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晩餐会。

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 白亜の王宮の敷地内。
 緑あふれる回廊のその中に、その目的地があった。

 外国からのお客様を招いたり、国内での重要な催しに使ったり。
 そんな建物、迎賓館。
 今夜の晩餐会も、歓迎式典も、こちらで執り行われることとなっている。
 まず本日は王族と関係貴族のみが招待されホストとして迎える晩餐会。
 そして明日は王国のほぼ全ての貴族家が参列することとなる歓迎式典、その後行われるパーティー。
 ベルクマール大公はただの外国使節ではなく帝国皇帝の名代としてこちらに訪れている。
 規模的には数十人規模の使節団ではあったけれど、もうすでに到着し迎賓館の上階にある宿泊施設に入っているという連絡はきていた。
 晩餐会には数名の護衛兼侍従を付き従えてくるだけで残りの人は宿泊部屋での食事になるらしい。それでも、迎賓館のシェフたちが腕によりをかけて作る料理だ。ちゃんとおもてなしできているといいな。なんてことを考えながらあたしは馬車に乗っていた。

 馬車回しに到着すると大勢の黒服の使用人の方たちが出迎えてくれた。
 先に降りたギディオン様が、さっとあたしに手を伸ばしてくれる。
 その手を取って周囲に軽く会釈を送りながら、真っ赤なベルベットの絨毯が敷き詰められた床に降りた。
 あたしは、といえば。
 本日はギディオン様に合わせて濃紺のドレス。ちょっと大人っぽいマーメイドラインで顔にはやっぱり濃紺のベールを被っている。
 近隣には、公式の場で女性がベールで顔を隠すことが常識となっている国もあるから、ギディオン様のパートナーとして今日初めてこうした席に出る女性がベールを被っていたとしてもその国出身だと思われ失礼には当たらない、というギディオン様の発案だ。
 髪は赤くしているしこれなら確かにあたしだとはバレないだろう。

 豪奢なシャンデリアが並ぶ廊下をしずしずと進み、ラウンジに着くともう何人かの方が到着しているのがわかる。
 国王夫妻、王太子夫妻はすでに宴席の間にいらっしゃるご様子。
 ジョアス様とニーアお姉様に会釈をし、あたしたちも宴席の間に入る。お席は末席。上席にお座りになっている国王陛下と王妃さま。王太子殿下とアデライア姉様に向かって礼をして席に着いてしばらく待った。

 この場に呼ばれているホスト側、いわばベルクマール大公をもてなす側として選ばれたのは基本王室と大公の血縁者であったから。
 他のこの国の貴族はこの場には居ない。まあ筆頭公爵家としてお父様も出席予定ではあったし、パトリック様もあたしの夫でありこの国の公爵でもある立場で出席するとあって、そういう意味では帝国の使節を歓迎するといった体も保たれている。
 ベルクマール侯爵家から侯爵夫妻に嫡男。リンデンバーグ公爵家としては今回代理でお父様の弟、マルクス子爵夫妻がみえている。そして、パトリック・アルシェード公爵と、あれはもしかしてマリアンネ? 髪は白銀、カツラだろうか? お顔は濃いお化粧で美人には見えているけどもとのお顔の片鱗もない感じ。
 もしかしてあれ、あたしに変装しているのだろうか?
 だとしたら滑稽だ。あたしはここにいるのに。そしてそのことは彼ら以外にはすでに知らせてある。大公様にも、だ。

 最後に入場したのはベルクマール大公と奥様。貫禄のある大公はジョアス様のお兄様とは思えないくらい恰幅がよく、威厳を纏っていらっしゃった。
 ってこんなこと言うとジョアス様に悪いかな?
 研究に篭り切りのジョアス様といえば、スレンダーといえばよく聞こえるけれどほんとうにひょろっとした方で、背は高いから余計にそんな不健康な体型に見えてしまう。
 それでも、ニーアお姉様と並ぶジョアスさまは、なんだかとてもお姉様の事を大切に思っているご様子で。始終寄り添って仲睦まじく見えた。
 あたしは思わず隣にいるギディオン様を覗き見る。
 そこにはギディオン様の優しい瞳があって……。
 彼も、あたしのことを常に気遣ってくれているのがわかる。それがなんだかとても嬉しかった。


 全員が揃ったところで国王陛下と大公閣下の挨拶の応酬があって、会が始まった。
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