11 / 65
聖女アウレリア。
しおりを挟む
聖女、アウレリア・コット・アルメルセデスは現王オクタビアヌスの娘、第三王女である。
来春にはロックフェラー公爵家の嫡男、ジークヴァルドとの婚姻が控えている。
聖女は淑女が婚姻するまでのお役目と決まっているから、アウレリアが聖女でいられるのもジークヴァルドとの結婚式までの間のこと。
いや、実際にはその前に、新しい聖女に引き継がなくてはいけなくなるだろう。
しかし。
幼い頃からの親同士の約束とはいえ、アウレリア自身はもう少し聖女を続けていきたいつもりもあった。
(あたくしが一番聖女をうまくやれるのですもの)
そういう自負もある。
貴族院での成績もいつも上位にいたし聖剣の舞の練習も頑張った。
一年間、神官総出で、そして民からも集めた真那。
それを舞いによって一つにまとめ上げ、天に還す。
これもアウレリアより優雅にこなせるものはまだ見たことが無い。
それに何よりも、自分には『癒しの加護』がある。
神から与えられる加護のうち、癒しの加護を持つものは少ない。
(あたくしには、命のキュア。金のキュアの加護があるのですもの)
癒しを司る金のキュアと心を通じることで、彼女は高度な回復魔法を行使することができた。
流石に過去の大聖女であれば可能であったという欠損部位の全回復までの力はないものの、それでも今のこの国で、彼女以上に回復魔法が扱えるものはいなかった。
(今のあたくしは、エデリーンおばさまにも負けないはずですわ。だから本当はもっと……)
続けたい。
できれば結婚などしないでこのまま聖女を続けたい。
そうおもわずにいられなかった。
♢
あまたの時の彼方におられる神は、この世界にお子達をお遣わしになった。
火のアーク。
水のバアル。
風のアウラ。
土のオプス。
これら四大元素の子らと。
時のエメラ。
漆黒のブラド。
金のキュア。
光のディン。
これらの四大天使の子らを。
物質の化学変化に干渉するアーク。
物質の温度変化に干渉するバアル。
空間の位相、位置エネルギーに干渉するアウラ。
そして、それらの物質そのもの、この空間に物質を創造し生み出すことのできるオプス。
時空を司るエメラ。
漆黒の、闇、重力を司るブラド。
全ての命の源。金のキュア。
光の、エネルギーそのものを司る、ディン。
そしてそれら神の子等、彼らと心を通じその力を借りることのできる力。
それが、加護であり、その力を数値で表したものが魔力特性値と呼ばれている。
人はその魂に眠る真那を、その加護を通じて神の子に与え、力を得る。
それが魔力であり、魔法と呼ばれるものだったのだ。
もちろん。
人はその魔力の源、真那を放出するだけではなく、高度な魔法術式や魔法詠唱の研究に余念が無く。
そういった術式や詠唱により、より複雑な魔術を行使することもできるようにもなっていた。
神の子等の力を借りるには高い魔力特性値が必要になるけれど、術式や詠唱を駆使した魔術は、それを補う意味もあったのだ。
来春にはロックフェラー公爵家の嫡男、ジークヴァルドとの婚姻が控えている。
聖女は淑女が婚姻するまでのお役目と決まっているから、アウレリアが聖女でいられるのもジークヴァルドとの結婚式までの間のこと。
いや、実際にはその前に、新しい聖女に引き継がなくてはいけなくなるだろう。
しかし。
幼い頃からの親同士の約束とはいえ、アウレリア自身はもう少し聖女を続けていきたいつもりもあった。
(あたくしが一番聖女をうまくやれるのですもの)
そういう自負もある。
貴族院での成績もいつも上位にいたし聖剣の舞の練習も頑張った。
一年間、神官総出で、そして民からも集めた真那。
それを舞いによって一つにまとめ上げ、天に還す。
これもアウレリアより優雅にこなせるものはまだ見たことが無い。
それに何よりも、自分には『癒しの加護』がある。
神から与えられる加護のうち、癒しの加護を持つものは少ない。
(あたくしには、命のキュア。金のキュアの加護があるのですもの)
癒しを司る金のキュアと心を通じることで、彼女は高度な回復魔法を行使することができた。
流石に過去の大聖女であれば可能であったという欠損部位の全回復までの力はないものの、それでも今のこの国で、彼女以上に回復魔法が扱えるものはいなかった。
(今のあたくしは、エデリーンおばさまにも負けないはずですわ。だから本当はもっと……)
続けたい。
できれば結婚などしないでこのまま聖女を続けたい。
そうおもわずにいられなかった。
♢
あまたの時の彼方におられる神は、この世界にお子達をお遣わしになった。
火のアーク。
水のバアル。
風のアウラ。
土のオプス。
これら四大元素の子らと。
時のエメラ。
漆黒のブラド。
金のキュア。
光のディン。
これらの四大天使の子らを。
物質の化学変化に干渉するアーク。
物質の温度変化に干渉するバアル。
空間の位相、位置エネルギーに干渉するアウラ。
そして、それらの物質そのもの、この空間に物質を創造し生み出すことのできるオプス。
時空を司るエメラ。
漆黒の、闇、重力を司るブラド。
全ての命の源。金のキュア。
光の、エネルギーそのものを司る、ディン。
そしてそれら神の子等、彼らと心を通じその力を借りることのできる力。
それが、加護であり、その力を数値で表したものが魔力特性値と呼ばれている。
人はその魂に眠る真那を、その加護を通じて神の子に与え、力を得る。
それが魔力であり、魔法と呼ばれるものだったのだ。
もちろん。
人はその魔力の源、真那を放出するだけではなく、高度な魔法術式や魔法詠唱の研究に余念が無く。
そういった術式や詠唱により、より複雑な魔術を行使することもできるようにもなっていた。
神の子等の力を借りるには高い魔力特性値が必要になるけれど、術式や詠唱を駆使した魔術は、それを補う意味もあったのだ。
1
お気に入りに追加
1,570
あなたにおすすめの小説
将来を誓い合った王子様は聖女と結ばれるそうです
きぬがやあきら
恋愛
「聖女になれなかったなりそこない。こんなところまで追って来るとはな。そんなに俺を忘れられないなら、一度くらい抱いてやろうか?」
5歳のオリヴィエは、神殿で出会ったアルディアの皇太子、ルーカスと恋に落ちた。アルディア王国では、皇太子が代々聖女を妻に迎える慣わしだ。しかし、13歳の選別式を迎えたオリヴィエは、聖女を落選してしまった。
その上盲目の知恵者オルガノに、若くして命を落とすと予言されたオリヴィエは、せめてルーカスの傍にいたいと、ルーカスが団長を務める聖騎士への道へと足を踏み入れる。しかし、やっとの思いで再開したルーカスは、昔の約束を忘れてしまったのではと錯覚するほど冷たい対応で――?
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
【本編完結】記憶をなくしたあなたへ
ブラウン
恋愛
記憶をなくしたあなたへ。
私は誓約書通り、あなたとは会うことはありません。
あなたも誓約書通り私たちを探さないでください。
私には愛し合った記憶があるが、あなたにはないという事実。
もう一度信じることができるのか、愛せるのか。
2人の愛を紡いでいく。
本編は6話完結です。
それ以降は番外編で、カイルやその他の子供たちの状況などを投稿していきます
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
拝啓、大切なあなたへ
茂栖 もす
恋愛
それはある日のこと、絶望の底にいたトゥラウム宛てに一通の手紙が届いた。
差出人はエリア。突然、別れを告げた恋人だった。
そこには、衝撃的な事実が書かれていて───
手紙を受け取った瞬間から、トゥラウムとエリアの終わってしまったはずの恋が再び動き始めた。
これは、一通の手紙から始まる物語。【再会】をテーマにした短編で、5話で完結です。
※以前、別PNで、小説家になろう様に投稿したものですが、今回、アルファポリス様用に加筆修正して投稿しています。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
婚約者に「愛することはない」と言われたその日にたまたま出会った隣国の皇帝から溺愛されることになります。~捨てる王あれば拾う王ありですわ。
松ノ木るな
恋愛
純真無垢な心の侯爵令嬢レヴィーナは、国の次期王であるフィリベールと固い絆で結ばれる未来を夢みていた。しかし王太子はそのような意思を持つ彼女を生意気と見なして疎み、気まぐれに婚約破棄を言い渡す。
伴侶と寄り添う心穏やかな人生を諦めた彼女は悲観し、井戸に身を投げたのだった。
あの世だと思って辿りついた先は、小さな貴族の家の、こじんまりとした食堂。そこには呑めもしないのに酒を舐め、身分社会に恨み節を唱える美しい青年がいた。
どこの家の出の、どの立場とも知らぬふたりが、一目で恋に落ちたなら。
たまたま出会って離れていてもその存在を支えとする、そんなふたりが再会して結ばれる初恋ストーリーです。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
【完結】殿下、自由にさせていただきます。
なか
恋愛
「出て行ってくれリルレット。王宮に君が住む必要はなくなった」
その言葉と同時に私の五年間に及ぶ初恋は終わりを告げた。
アルフレッド殿下の妃候補として選ばれ、心の底から喜んでいた私はもういない。
髪を綺麗だと言ってくれた口からは、私を貶める言葉しか出てこない。
見惚れてしまう程の笑みは、もう見せてもくれない。
私………貴方に嫌われた理由が分からないよ。
初夜を私一人だけにしたあの日から、貴方はどうして変わってしまったの?
恋心は砕かれた私は死さえ考えたが、過去に見知らぬ男性から渡された本をきっかけに騎士を目指す。
しかし、正騎士団は女人禁制。
故に私は男性と性別を偽って生きていく事を決めたのに……。
晴れて騎士となった私を待っていたのは、全てを見抜いて笑う副団長であった。
身分を明かせない私は、全てを知っている彼と秘密の恋をする事になる。
そして、騎士として王宮内で起きた変死事件やアルフレッドの奇行に大きく関わり、やがて王宮に蔓延る謎と対峙する。
これは、私の初恋が終わり。
僕として新たな人生を歩みだした話。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
1年後に離縁してほしいと言った旦那さまが離してくれません
水川サキ
恋愛
「僕には他に愛する人がいるんだ。だから、君を愛することはできない」
伯爵令嬢アリアは政略結婚で結ばれた侯爵に1年だけでいいから妻のふりをしてほしいと頼まれる。
そのあいだ、何でも好きなものを与えてくれるし、いくらでも贅沢していいと言う。
アリアは喜んでその条件を受け入れる。
たった1年だけど、美味しいものを食べて素敵なドレスや宝石を身につけて、いっぱい楽しいことしちゃおっ!
などと気楽に考えていたのに、なぜか侯爵さまが夜の生活を求めてきて……。
いやいや、あなた私のこと好きじゃないですよね?
ふりですよね? ふり!!
なぜか侯爵さまが離してくれません。
※設定ゆるゆるご都合主義
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる