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しあわせな披露宴。

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 爽やかな秋空のもと、リンゴンと鐘の音が響き渡った。
 王宮の敷地に隣接された迎賓館での披露宴。

 こんな派手な披露宴は望んでいなかった、けれど。ルークにどうしてもと押し切られてしまった。

「だいたいもともと契約婚だから、わたくしのことは愛さないんじゃなかったの?」

「元々は危険な任務に赴くアルバートから託され君を預かったのだ。ちょうど叔父の国王から、このまま結婚をしないのなら歳の近い従弟の王子を養子にし、公爵家を継がせるよう圧力があったのもあって、お飾りでもいいから妻を演じてくれる人を求めていた。それをアルバートに話したら君を勧められ渡に船で婚姻を結んだものの、君に対してどう接すればいいのかもわかっていなかった」

 ルークは縋るようにセラフィーナの手を取って跪く。

「君に手を出すつもりも、君に不自由なくらしをさせるつもりもなかった。だけれどいまは——君を離したくない。どうか、私と本当の夫婦になってもらえないだろうか」


 リンゴンと鐘がなる。
 冬になる前にと披露宴を強行したルーク。
 ほぼ全ての貴族に招待状を出したけれどマキアベリ侯爵は領地に篭り籠城を続けているという。
 この披露宴が終わり次第、ルークは一軍を率いマキアベリ領に攻め入ることになっている。
 まあそれにはセラフィーナもこっそり帯同するつもりだ。
 魔結晶の行方も気になる。
 あの鬼人、あれもどうやら魔結晶により召喚された魔人の一人。
 魔獣や魔人を召喚することで開いた次元の歪みから漏れ出る魔素によりこの世界の汚染が進むのも、その穴が開き世界が危機に陥るのも、絶対に防がなければいけないから。



 気持ちのいい風が頬を撫でていった。
 まだ鳴り続けているリンゴンという鐘の音。

 セラフィーナはルークの瞳と同じ青く清浄な色のドレスを身に纏っていた。
 あの、水色のシフォンドレスは、内気だったセラフィーナが一生懸命縫ったものだった。
 ルークの元に嫁ぐにあたって、彼のきれいな瞳の色のドレスを纏いたかったから。

 ルークは白銀の衣装を纏って隣に立っている。そんな彼を横目でながめていると、記憶の中にある幼い頃の王子様の姿と重なって見えた。

(ふふ。セラフィーナとしての感情なんて忘れてしまったと思ってたのにね)

 まだ、全てを思い出したわけじゃない。でも。

 もう少しだけちゃんと彼と向き合ってみよう。そう思えた。

 それが、幼かったセラフィーナの心を救うことになるのだろうから。
 一回目のセラフィーナがそう望んでいたのだろうから。

 自分はそのために今ここにいるんだから。

「愛してるよセラフィ」

 大勢の人のいっぱいの祝福の中、彼がそっと口付けをくれた。

 嬉しくて。彼の胸の中にそっと身をよせてみた。



       
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