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[疑念]妖艶な唇。
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「どういうこと、でしょう?」
動揺を隠しきれす、声が少しうわずってしまう。
わたくしのことが何か噂になっているのでしょうか?
それも気になるけれど彼女はフリード様のいとこ。言い方にはなんだか邪気が見えた気もしたけれど、気のせいかもしれないし。あまり仲違いもしたくはない。
「ああ、言葉の通りでございますわ。だって悩んだ挙句崖から飛び降りたっていうじゃありませんか。フリード兄様がいらっしゃらなかったら命を落としていたところだったのでしょう?」
え?
アルベルト様は、今回のことには緘口令を敷いてくださったと仰っていました。
それなのにどうして?
「それはどこから……」
「ああ、ご安心なさってくださいな。別に社交界や貴族院で噂になっているわけではありません。流石にバルバロス侯爵家にとっても醜聞ですからね、わたくしもちゃんと口止めをしておきましたわ」
そう言うと、それでもなんとなくこちらを見る目は嘲るようなそんな雰囲気で。
「シルビィが心配しておりましたもの。お姉さまが帰ってこないのだと」
はい? シルビア?
ああ、もしかして。
「わたくし、シルビィとはずっと仲良くさせていただいておりますの。ここのところ彼女がずっと落ち込んでいまして。それがどうしてなのかを尋ねたら。色々お話ししてくださったのですわ」
そう言って目の前のカップを優雅にもちあげ、そっとお茶を啜る。
赤い唇が艶かしく動き、「それでも」と小さくつぶやいて。
「やはりエルザ様ではフリード様のお相手としては相応しいとは思えませんけれど」
と、小声でそう言い放った。
一瞬耳を疑ったけれど、彼女がこちらを見る目がやっぱりあんまり好意的には見えなかったから、きっとさっきの言葉は本音なのだろう。
動揺を隠しつつ、その言葉を聞こえなかったふりをして。
わたくしも目の前のお茶をコクンと飲んで。
「気持ちが落ちてしまってフリード様や侯爵様にはご迷惑をおかけしてしまったと反省しております。でも、もう大丈夫です。今回の事でフリード様のお気持ちがよく分かりましたから、わたくしもしっかりしなくては、と、心を入れ替えて励んで参りますわ」
と、当たり障りがないようにそう返す。
これで諦めて下されば良いのだけれど。
っていうか、彼女は絶対わたくしを挑発するような言い方を選んでますよね。
なんの意図があるのでしょう。気になります。
「ふふ。知らない方が幸せだと思ったから言わずにおこうと思っておりましたけれど。エルザ様? あなたアルベルト様とフローラ様の件はご存じでした?」
え??
侯爵様とお母様??
「アルベルト様が生涯愛した女性はフローラ様だけ。だそうですわよ?」
!!!
言葉にならず、そのまま固まってしまったわたくし。
「その様子だとご存じなかったようね。それではわたくしはこれで。ごきげんよう」
すくっと席をたち、優雅に退出していく彼女、ベアトリーチェを。
わたくしは呆然としたまま見送るしかできなかった。
動揺を隠しきれす、声が少しうわずってしまう。
わたくしのことが何か噂になっているのでしょうか?
それも気になるけれど彼女はフリード様のいとこ。言い方にはなんだか邪気が見えた気もしたけれど、気のせいかもしれないし。あまり仲違いもしたくはない。
「ああ、言葉の通りでございますわ。だって悩んだ挙句崖から飛び降りたっていうじゃありませんか。フリード兄様がいらっしゃらなかったら命を落としていたところだったのでしょう?」
え?
アルベルト様は、今回のことには緘口令を敷いてくださったと仰っていました。
それなのにどうして?
「それはどこから……」
「ああ、ご安心なさってくださいな。別に社交界や貴族院で噂になっているわけではありません。流石にバルバロス侯爵家にとっても醜聞ですからね、わたくしもちゃんと口止めをしておきましたわ」
そう言うと、それでもなんとなくこちらを見る目は嘲るようなそんな雰囲気で。
「シルビィが心配しておりましたもの。お姉さまが帰ってこないのだと」
はい? シルビア?
ああ、もしかして。
「わたくし、シルビィとはずっと仲良くさせていただいておりますの。ここのところ彼女がずっと落ち込んでいまして。それがどうしてなのかを尋ねたら。色々お話ししてくださったのですわ」
そう言って目の前のカップを優雅にもちあげ、そっとお茶を啜る。
赤い唇が艶かしく動き、「それでも」と小さくつぶやいて。
「やはりエルザ様ではフリード様のお相手としては相応しいとは思えませんけれど」
と、小声でそう言い放った。
一瞬耳を疑ったけれど、彼女がこちらを見る目がやっぱりあんまり好意的には見えなかったから、きっとさっきの言葉は本音なのだろう。
動揺を隠しつつ、その言葉を聞こえなかったふりをして。
わたくしも目の前のお茶をコクンと飲んで。
「気持ちが落ちてしまってフリード様や侯爵様にはご迷惑をおかけしてしまったと反省しております。でも、もう大丈夫です。今回の事でフリード様のお気持ちがよく分かりましたから、わたくしもしっかりしなくては、と、心を入れ替えて励んで参りますわ」
と、当たり障りがないようにそう返す。
これで諦めて下されば良いのだけれど。
っていうか、彼女は絶対わたくしを挑発するような言い方を選んでますよね。
なんの意図があるのでしょう。気になります。
「ふふ。知らない方が幸せだと思ったから言わずにおこうと思っておりましたけれど。エルザ様? あなたアルベルト様とフローラ様の件はご存じでした?」
え??
侯爵様とお母様??
「アルベルト様が生涯愛した女性はフローラ様だけ。だそうですわよ?」
!!!
言葉にならず、そのまま固まってしまったわたくし。
「その様子だとご存じなかったようね。それではわたくしはこれで。ごきげんよう」
すくっと席をたち、優雅に退出していく彼女、ベアトリーチェを。
わたくしは呆然としたまま見送るしかできなかった。
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★コメントの返信は遅いです。
★タグが勝手すぎる!と思う方。ごめんなさい。検索してもヒットしないよう工夫してます。
♡注意事項~この話を読む前に~♡
※異世界を舞台にした創作話です。時代設定なし、史実に基づいた話ではありません。【妄想史であり世界史ではない】事をご理解ください。登場人物、場所全て架空です。
※外道な作者の妄想で作られたガチなフィクションの上、ご都合主義なのでリアルな世界の常識と混同されないようお願いします。
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