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対決、お父様。
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「お父さんと話をする?」
「ええ、ギディオン様お願いします。わたくしをこっそり王都のリンデンバーグ家に連れて行って欲しいのです」
「そうか。どういう心境の変化があったのかはわからないけど、君がそうしたいのなら私は協力を惜しまないよ。それに、今、君の父、アドルフ・リンデンバーグ公爵は病気を理由に表社会に顔を出して居ないらしい。君が見舞ってあげるのがいちばんの薬だとも思うしね」
「え? お父様がご病気!?」
「ああ。どんな病なのか病状がどうなのか、一切外に情報が出てこないらしい。王宮でも心配されているそうだ。ああこれは姉さん情報だけど」
ああ、そっか。
アデライア姉様は王太子妃だから、王宮の情報も聞けるのね。
姉様元気かな。シャルル王子ももうだいぶ大きくなったかしら。お会いしたいな。
それこそミスターマロンのハニーリングを召し上がって貰いたいな。きっとシャルル王子なら、美味しいって気に入ってくれると思うけど。
に、しても。
あんなに丈夫で矍鑠としてらしたお父様がご病気だなんて……。
アランさんがモーリスさんに会いにいくという話を聞いて。
あたしにも少しだけ心境の変化があった。
そう。このままじゃ、結局あたしはずっと中途半端だ。
パトリック様と会いたくない、話もしたくないのは今でもそう、変わらない。だけど。
ちゃんと離婚しないまま逃げ回るのも無責任にも思えて。
このままじゃ、もしかしたらギディオン様にもベルクマール家にも迷惑をかけることにもなりかねない。
だから。
お父様に直訴しよう。
わかってもらえないって、そう諦めるんじゃなくって。
わかってもらえるよう、言葉を尽くしてみよう。
そう、決めたのだ。
アランさんに勇気を貰った、のかな。
家出をして、そのまま離婚をして貰えたのならそれでよかった。
パトリック様なんてマリアンネにのしをつけてあげたのに。
どうやらそうならなかったってことは、マリアンネにとっても不幸なことだろう。
だから。
「よし。それなら私もついていく」
「え? そんな、ギディオンさま」
「君をリンデンバーグ邸まで運ぶだけでは心配だ。そのまま軟禁されたら嫌だろう? だから私も、というか、私がアドルフ公爵の見舞いだと言ってリンデンバーグ家に乗り込むことにする。なあに、姉の王太子妃の名代だといえば玄関先で追い返されたりはしないだろうさ。君は私の付き添いの侍女のふりをして屋敷に入り、こっそりお父さんの部屋に向かえばいい。同じ屋敷にいれば君の魔力紋を私が見失うことはないから安心して」
♢ ♢ ♢
「じゃぁわたくしもご一緒に行きますわ」
と、そうノリノリで話すニーアお姉様。
ああ、でも?
「そうだね。ニーアならベルクマール侯爵家まで一瞬で跳べるしね」
「ええ、まあギディオンはちょっと邪魔だけど、セリーヌなら軽いしなんてこともないわね」
そう腕組みするお姉様。
「ねえ、セリーヌ。侯爵家に着いたら御一緒にお風呂入りましょうね。ピカピカに磨いて差し上げますわ」
え? え?
「そうだね。せっかくお父様にお会いするんだからちゃんと元のセリーヌに戻っておかないとね」
なんだかセリフに釈然としないものを感じつつ、あたしはお姉様にぎゅっと抱きつかれ。
そのままグルンと空間が反転するのを感じた。
駐屯地のギディオン様の執務室から、ベルクマール侯爵邸のロビーまで。
一瞬で移動したのだった。
「おかえりなさいませ奥様。おかえりなさいませぼっちゃま」
急に跳ぶと驚かせるからって先に魔具で連絡してあったって言ってたけど……。
え、え? どういうこと? 奥様? マリサさん、確かにそう言ったよね……。
と言うことはニーアお姉様って、ギディオン様の奥様、だったの……?
「なかなか帰ってこれなくて悪いわね。変わりはない?」
「ええ、奥様。旦那様もギディオン様もお仕事漬けでお忙しいようで、お屋敷には滅多にお顔を出してくださりませんし」
「あの人も? もうしょうがないわね。また研究漬けで魔道士の塔に閉じこもっているのね。まあいいわ。この国じゃあの人以上の魔具の研究家は居ないのだし、せいぜい頑張ってもらわないとね」
と、しょうがないわねって顔をしてすぐ思い返した様子のお姉様。
「ああでも今度の晩餐会には引っ張ってでも参加させないとだわ。なんてったってお兄様がこられるのに、弟のあの人が顔を出さないわけに行かないでしょう? あなたたちもジョアス様がお帰りになったら念を押しておいてくださいね」
えええ?
どういう、こと……。
「さあセリーヌ。さっさとお風呂に入っちゃいましょう。ゆっくり身体をあっためて綺麗にして。あのアドルフと対決するならそれくらい気合を入れないとね」
そう言いあたしの手を引っ張って。
勝手知ったる道と言わんばかりに迷わず浴室にまで連れていってくれたニーアお姉様。
マリサさんも付いてきたからそれこそあっという間に服をひん剥かれ、あたしは浴槽に沈められたのだった。
「ええ、ギディオン様お願いします。わたくしをこっそり王都のリンデンバーグ家に連れて行って欲しいのです」
「そうか。どういう心境の変化があったのかはわからないけど、君がそうしたいのなら私は協力を惜しまないよ。それに、今、君の父、アドルフ・リンデンバーグ公爵は病気を理由に表社会に顔を出して居ないらしい。君が見舞ってあげるのがいちばんの薬だとも思うしね」
「え? お父様がご病気!?」
「ああ。どんな病なのか病状がどうなのか、一切外に情報が出てこないらしい。王宮でも心配されているそうだ。ああこれは姉さん情報だけど」
ああ、そっか。
アデライア姉様は王太子妃だから、王宮の情報も聞けるのね。
姉様元気かな。シャルル王子ももうだいぶ大きくなったかしら。お会いしたいな。
それこそミスターマロンのハニーリングを召し上がって貰いたいな。きっとシャルル王子なら、美味しいって気に入ってくれると思うけど。
に、しても。
あんなに丈夫で矍鑠としてらしたお父様がご病気だなんて……。
アランさんがモーリスさんに会いにいくという話を聞いて。
あたしにも少しだけ心境の変化があった。
そう。このままじゃ、結局あたしはずっと中途半端だ。
パトリック様と会いたくない、話もしたくないのは今でもそう、変わらない。だけど。
ちゃんと離婚しないまま逃げ回るのも無責任にも思えて。
このままじゃ、もしかしたらギディオン様にもベルクマール家にも迷惑をかけることにもなりかねない。
だから。
お父様に直訴しよう。
わかってもらえないって、そう諦めるんじゃなくって。
わかってもらえるよう、言葉を尽くしてみよう。
そう、決めたのだ。
アランさんに勇気を貰った、のかな。
家出をして、そのまま離婚をして貰えたのならそれでよかった。
パトリック様なんてマリアンネにのしをつけてあげたのに。
どうやらそうならなかったってことは、マリアンネにとっても不幸なことだろう。
だから。
「よし。それなら私もついていく」
「え? そんな、ギディオンさま」
「君をリンデンバーグ邸まで運ぶだけでは心配だ。そのまま軟禁されたら嫌だろう? だから私も、というか、私がアドルフ公爵の見舞いだと言ってリンデンバーグ家に乗り込むことにする。なあに、姉の王太子妃の名代だといえば玄関先で追い返されたりはしないだろうさ。君は私の付き添いの侍女のふりをして屋敷に入り、こっそりお父さんの部屋に向かえばいい。同じ屋敷にいれば君の魔力紋を私が見失うことはないから安心して」
♢ ♢ ♢
「じゃぁわたくしもご一緒に行きますわ」
と、そうノリノリで話すニーアお姉様。
ああ、でも?
「そうだね。ニーアならベルクマール侯爵家まで一瞬で跳べるしね」
「ええ、まあギディオンはちょっと邪魔だけど、セリーヌなら軽いしなんてこともないわね」
そう腕組みするお姉様。
「ねえ、セリーヌ。侯爵家に着いたら御一緒にお風呂入りましょうね。ピカピカに磨いて差し上げますわ」
え? え?
「そうだね。せっかくお父様にお会いするんだからちゃんと元のセリーヌに戻っておかないとね」
なんだかセリフに釈然としないものを感じつつ、あたしはお姉様にぎゅっと抱きつかれ。
そのままグルンと空間が反転するのを感じた。
駐屯地のギディオン様の執務室から、ベルクマール侯爵邸のロビーまで。
一瞬で移動したのだった。
「おかえりなさいませ奥様。おかえりなさいませぼっちゃま」
急に跳ぶと驚かせるからって先に魔具で連絡してあったって言ってたけど……。
え、え? どういうこと? 奥様? マリサさん、確かにそう言ったよね……。
と言うことはニーアお姉様って、ギディオン様の奥様、だったの……?
「なかなか帰ってこれなくて悪いわね。変わりはない?」
「ええ、奥様。旦那様もギディオン様もお仕事漬けでお忙しいようで、お屋敷には滅多にお顔を出してくださりませんし」
「あの人も? もうしょうがないわね。また研究漬けで魔道士の塔に閉じこもっているのね。まあいいわ。この国じゃあの人以上の魔具の研究家は居ないのだし、せいぜい頑張ってもらわないとね」
と、しょうがないわねって顔をしてすぐ思い返した様子のお姉様。
「ああでも今度の晩餐会には引っ張ってでも参加させないとだわ。なんてったってお兄様がこられるのに、弟のあの人が顔を出さないわけに行かないでしょう? あなたたちもジョアス様がお帰りになったら念を押しておいてくださいね」
えええ?
どういう、こと……。
「さあセリーヌ。さっさとお風呂に入っちゃいましょう。ゆっくり身体をあっためて綺麗にして。あのアドルフと対決するならそれくらい気合を入れないとね」
そう言いあたしの手を引っ張って。
勝手知ったる道と言わんばかりに迷わず浴室にまで連れていってくれたニーアお姉様。
マリサさんも付いてきたからそれこそあっという間に服をひん剥かれ、あたしは浴槽に沈められたのだった。
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