「あなたのことはもう忘れることにします。 探さないでください」〜 お飾りの妻だなんてまっぴらごめんです!

友坂 悠

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料理の再現。

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 オムライスだけじゃない。
 ハンバーグステーキにエビピラフ、カレーライスもある?
 スパゲティも色々種類があるし、何これピザ?
 なんだか日本のファミレスにあるようなメニューが並んでる。それもみんなカタカナで名前が書いてある。
 地球の料理、ではなくて、あきらかに20世紀後半から21世紀前半の日本のファミレス料理。

 日本食がないのはここが洋風レストランな所為かな。

 きっと、ジェフさんのご先祖様は、日本食だって作ろうと思えば作れたんだろう。
 食材が揃うかどうかはまた別として。

 って、ほんとこれはもう確定、だ。
 この世界には日本から来た人がいたんだってこと。

「この文字は……?」

「ああ、君にはこれがちゃんと文字に見えるのかい? 角ばってて何かの模様にしか見えないって人が多いんだけどね」

 そっか。
 この世界の文字は丸まっていてつなげて書くのが普通。
 アルファベットの斜体に似た文字だ。
 こんな単純な線だけの文字なんて、それもこんなに角ばってるのなんて、文字にさえ見えなくてもおかしくない。

「お料理の名前に見えますわ」

「ああ、鋭いね。実はそうなんだ。これは、ハンバーグステーキ、エビピラフ、カレーライス、ミートスパゲティ、ナポリタン、そう書いてあるんだよ」

 あはっ。
 そのままだ。

「お料理のレシピはないのですか?」

「うん、もう長い年月の間に失ってしまった。俺はなんとかこれらを再現したい、そう思って試行錯誤しているんだけどね」

 ああ。

「わたくしにお手伝いさせてもらえないでしょうか? これらのお料理を再現してみたいです」

「セリーヌ?」

「いいのかい? お嬢ちゃん」

「ええ、お願いします。ごめんなさいギディオン様。わたくしどうしてもこのメニューの再現を試してみたくて。ここにいられる間だけでいいんです。お願いします」

「ふむ。セリーヌがそんなに言うのなら……。私もセリーヌの作る料理は好きだしね。ここにあるメニューが食べられるようになるのなら……」

 ちょっとだけ躊躇した後、そう許してくれたギディオン様。

 メニューにあるのはお皿に盛り付けられた絵とカタカナの名前だけ。
 どんなお料理なのかこれでは想像しかできないけれど、もう名前も忘れられちゃっているけどここから派生したお料理は今でもちゃんとある様子。
 このお店にも、ステーキだけじゃなく挽肉を使ったお料理もあるし、お米がメインのお料理はオムライスだけだけど、中に入っているチキンライスだってピラフとそう変わらない。
 味付けは違うけどね。

 麺料理はあまりみたことなかったけど、小麦料理ならいっぱいある。
 素材を煮たり焼いたり茹でたりが普通のこの世界のお料理。
 メインにスープ系が多いのも、2次的な手間があまりかかっていない証拠かな。
 麺のように一旦加工した後にそれを使って別の料理にするっていうのはなかなか手間がかかるもの。
 そういう文化はあまり育っていないみたいだ。

 どうしようかな。

 パスタマシンを作ってる時間はないし。
 手打ちうどんのような作り方が一番いいのかな。

 そんなことをつらつら考えてたら。

「よし。よかったら午後から厨房を自由に使ってもらって構わないよ。君、何か思いついたみたいだし。俺も君の料理を食べてみたいかな」

 そういってカハハと笑ったジェフさん。あたしの肩をバンバンと叩いた。
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