18 / 63
バッドエンドはイヤ。
しおりを挟む
「バッドエンドはイヤ」
思わずそう声に出していたセラフィーナ。
あれが、あの記憶が未来の出来事なのだとしたら、何もしないでいたらきっとあの通り、あの光景をそのままなぞるのだろう。
イヤだ。あんな悲しい結末はもう二度と見たくはない。
そう、吐き捨てる。
ルークヴァルトに対する恋心は今はきっと忘れてしまったんだろう。そこまで彼のことを好きかと問われたら、恋愛感情的には違うと言える。
それでもだからといって彼が死んでしまうのは、絶対に避けたい。感情的に許せない。そう心の奥底から湧き上がってきて止まらなかった。
そう。それを回避するために今ここにいるのだから。やりなおすために時間を遡り過去に戻ってきたのだから。
あの断片の記憶の未来。その時に強く願ったセラフィーナの心。時を遡った代償なのか、今はその時の感情のほとんどを忘れてしまっていてあの時の自分と完全に気持ちが繋がってるわけではないけど、それでもやっぱりイヤなものはイヤだとそう強く思って。
そういえば。と思い出す。
冒険者として薬草採集のお仕事をしている時だったか、よからぬ噂を耳にした。
普通の薬草は大気中のマナをたっぷり含んだものが上質とされ高値で流通している。
そこに最近、マナではなく魔、魔素と呼ばれるそれを多量に含有するいわゆる魔草が混ざっているというのだ。
マナと魔素は元は同じもの。
水と氷のように同じ神の氣であるエーテルが状態を変えただけの物ではあるのだけど、それが生命に与える影響は天と地ほど違って。
少量であればそこまでは変わらない。共に魔力を高めるエネルギーとなりうるものだから。
でも大量の魔、魔素は命を蝕む。
生命を蝕み最終的に魔獣を生み出すもの、それが魔とか魔素とか呼ばれるものだった。
(どこかに魔溜まりでもできてしまっているのかしら?)
自然界には魔素は普通には存在しない。空間の歪み、どこか異界から滲み出てくることが多い魔素。
はっきりとは覚えていないけど、未来の記憶にあった危機にはこの魔素が絡んでいたようにも思う。
だとしたら。
ルークや兄が危険なだけでは済まない。
この世界全体にとっても破滅的な危機であるのかもしれないから。
思わずそう声に出していたセラフィーナ。
あれが、あの記憶が未来の出来事なのだとしたら、何もしないでいたらきっとあの通り、あの光景をそのままなぞるのだろう。
イヤだ。あんな悲しい結末はもう二度と見たくはない。
そう、吐き捨てる。
ルークヴァルトに対する恋心は今はきっと忘れてしまったんだろう。そこまで彼のことを好きかと問われたら、恋愛感情的には違うと言える。
それでもだからといって彼が死んでしまうのは、絶対に避けたい。感情的に許せない。そう心の奥底から湧き上がってきて止まらなかった。
そう。それを回避するために今ここにいるのだから。やりなおすために時間を遡り過去に戻ってきたのだから。
あの断片の記憶の未来。その時に強く願ったセラフィーナの心。時を遡った代償なのか、今はその時の感情のほとんどを忘れてしまっていてあの時の自分と完全に気持ちが繋がってるわけではないけど、それでもやっぱりイヤなものはイヤだとそう強く思って。
そういえば。と思い出す。
冒険者として薬草採集のお仕事をしている時だったか、よからぬ噂を耳にした。
普通の薬草は大気中のマナをたっぷり含んだものが上質とされ高値で流通している。
そこに最近、マナではなく魔、魔素と呼ばれるそれを多量に含有するいわゆる魔草が混ざっているというのだ。
マナと魔素は元は同じもの。
水と氷のように同じ神の氣であるエーテルが状態を変えただけの物ではあるのだけど、それが生命に与える影響は天と地ほど違って。
少量であればそこまでは変わらない。共に魔力を高めるエネルギーとなりうるものだから。
でも大量の魔、魔素は命を蝕む。
生命を蝕み最終的に魔獣を生み出すもの、それが魔とか魔素とか呼ばれるものだった。
(どこかに魔溜まりでもできてしまっているのかしら?)
自然界には魔素は普通には存在しない。空間の歪み、どこか異界から滲み出てくることが多い魔素。
はっきりとは覚えていないけど、未来の記憶にあった危機にはこの魔素が絡んでいたようにも思う。
だとしたら。
ルークや兄が危険なだけでは済まない。
この世界全体にとっても破滅的な危機であるのかもしれないから。
2
お気に入りに追加
245
あなたにおすすめの小説

お母さんに捨てられました~私の価値は焼き豚以下だそうです~【完結】
小平ニコ
ファンタジー
主人公リネットの暮らすメルブラン侯爵領には、毎年四月になると、領主である『豚侯爵』に豚肉で作った料理を献上する独特の風習があった。
だが今年の四月はいつもと違っていた。リネットの母が作った焼き豚はこれまでで最高の出来栄えであり、それを献上することを惜しんだ母は、なんと焼き豚の代わりにリネットを豚侯爵に差し出すことを思いつくのである。
多大なショックを受けつつも、母に逆らえないリネットは、命令通りに侯爵の館へ行く。だが、実際に相対した豚侯爵は、あだ名とは大違いの美しい青年だった。
悪辣な母親の言いなりになることしかできない、自尊心の低いリネットだったが、侯爵に『ある特技』を見せたことで『遊戯係』として侯爵家で働かせてもらえることになり、日々、様々な出来事を経験して成長していく。
……そして時は流れ、リネットが侯爵家になくてはならない存在になった頃。無慈悲に娘を放り捨てた母親は、その悪行の報いを受けることになるのだった。
【完結】聖女になり損なった刺繍令嬢は逃亡先で幸福を知る。
みやこ嬢
恋愛
「ルーナ嬢、神聖なる聖女選定の場で不正を働くとは何事だ!」
魔法国アルケイミアでは魔力の多い貴族令嬢の中から聖女を選出し、王子の妃とするという古くからの習わしがある。
ところが、最終試験まで残ったクレモント侯爵家令嬢ルーナは不正を疑われて聖女候補から外されてしまう。聖女になり損なった失意のルーナは義兄から襲われたり高齢宰相の後妻に差し出されそうになるが、身を守るために侍女ティカと共に逃げ出した。
あてのない旅に出たルーナは、身を寄せた隣国シュベルトの街で運命的な出会いをする。
【2024年3月16日完結、全58話】
タイムリープ〜悪女の烙印を押された私はもう二度と失敗しない
結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
<もうあなた方の事は信じません>―私が二度目の人生を生きている事は誰にも内緒―
私の名前はアイリス・イリヤ。王太子の婚約者だった。2年越しにようやく迎えた婚約式の発表の日、何故か<私>は大観衆の中にいた。そして婚約者である王太子の側に立っていたのは彼に付きまとっていたクラスメイト。この国の国王陛下は告げた。
「アイリス・イリヤとの婚約を解消し、ここにいるタバサ・オルフェンを王太子の婚約者とする!」
その場で身に覚えの無い罪で悪女として捕らえられた私は島流しに遭い、寂しい晩年を迎えた・・・はずが、守護神の力で何故か婚約式発表の2年前に逆戻り。タイムリープの力ともう一つの力を手に入れた二度目の人生。目の前には私を騙した人達がいる。もう騙されない。同じ失敗は繰り返さないと私は心に誓った。
※カクヨム・小説家になろうにも掲載しています
森に捨てられた令嬢、本当の幸せを見つけました。
玖保ひかる
恋愛
[完結]
北の大国ナバランドの貴族、ヴァンダーウォール伯爵家の令嬢アリステルは、継母に冷遇され一人別棟で生活していた。
ある日、継母から仲直りをしたいとお茶会に誘われ、勧められたお茶を口にしたところ意識を失ってしまう。
アリステルが目を覚ましたのは、魔の森と人々が恐れる深い森の中。
森に捨てられてしまったのだ。
南の隣国を目指して歩き出したアリステル。腕利きの冒険者レオンと出会い、新天地での新しい人生を始めるのだが…。
苦難を乗り越えて、愛する人と本当の幸せを見つける物語。
※小説家になろうで公開した作品を改編した物です。
※完結しました。
【本編完結】婚約者を守ろうとしたら寧ろ盾にされました。腹が立ったので記憶を失ったふりをして婚約解消を目指します。
しろねこ。
恋愛
「君との婚約を解消したい」
その言葉を聞いてエカテリーナはニコリと微笑む。
「了承しました」
ようやくこの日が来たと内心で神に感謝をする。
(わたくしを盾にし、更に記憶喪失となったのに手助けもせず、他の女性に擦り寄った婚約者なんていらないもの)
そんな者との婚約が破談となって本当に良かった。
(それに欲しいものは手に入れたわ)
壁際で沈痛な面持ちでこちらを見る人物を見て、頬が赤くなる。
(愛してくれない者よりも、自分を愛してくれる人の方がいいじゃない?)
エカテリーナはあっさりと自分を捨てた男に向けて頭を下げる。
「今までありがとうございました。殿下もお幸せに」
類まれなる美貌と十分な地位、そして魔法の珍しいこの世界で魔法を使えるエカテリーナ。
だからこそ、ここバークレイ国で第二王子の婚約者に選ばれたのだが……それも今日で終わりだ。
今後は自分の力で頑張ってもらおう。
ハピエン、自己満足、ご都合主義なお話です。
ちゃっかりとシリーズ化というか、他作品と繋がっています。
カクヨムさん、小説家になろうさん、ノベルアッププラスさんでも連載中(*´ω`*)
表紙絵は猫絵師さんより(。・ω・。)ノ♡
若奥様は緑の手 ~ お世話した花壇が聖域化してました。嫁入り先でめいっぱい役立てます!
古森真朝
恋愛
意地悪な遠縁のおばの邸で暮らすユーフェミアは、ある日いきなり『明後日に輿入れが決まったから荷物をまとめろ』と言い渡される。いろいろ思うところはありつつ、これは邸から出て自立するチャンス!と大急ぎで支度して出立することに。嫁入り道具兼手土産として、唯一の財産でもある裏庭の花壇(四畳サイズ)を『持参』したのだが――実はこのプチ庭園、長年手塩にかけた彼女の魔力によって、神域霊域レベルのレア植物生息地となっていた。
そうとは知らないまま、輿入れ初日にボロボロになって帰ってきた結婚相手・クライヴを救ったのを皮切りに、彼の実家エヴァンス邸、勤め先である王城、さらにお世話になっている賢者様が司る大神殿と、次々に起こる事件を『あ、それならありますよ!』とプチ庭園でしれっと解決していくユーフェミア。果たして嫁ぎ先で平穏を手に入れられるのか。そして根っから世話好きで、何くれとなく構ってくれるクライヴVS自立したい甘えベタの若奥様の勝負の行方は?
*カクヨム様で先行掲載しております

私と母のサバイバル
だましだまし
ファンタジー
侯爵家の庶子だが唯一の直系の子として育てられた令嬢シェリー。
しかしある日、母と共に魔物が出る森に捨てられてしまった。
希望を諦めず森を進もう。
そう決意するシャリーに異変が起きた。
「私、別世界の前世があるみたい」
前世の知識を駆使し、二人は無事森を抜けられるのだろうか…?
捨てた騎士と拾った魔術師
吉野屋
恋愛
貴族の庶子であるミリアムは、前世持ちである。冷遇されていたが政略でおっさん貴族の後妻落ちになる事を懸念して逃げ出した。実家では隠していたが、魔力にギフトと生活能力はあるので、王都に行き暮らす。優しくて美しい夫も出来て幸せな生活をしていたが、夫の兄の死で伯爵家を継いだ夫に捨てられてしまう。その後、王都に来る前に出会った男(その時は鳥だった)に再会して国を左右する陰謀に巻き込まれていく。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる