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[夜会]大ホール。
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夜会は王宮の敷地の隣に建つ迎賓館の大ホールで開催される。
そう。あの貴族院の卒業パーティーが開かれたあの迎賓館で。
アルベルト様はご親戚の奥様で未亡人でいらっしゃるエラ・コーラリア様をお誘いになるのだという。エラ様はコーラリア子爵家の前子爵の奥様で、今は御子息のエリクレス様が爵位を継いでいらっしゃるという。
身持ちが堅いのかそうそう浮いた話の一つも無いご婦人で、唯一アルベルト様のパートナーとしてこうして社交界に参加されるのを楽しみにされていらっしゃるとも聞いた。
アルベルト様のお亡くなりになった奥様、フリード様のお母様とも親しかったらしい、けど。
そんなエラ様をお迎えに行ったアルベルト様とは別に、フリード様とわたくしの乗った馬車はそろそろ迎賓館に到着するところだった。
大通りから大門を通り馬車はエントランスの前、馬車回しに停車して。
大勢の侍従達が待ち受けるそこには真っ赤なベルベッドの絨毯が敷き詰められていた。
ふふ。
ここから逃げ出したのよね。
なんてそんな感慨にも耽るけど、今日は幸せいっぱいな気分でここにいるのだもの。
何だか不思議な気分にもなる。
先に馬車から降りたフリード様が手を差し伸べてくださって。
その手をふんわりと取って、周囲に軽く会釈をしながらゆったりと馬車から降りる。
真っ白純白な生地の上から銀糸で編み込んだシフォンの布を纏わせたドレスは、腰の部分からふわっと広がり足元長く伸びている。
豪奢でキラキラ輝くそんなドレスを纏って、何だか自分が自分でないような、そんな気分にもなって。
フリード様にエスコートされるままに絨毯の上を歩き、ロビーから大広間の入り口まで差し掛かったところで、入り口付近にグラームスお父様の姿を目にし。
心臓が一瞬飛び上がる。
こちらを見つめる厳しいその瞳。
目の下にはくまも見え、随分とやつれているようにも見える。
お父様のお隣には、シルビア?
あの時の真っ赤なドレスに身を包んだ彼女がお父様と共にいた。
そちらも、お顔は何だか随分と暗い。
この間別れた時の事を思い出し、浮かれていた気分もすっかりと吹き飛んでいた。
「挨拶は後だ。今日は国王陛下から聖女としてお披露目を受ける大事な日だからね。心を落ち着けようね」
わたくしの心臓が早鐘を打っているのを感じてくださったフリード様。
耳元でそうおっしゃってくれた。
そのまま流れるように絨毯の上を歩き、大広間の中に進んでいく。
こちらを睨むお父様の視線が痛いほどにわかったけれど、だからといって今のわたくしに何ができる訳でもなかった。
お父様に文句を言おうと思っていたけれど、まだそこまでの勇気は持っていない。
ぎゅっと。
フリード様の手を掴む。
ふっとこちらを見て、「心配しなくていいよ。俺がついてる」とそう囁く彼に。
一瞬コツンとその腕に頭を当てて、その逞しい腕にしがみつく。
本当に一瞬だけそうして心を落ち着けたわたくし。
もう一度しっかりと前を見て、背筋を伸ばして国王陛下の前まで頑張って歩いた。
そう。あの貴族院の卒業パーティーが開かれたあの迎賓館で。
アルベルト様はご親戚の奥様で未亡人でいらっしゃるエラ・コーラリア様をお誘いになるのだという。エラ様はコーラリア子爵家の前子爵の奥様で、今は御子息のエリクレス様が爵位を継いでいらっしゃるという。
身持ちが堅いのかそうそう浮いた話の一つも無いご婦人で、唯一アルベルト様のパートナーとしてこうして社交界に参加されるのを楽しみにされていらっしゃるとも聞いた。
アルベルト様のお亡くなりになった奥様、フリード様のお母様とも親しかったらしい、けど。
そんなエラ様をお迎えに行ったアルベルト様とは別に、フリード様とわたくしの乗った馬車はそろそろ迎賓館に到着するところだった。
大通りから大門を通り馬車はエントランスの前、馬車回しに停車して。
大勢の侍従達が待ち受けるそこには真っ赤なベルベッドの絨毯が敷き詰められていた。
ふふ。
ここから逃げ出したのよね。
なんてそんな感慨にも耽るけど、今日は幸せいっぱいな気分でここにいるのだもの。
何だか不思議な気分にもなる。
先に馬車から降りたフリード様が手を差し伸べてくださって。
その手をふんわりと取って、周囲に軽く会釈をしながらゆったりと馬車から降りる。
真っ白純白な生地の上から銀糸で編み込んだシフォンの布を纏わせたドレスは、腰の部分からふわっと広がり足元長く伸びている。
豪奢でキラキラ輝くそんなドレスを纏って、何だか自分が自分でないような、そんな気分にもなって。
フリード様にエスコートされるままに絨毯の上を歩き、ロビーから大広間の入り口まで差し掛かったところで、入り口付近にグラームスお父様の姿を目にし。
心臓が一瞬飛び上がる。
こちらを見つめる厳しいその瞳。
目の下にはくまも見え、随分とやつれているようにも見える。
お父様のお隣には、シルビア?
あの時の真っ赤なドレスに身を包んだ彼女がお父様と共にいた。
そちらも、お顔は何だか随分と暗い。
この間別れた時の事を思い出し、浮かれていた気分もすっかりと吹き飛んでいた。
「挨拶は後だ。今日は国王陛下から聖女としてお披露目を受ける大事な日だからね。心を落ち着けようね」
わたくしの心臓が早鐘を打っているのを感じてくださったフリード様。
耳元でそうおっしゃってくれた。
そのまま流れるように絨毯の上を歩き、大広間の中に進んでいく。
こちらを睨むお父様の視線が痛いほどにわかったけれど、だからといって今のわたくしに何ができる訳でもなかった。
お父様に文句を言おうと思っていたけれど、まだそこまでの勇気は持っていない。
ぎゅっと。
フリード様の手を掴む。
ふっとこちらを見て、「心配しなくていいよ。俺がついてる」とそう囁く彼に。
一瞬コツンとその腕に頭を当てて、その逞しい腕にしがみつく。
本当に一瞬だけそうして心を落ち着けたわたくし。
もう一度しっかりと前を見て、背筋を伸ばして国王陛下の前まで頑張って歩いた。
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