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第二部。
うららかな春の婚礼。
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ここ、アルメルセデスは神に護られた剣と魔法の国。
光のどけきこの春の日に。
四大公爵家の一角、ヴァインシュタイン公爵家の嗣子ライゼンハルトとアーリシェ・ラ・ローエングリーン侯爵令嬢との婚礼は、大勢の招待客が祝福する中、盛大に、そして厳かに執り行われた。
四大公爵家とはこの国の王家のスペアであり、貴族の頂点に位置する家柄となる。
王族が絶えた時に備え常に王族の血を受け継ぐ婚姻を繰り返していて、現公爵であるフリードリヒ・フォン・ヴァインシュタイン公爵の妻、ライゼンハルトの母でもあるコーデリアは、オクタビアヌス・ユリウス・アルメルセデス王陛下の妹でもあった。
「おめでとう、アーリシェ。親友として本当に嬉しいわ」
「ありがとうございますアウレリア様。今日のこの日のためにと送ってくださったこの桜も、とても綺麗で」
「ふふ。これはお義母様のエヴァンジェリン様が取り寄せてくださったのよ。大急ぎで植樹した割には綺麗に咲いているわね。よかった」
公爵家の敷地内に設けた祭壇で婚礼の義をあげた後、その広いお屋敷に植えられた桜の樹の下で行われていたパーティで。
暖かな陽光と微風、そして舞い散る桜の花びらを眺めながらのこの婚礼。
元王女、アウレリア・コット・ロックフェラーはにこやかにアーリシェに話しかけ。
「私としては、あんなにもおてんばだった君が第171代聖女として、今でも聖女庁長官の職を務めていることが信じられないがね」
「あらあら、いくらいとこの幼馴染で気安いからと言って、その言い方はないんじゃありません? まあ、ハルトじゃなかったら許して差し上げないところでしたよ?」
「はは、レリアは手厳しいな。でも本当君には感謝しているんだよ。アーリシェとこうして夫婦となれたのも、君がいてくれたことが大きいからね」
「そうですわアウレリア様。アウレリア様がわたくしと仲良くしてくださったからですもの。ハルト様とこうして結ばれたのも」
「あたくしはあなたたちの縁結びの神様? でした?」
「自覚がなかったのかい? もちろんそうさ。君がいなかったら私の相手は父が決めてくるだけの味気ないものになっていただろうから」
「わたくしも、きっとお父様が決めた相手と婚姻を結ぶことになっていたでしょうから……」
そうお互いを見つめ合うライゼンハルトとアーリシェ。
アウレリアはそんな二人を微笑ましく見守って。
♢ ♢ ♢
「素敵ね……」
「ああ、やはり桜はいいね。君は最初にみた時からこの桜の花が好きだったよね」
鮮やかな白銀の髪をアップにし、春のこの桜に合わせた淡いピンクのシフォンドレスに身を包んだシルフィーナ。
隣には、すっかりと体調も良くなり体つきも以前よりひとまわり逞しくなったように見える、サイラス・フォン・スタンフォード侯爵。
(旦那様、最初の朝食の折の会話まで覚えててくださったのかしら……)
そう彼のその美麗なお顔を覗き込む。
群青色の夜の色の髪をそのまま下ろし、肩の下まで垂らして。
その金色の瞳は真っ直ぐにシルフィーナを見つめていた。
相変わらず優しく微笑んではいるものの、その瞳には以前とは違う熱のようなものも感じて。
思わず頬を染め、下を向いてしまったシルフィーナ。
「顔を上げて、シルフィーナ。私にもっと貴女の可愛らしい顔を見せてほしい」
そう言われ、顔をあげまた彼の顔を覗き込むシルフィーナの耳元に。
さっと口づけをするように口元を近づけ。
「ありがとうシルフィーナ」
と、そう囁いた。
光のどけきこの春の日に。
四大公爵家の一角、ヴァインシュタイン公爵家の嗣子ライゼンハルトとアーリシェ・ラ・ローエングリーン侯爵令嬢との婚礼は、大勢の招待客が祝福する中、盛大に、そして厳かに執り行われた。
四大公爵家とはこの国の王家のスペアであり、貴族の頂点に位置する家柄となる。
王族が絶えた時に備え常に王族の血を受け継ぐ婚姻を繰り返していて、現公爵であるフリードリヒ・フォン・ヴァインシュタイン公爵の妻、ライゼンハルトの母でもあるコーデリアは、オクタビアヌス・ユリウス・アルメルセデス王陛下の妹でもあった。
「おめでとう、アーリシェ。親友として本当に嬉しいわ」
「ありがとうございますアウレリア様。今日のこの日のためにと送ってくださったこの桜も、とても綺麗で」
「ふふ。これはお義母様のエヴァンジェリン様が取り寄せてくださったのよ。大急ぎで植樹した割には綺麗に咲いているわね。よかった」
公爵家の敷地内に設けた祭壇で婚礼の義をあげた後、その広いお屋敷に植えられた桜の樹の下で行われていたパーティで。
暖かな陽光と微風、そして舞い散る桜の花びらを眺めながらのこの婚礼。
元王女、アウレリア・コット・ロックフェラーはにこやかにアーリシェに話しかけ。
「私としては、あんなにもおてんばだった君が第171代聖女として、今でも聖女庁長官の職を務めていることが信じられないがね」
「あらあら、いくらいとこの幼馴染で気安いからと言って、その言い方はないんじゃありません? まあ、ハルトじゃなかったら許して差し上げないところでしたよ?」
「はは、レリアは手厳しいな。でも本当君には感謝しているんだよ。アーリシェとこうして夫婦となれたのも、君がいてくれたことが大きいからね」
「そうですわアウレリア様。アウレリア様がわたくしと仲良くしてくださったからですもの。ハルト様とこうして結ばれたのも」
「あたくしはあなたたちの縁結びの神様? でした?」
「自覚がなかったのかい? もちろんそうさ。君がいなかったら私の相手は父が決めてくるだけの味気ないものになっていただろうから」
「わたくしも、きっとお父様が決めた相手と婚姻を結ぶことになっていたでしょうから……」
そうお互いを見つめ合うライゼンハルトとアーリシェ。
アウレリアはそんな二人を微笑ましく見守って。
♢ ♢ ♢
「素敵ね……」
「ああ、やはり桜はいいね。君は最初にみた時からこの桜の花が好きだったよね」
鮮やかな白銀の髪をアップにし、春のこの桜に合わせた淡いピンクのシフォンドレスに身を包んだシルフィーナ。
隣には、すっかりと体調も良くなり体つきも以前よりひとまわり逞しくなったように見える、サイラス・フォン・スタンフォード侯爵。
(旦那様、最初の朝食の折の会話まで覚えててくださったのかしら……)
そう彼のその美麗なお顔を覗き込む。
群青色の夜の色の髪をそのまま下ろし、肩の下まで垂らして。
その金色の瞳は真っ直ぐにシルフィーナを見つめていた。
相変わらず優しく微笑んではいるものの、その瞳には以前とは違う熱のようなものも感じて。
思わず頬を染め、下を向いてしまったシルフィーナ。
「顔を上げて、シルフィーナ。私にもっと貴女の可愛らしい顔を見せてほしい」
そう言われ、顔をあげまた彼の顔を覗き込むシルフィーナの耳元に。
さっと口づけをするように口元を近づけ。
「ありがとうシルフィーナ」
と、そう囁いた。
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