最初はそのまま吹きさらしの場所なのかと勘違いしました」
「ええ。これは実は実際に外を直接見ているわけではないのですよ。この壁全体に外の景色をそのまま映し出しているのです。これも特殊な魔具、聖魔具なのですよ」
そうこちらを見てニコリと微笑むジェラルド。
そのまま右手を掲げ、パチンと指を鳴らす。
その途端、周囲の光がスッと消えた。
今まであった陽光も、空の青さも、全てが幻であったかのように消え失せ。
そして再び明るくなったそこには、ただただ何もない広いフロアがあるだけで。
周囲には白い壁。
しかし、その中央には別の部屋に通じる扉が見える。
「さっきまであそこにはお外の景色しか見えませんでした……」
急に変わったその景色に、思わずそう呟いて。
「驚かせてすみませんシルフィーナ様。アグリッパ様は普段あまりどなたともお会いにならず引きこもっていらっしゃるのですよ。ここもこうしてカモフラージュすることで、許可のないものは師の部屋には辿り着けぬよう工夫がしてあるのです」
「そうなの、ですね……」
驚くことばかりで呆然としてしまったシルフィーナ。
それでも、と。
「さあ、この扉の先でアグリッパ様がお待ちです」
そう微笑み再びシルフィーナの手をとるジェラルドに。
ただただ、あまり何も考えることもせずついて行くのみだった。
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