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元気の出るドーナツ。
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出来上がった新しいパン生地のドーナツは好評で。
ふわっふわなハニーリングはおくちの中でとろけるようで。
シュガーリングもくちあたりがとってもいいドーナツに仕上がった。
クリームドーナツにジャムドーナツも、白クリームカスタードクリーム、いちごジャムリンゴジャムブドウジャムと全部で五種類のラインナップ。
厨房内の冷蔵庫にアイシングチューブに詰めた状態で用意してあるクリームたち。
トレイに並んだシュガーでまぶした空のドーナツに、注文があった時にその分だけ注入するからちょっと手間だけどさっと注入するだけなら一個数秒しか掛からない。
穴あけでサクサクサクと穴をあけ、そこにさっさっさっと絞っていくだけ。
お客さんをお待たせはしちゃうけど、そこはそれ。
新鮮さを売りにしてるのも好評で受け入れてもらえた感じ。
ドーナツの型で抜いた残った生地は、もう一回まとめてこねて最後のパンにする。
発酵もかなり進んだ後の生地だから出来上がりも固くなっちゃうけど、それを活かしたコーヒーロール。
まとめてこねて薄く伸ばし、そこにシナモンの粉を振りかける。
(アランさんが棚から出してきた時には驚いた。シナモンがあるのなら粉糖と混ぜてシナモンシュガーが作れるのに。シナモンドーナツ、けっこう美味しいので今後ラインナップに入れることも検討してもらおう)
そしてその生地をぐるぐるっと巻いてロール状に。
あとはベンチカッターでカットしたら巻いた渦巻きが見えるように手のひらでぎゅっと潰して揚げ網の上に乗せて最後の発酵をさせる。
いい感じに膨らんだら油で揚げて、最後はグレーズに漬け出来上がり。
え? なんでコーヒーロールって名前かって? シナモンロールじゃ無いのかって?
それはこのシナモンの香りと甘いグレーズコーティングが、とってもコーヒーに合うから。
昔々前世のあたしが好きだったドーナツ。
ほとんど菓子パンなイメージだけどね。焼いたらパン、揚げたらドーナツ。それだけの違いかも。
食感も変わるけど。
まあお店ではシナモンロールって名前で呼んでいる。
だってミスターマロンにはコーヒーがメニューに無いもの。
やっぱりここではコーヒー豆はなかなか手に入りにくい、贅沢な飲み物らしいし。
ギディオン様もそしてなんとニーアお姉様もお店に来てくださって、この新しいドーナツを食べていってくれた。
ギディオン様はやっぱりふわふわのハニーリングがお気に召したようで、一度に三個もぺろっと食べてしまった。
ニーアお姉様は白クリームを気に入ってくださった。
「この天使のようなふわっとしたクリームと、口当たりのいいドーナツ生地が合わさって絶品なお味ですわ」
そう微笑みながらおっしゃるお姉様。
喜んでもらえてほんとうに嬉しい。
お姉様はもう少しこちらに居られることになったそう。ベルクマール大公がいらっしゃるあの例の歓迎式典や晩餐会にも御出席されるのだそうで、今回の事後処理を片付けてからもどうせならとこちらにしばらく滞在することになったのだとか。
お別れしなくて済んだのは嬉しい。
だけど……。
ギディオン様とニーアお姉様。
お二人で並ぶとほんとすごく絵になる。
ニーアお姉様の方が少し年上なんだろうけど、そんなこと関係がないくらい仲も良さそうで。
仲睦まじい二人を見てるとちょっとだけ、心の奥がちくっと痛む。
なんでだかわからないけど。
どうしちゃったのかな……。あたし。
二人とも大好きなのに、な……。
ジャン・ロックの使いは日に三度店に現れ根こそぎドーナツを持っていく。
だからお店にはもうハニードーナツとシュガードーナツしか並べるのを辞めていた。
手間のかかるローストナッツとかは作るだけ無駄になって勿体無いし。
その代わりに置いてあるハニーリングやシュガーリング、シナモンロールなんかはパンと認識されたのか、彼らは持って行かなかった。
ジャンがあれから二度とお店に現れなかったのも幸いしたのだろう。
クリームドーナツたちはそもそも店頭に出してないから目にも止まってない様子。
あたしが頑張って書いたイラストと説明書きのボード、そして口コミでお客さんには広まっていった。
そういえば、「元気の出るドーナツ」って評判が立って、口コミでお店にきてくれるお客さんも増えている。
騎士団の方たちが広めてくれたのかな?
そうやって地道に販売個数も増えて、ジャンに持って行かれる分を差し引いてもちゃんと利益がでるようになった頃……。
「なあセレナちゃん。オレ、ちょっとモーリス爺さんに会ってくるわ」
と、唐突にアランさんがそう言った。
ふわっふわなハニーリングはおくちの中でとろけるようで。
シュガーリングもくちあたりがとってもいいドーナツに仕上がった。
クリームドーナツにジャムドーナツも、白クリームカスタードクリーム、いちごジャムリンゴジャムブドウジャムと全部で五種類のラインナップ。
厨房内の冷蔵庫にアイシングチューブに詰めた状態で用意してあるクリームたち。
トレイに並んだシュガーでまぶした空のドーナツに、注文があった時にその分だけ注入するからちょっと手間だけどさっと注入するだけなら一個数秒しか掛からない。
穴あけでサクサクサクと穴をあけ、そこにさっさっさっと絞っていくだけ。
お客さんをお待たせはしちゃうけど、そこはそれ。
新鮮さを売りにしてるのも好評で受け入れてもらえた感じ。
ドーナツの型で抜いた残った生地は、もう一回まとめてこねて最後のパンにする。
発酵もかなり進んだ後の生地だから出来上がりも固くなっちゃうけど、それを活かしたコーヒーロール。
まとめてこねて薄く伸ばし、そこにシナモンの粉を振りかける。
(アランさんが棚から出してきた時には驚いた。シナモンがあるのなら粉糖と混ぜてシナモンシュガーが作れるのに。シナモンドーナツ、けっこう美味しいので今後ラインナップに入れることも検討してもらおう)
そしてその生地をぐるぐるっと巻いてロール状に。
あとはベンチカッターでカットしたら巻いた渦巻きが見えるように手のひらでぎゅっと潰して揚げ網の上に乗せて最後の発酵をさせる。
いい感じに膨らんだら油で揚げて、最後はグレーズに漬け出来上がり。
え? なんでコーヒーロールって名前かって? シナモンロールじゃ無いのかって?
それはこのシナモンの香りと甘いグレーズコーティングが、とってもコーヒーに合うから。
昔々前世のあたしが好きだったドーナツ。
ほとんど菓子パンなイメージだけどね。焼いたらパン、揚げたらドーナツ。それだけの違いかも。
食感も変わるけど。
まあお店ではシナモンロールって名前で呼んでいる。
だってミスターマロンにはコーヒーがメニューに無いもの。
やっぱりここではコーヒー豆はなかなか手に入りにくい、贅沢な飲み物らしいし。
ギディオン様もそしてなんとニーアお姉様もお店に来てくださって、この新しいドーナツを食べていってくれた。
ギディオン様はやっぱりふわふわのハニーリングがお気に召したようで、一度に三個もぺろっと食べてしまった。
ニーアお姉様は白クリームを気に入ってくださった。
「この天使のようなふわっとしたクリームと、口当たりのいいドーナツ生地が合わさって絶品なお味ですわ」
そう微笑みながらおっしゃるお姉様。
喜んでもらえてほんとうに嬉しい。
お姉様はもう少しこちらに居られることになったそう。ベルクマール大公がいらっしゃるあの例の歓迎式典や晩餐会にも御出席されるのだそうで、今回の事後処理を片付けてからもどうせならとこちらにしばらく滞在することになったのだとか。
お別れしなくて済んだのは嬉しい。
だけど……。
ギディオン様とニーアお姉様。
お二人で並ぶとほんとすごく絵になる。
ニーアお姉様の方が少し年上なんだろうけど、そんなこと関係がないくらい仲も良さそうで。
仲睦まじい二人を見てるとちょっとだけ、心の奥がちくっと痛む。
なんでだかわからないけど。
どうしちゃったのかな……。あたし。
二人とも大好きなのに、な……。
ジャン・ロックの使いは日に三度店に現れ根こそぎドーナツを持っていく。
だからお店にはもうハニードーナツとシュガードーナツしか並べるのを辞めていた。
手間のかかるローストナッツとかは作るだけ無駄になって勿体無いし。
その代わりに置いてあるハニーリングやシュガーリング、シナモンロールなんかはパンと認識されたのか、彼らは持って行かなかった。
ジャンがあれから二度とお店に現れなかったのも幸いしたのだろう。
クリームドーナツたちはそもそも店頭に出してないから目にも止まってない様子。
あたしが頑張って書いたイラストと説明書きのボード、そして口コミでお客さんには広まっていった。
そういえば、「元気の出るドーナツ」って評判が立って、口コミでお店にきてくれるお客さんも増えている。
騎士団の方たちが広めてくれたのかな?
そうやって地道に販売個数も増えて、ジャンに持って行かれる分を差し引いてもちゃんと利益がでるようになった頃……。
「なあセレナちゃん。オレ、ちょっとモーリス爺さんに会ってくるわ」
と、唐突にアランさんがそう言った。
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