上 下
58 / 74

同じ効能のポーション。

しおりを挟む
 ♢ ♢ ♢

 一般のポーションは煮詰めるとちゃんと薬効成分も煮詰まって抽出される。
 そうして煮詰め丸薬にすることもあるそうだ。
 効きは、なぜかポーションの状態の方が高いことの方が多く、丸薬にするメリットはあまりないそうだけれど。
 即効性の面から見ても丸薬はポーションに劣る。
 そういう意味でも、ゆっくり効かせる風邪薬なんかには丸薬が向いていて、今すぐ回復させるなら液ぐすりの方が良いって言われていた。

 薬には魔法を込めて作成した薬と純粋に薬草などの効能だけを使った薬とがあるけれど、今のこの世界では魔力が全く籠っていない薬草というのは探すのが逆に難しいこともあって、多かれ少なかれ魔法の効能も含まれているのだという。

 それでも、魔法だけで生み出すポーションというのはどこの本にも載っていなかった。


 そういう意味ではあたしのこの権能って、ちょっと特殊だよね。
 まあでも転生特典だとしたらすごく微妙?
 好きな味が作れるのは今となってはあたしにとってなくてはならない技能になってはいるけれど、それでもそれだけの物。そんなに大した力じゃない。そうは思ってる。

 普通に売ってるポーションとあたしのポーションの違いといったら、あたしのポーションは煮詰めると何も残らない、っていう点。
 あと、定着率?
 粉に効能をつける場合なんか特に、その薬効は数日で消えて無くなってしまうことが多かった。
 保存は効かないってことだ。

 最初はどうしてかなって考えたけど、結局本当のところはわからなかった。
 ただ、長く効くようにって祈ったものはそれなりに長く効き、何も考えず生み出したものは割とすぐに効かなくなってしまった、そういう感じ。

 きっと、水の中にあるのはマナとギアだけなんじゃないかな。

 それがあたしの出した結論。

 例えば聖魔法で回復を唱えたとき、自分の中のマナをギア・キュアが食べて「治す」っていう権能を発揮する。
 キュアは、人には見えない光の粒。
 それが怪我をした人の患部に入り込み、治癒させていくのだ。

 だから。

 きっとポーションの中にはマナとギアが込められているんじゃないかなって、そう思ってる。

 時間が経ってマナやギアが抜けてしまったらただの水に戻る? みたいな。
 そんなイメージを持っていた。



 ギディオン様から星闇の森にできてしまったあの泉がまだそのまま残っているって聞いた時は驚いた。
 だって、あたし、あの時そんな長持ちするようには祈っていなかった。
 ただただお姉様を助けてって願っただけだもの。
 ポーションを汲んで街まで戻ってくると、数日でその効果が消えてしまうと聞いた時には「やっぱりね」と思ったものだ。
 どうやら次元の裂け目を封印するのに役に立っているって聞いた時は、良かったって純粋に思ったものだったけど、それがそんなにも長くそのままの状態を保っているだなんて。
 不思議だ。

「もう一度同じ効能のポーションを生み出せるかい?」

 そう聞かれ、何度か試してみたけど無理だった。
 っていうか全く同じっていうからいけない。
 そこそこのハイポーションなら普通に作れたんだけど、な。

 お姉様に渡して比べてみてもらったけど、どうやらちょっと違うらしいの。

 やっぱりあの時は必死だったから。
 その分少し状況が違ったんだろうって。そうは思うんだけどね。
しおりを挟む
感想 53

あなたにおすすめの小説

忘却令嬢〜そう言われましても記憶にございません〜【完】

雪乃
恋愛
ほんの一瞬、躊躇ってしまった手。 誰よりも愛していた彼女なのに傷付けてしまった。 ずっと傷付けていると理解っていたのに、振り払ってしまった。 彼女は深い碧色に絶望を映しながら微笑んだ。 ※読んでくださりありがとうございます。 ゆるふわ設定です。タグをころころ変えてます。何でも許せる方向け。

【完結】もう辛い片想いは卒業して結婚相手を探そうと思います

ユユ
恋愛
大家族で大富豪の伯爵家に産まれた令嬢には 好きな人がいた。 彼からすれば誰にでも向ける微笑みだったが 令嬢はそれで恋に落ちてしまった。 だけど彼は私を利用するだけで 振り向いてはくれない。 ある日、薬の過剰摂取をして 彼から離れようとした令嬢の話。 * 完結保証付き * 3万文字未満 * 暇つぶしにご利用下さい

【完結】さようなら、婚約者様。私を騙していたあなたの顔など二度と見たくありません

ゆうき@初書籍化作品発売中
恋愛
婚約者とその家族に虐げられる日々を送っていたアイリーンは、赤ん坊の頃に森に捨てられていたところを、貧乏なのに拾って育ててくれた家族のために、つらい毎日を耐える日々を送っていた。 そんなアイリーンには、密かな夢があった。それは、世界的に有名な魔法学園に入学して勉強をし、宮廷魔術師になり、両親を楽させてあげたいというものだった。 婚約を結ぶ際に、両親を支援する約束をしていたアイリーンだったが、夢自体は諦めきれずに過ごしていたある日、別の女性と恋に落ちていた婚約者は、アイリーンなど体のいい使用人程度にしか思っておらず、支援も行っていないことを知る。 どういうことか問い詰めると、お前とは婚約破棄をすると言われてしまったアイリーンは、ついに我慢の限界に達し、婚約者に別れを告げてから婚約者の家を飛び出した。 実家に帰ってきたアイリーンは、唯一の知人で特別な男性であるエルヴィンから、とあることを提案される。 それは、特待生として魔法学園の編入試験を受けてみないかというものだった。 これは一人の少女が、夢を掴むために奮闘し、時には婚約者達の妨害に立ち向かいながら、幸せを手に入れる物語。 ☆すでに最終話まで執筆、予約投稿済みの作品となっております☆

今から婚約者に会いに行きます。〜私は運命の相手ではないから

毛蟹葵葉
恋愛
婚約者が王立学園の卒業を間近に控えていたある日。 ポーリーンのところに、婚約者の恋人だと名乗る女性がやってきた。 彼女は別れろ。と、一方的に迫り。 最後には暴言を吐いた。 「ああ、本当に嫌だわ。こんな田舎。肥溜めの臭いがするみたい。……貴女からも漂ってるわよ」  洗練された都会に住む自分の方がトリスタンにふさわしい。と、言わんばかりに彼女は微笑んだ。 「ねえ、卒業パーティーには来ないでね。恥をかくのは貴女よ。婚約破棄されてもまだ間に合うでしょう?早く相手を見つけたら?」 彼女が去ると、ポーリーンはある事を考えた。 ちゃんと、別れ話をしようと。 ポーリーンはこっそりと屋敷から抜け出して、婚約者のところへと向かった。

【完結】偽りの婚約のつもりが愛されていました

ユユ
恋愛
可憐な妹に何度も婚約者を奪われて生きてきた。 だけど私は子爵家の跡継ぎ。 騒ぎ立てることはしなかった。 子爵家の仕事を手伝い、婚約者を持つ令嬢として 慎ましく振る舞ってきた。 五人目の婚約者と妹は体を重ねた。 妹は身籠った。 父は跡継ぎと婚約相手を妹に変えて 私を今更嫁に出すと言った。 全てを奪われた私はもう我慢を止めた。 * 作り話です。 * 短めの話にするつもりです * 暇つぶしにどうぞ

【完結】離婚しましょうね。だって貴方は貴族ですから

すだもみぢ
恋愛
伯爵のトーマスは「貴族なのだから」が口癖の夫。 伯爵家に嫁いできた、子爵家の娘のローデリアは結婚してから彼から貴族の心得なるものをみっちりと教わった。 「貴族の妻として夫を支えて、家のために働きなさい」 「貴族の妻として慎みある行動をとりなさい」 しかし俺は男だから何をしても許されると、彼自身は趣味に明け暮れ、いつしか滅多に帰ってこなくなる。 微笑んで、全てを受け入れて従ってきたローデリア。 ある日帰ってきた夫に、貞淑な妻はいつもの笑顔で切りだした。 「貴族ですから離婚しましょう。貴族ですから受け入れますよね?」 彼の望み通りに動いているはずの妻の無意識で無邪気な逆襲が始まる。 ※意図的なスカッはありません。あくまでも本人は無意識でやってます。

心の傷は癒えるもの?ええ。簡単に。

しゃーりん
恋愛
侯爵令嬢セラヴィは婚約者のトレッドから婚約を解消してほしいと言われた。 理由は他の女性を好きになってしまったから。 10年も婚約してきたのに、セラヴィよりもその女性を選ぶという。 意志の固いトレッドを見て、婚約解消を認めた。 ちょうど長期休暇に入ったことで学園でトレッドと顔を合わせずに済み、休暇明けまでに失恋の傷を癒しておくべきだと考えた友人ミンディーナが領地に誘ってくれた。 セラヴィと同じく婚約を解消した経験があるミンディーナの兄ライガーに話を聞いてもらっているうちに段々と心の傷は癒えていったというお話です。

愛しているなら何でもできる? どの口が言うのですか

風見ゆうみ
恋愛
「君のことは大好きだけど、そういうことをしたいとは思えないんだ」 初夜の晩、爵位を継いで伯爵になったばかりの夫、ロン様は私を寝室に置いて自分の部屋に戻っていった。 肉体的に結ばれることがないまま、3ヶ月が過ぎた頃、彼は私の妹を連れてきて言った。 「シェリル、落ち着いて聞いてほしい。ミシェルたちも僕たちと同じ状況らしいんだ。だから、夜だけパートナーを交換しないか?」 「お姉様が生んだ子供をわたしが育てて、わたしが生んだ子供をお姉様が育てれば血筋は途切れないわ」 そんな提案をされた私は、その場で離婚を申し出た。 でも、夫は絶対に別れたくないと離婚を拒み、両親や義両親も夫の味方だった。 ※独特の異世界の世界観であり、設定はゆるゆるで、ご都合主義です。 ※誤字脱字など見直して気を付けているつもりですが、やはりございます。申し訳ございません。教えていただけますと有り難いです。

処理中です...