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ドラゴン。
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光が溢れ漆黒の液面に降り注ぐ。
繋いだ手からお姉様の力があたしの中にも流れ込み、ぐるぐると体の中を巡りまた流れ出ていく。
多分、お姉様にもあたしから出た魔力が流れ込んでいるのだろう。
光の循環が熾り、そしてそれはどんどんと増幅していく。
ぐるぐると巡るマナからあぶれた力が、月の光に溶け漆黒に降り注いで。
心のゲート、っていうものがある。
心の、魂の奥底にずっと潜っていくと、ふっと底に穴があるのがわかる。
それがゲート。
魂の中に蓄えられたマナを体の外に出すのもここ。
魔法を使うときにもこのゲートからちゃんとマナを出すことができなければ、せっかくギアたちが近くにいても力を発揮することもできない。
あたしの場合、きっとこのゲートが不安定だったんだなって、そう自覚した。
っていうか、こんなふうにお姉様とゲートを繋いでいるとよくわかる。
いかにお姉様のゲートが大きく安定しているのかってこと。
不安定なあたしを導くように流れるお姉様の力。
ああ。心地いい。
お姉様のマナも、ギディオン様と一緒だった。
心地よくて優しくて。
あたしはそんなお姉様のマナに溶けてしまいそうになっていく……。
「もういいわ。魔溜りは消え去ったから」
ハッと気がつくとお姉様がこちらをじっと見ていた。優しいそのお顔。なんだか少しお母様みたいな表情にも見える。っていうか、お姉様ってお母様と似ている?
「あたし……」
「まだちょっとマナ酔いしてる? ごめんね。でもありがとう。貴女のおかげで次元の裂け目までもが消え去ったわ」
お姉様、そう言うとギディオン様に向き直った。
「さあ、あとは貴方の出番よギディオン。あんな魔獣たちなんか薙ぎ払ってしまって」
「ああ。任せておけニーア。ジーニアス! 騎士団撤退だ! 距離をとれ!!」
ギディオン様、左手をまっすぐ魔獣の方向に伸ばす。
片手盾のサイズの竜の鱗が四枚出現し、彼の左手を覆うように被さった。
まるで、左手に大砲が繋がったかのような、そんな光景の、その中心にマナが落ちる。
キュルキュル、キュルキュルと音を立てマナの粒子が加速していく。
これって!!
「黒褐色の嵐!!」
漆黒の粒子が嵐となって魔獣たちに襲いかかる。
その激しさと裏腹に、さらさらとまるで砂の彫像が崩れるかのように、崩壊していく魔獣たち。
「魔獣たちが……」
粒子となって消え去っていく魔獣たちを見つめながら思わず声が出ていた。
それでも。
踏みとどまっているものがいる。
中心にいた、ひときわ大きな個体。
あたしをブレスで吹き飛ばした、あの。
「ああ、アースドラゴンか」
ギディオン様がそう魔獣の名を呼んだ。
伝説の竜種、七色竜は神の如く強大な力を持つ。
それはギディオン様が使ったギア・ブラドの権能を持つ、黒竜ブラドのように。
災厄竜とも言われるブラドはその計り知れない力ゆえに、ひとたび暴れれば人の世界など簡単に崩壊してしまうと言われるほどだ。
黒褐色の嵐も黒竜ブラドのブレスの一つ。
それを擬似的にではあるけれど、ギディオン様はその権能を行使することが可能なのだろう。
そんな伝説の竜種と見かけは似ているけれど、アースドラゴンは魔獣の一種。
竜種と比較にはなるわけはなかったけれど、その力はかなり強大だった。
「ドラゴニア!!」
掛け声と共にギディオン様の体が黒褐色の粒子によって覆われていく。
ギディオン様、その体を巨大なドラゴンの姿に変え、アースドラゴンに襲いかかった。
繋いだ手からお姉様の力があたしの中にも流れ込み、ぐるぐると体の中を巡りまた流れ出ていく。
多分、お姉様にもあたしから出た魔力が流れ込んでいるのだろう。
光の循環が熾り、そしてそれはどんどんと増幅していく。
ぐるぐると巡るマナからあぶれた力が、月の光に溶け漆黒に降り注いで。
心のゲート、っていうものがある。
心の、魂の奥底にずっと潜っていくと、ふっと底に穴があるのがわかる。
それがゲート。
魂の中に蓄えられたマナを体の外に出すのもここ。
魔法を使うときにもこのゲートからちゃんとマナを出すことができなければ、せっかくギアたちが近くにいても力を発揮することもできない。
あたしの場合、きっとこのゲートが不安定だったんだなって、そう自覚した。
っていうか、こんなふうにお姉様とゲートを繋いでいるとよくわかる。
いかにお姉様のゲートが大きく安定しているのかってこと。
不安定なあたしを導くように流れるお姉様の力。
ああ。心地いい。
お姉様のマナも、ギディオン様と一緒だった。
心地よくて優しくて。
あたしはそんなお姉様のマナに溶けてしまいそうになっていく……。
「もういいわ。魔溜りは消え去ったから」
ハッと気がつくとお姉様がこちらをじっと見ていた。優しいそのお顔。なんだか少しお母様みたいな表情にも見える。っていうか、お姉様ってお母様と似ている?
「あたし……」
「まだちょっとマナ酔いしてる? ごめんね。でもありがとう。貴女のおかげで次元の裂け目までもが消え去ったわ」
お姉様、そう言うとギディオン様に向き直った。
「さあ、あとは貴方の出番よギディオン。あんな魔獣たちなんか薙ぎ払ってしまって」
「ああ。任せておけニーア。ジーニアス! 騎士団撤退だ! 距離をとれ!!」
ギディオン様、左手をまっすぐ魔獣の方向に伸ばす。
片手盾のサイズの竜の鱗が四枚出現し、彼の左手を覆うように被さった。
まるで、左手に大砲が繋がったかのような、そんな光景の、その中心にマナが落ちる。
キュルキュル、キュルキュルと音を立てマナの粒子が加速していく。
これって!!
「黒褐色の嵐!!」
漆黒の粒子が嵐となって魔獣たちに襲いかかる。
その激しさと裏腹に、さらさらとまるで砂の彫像が崩れるかのように、崩壊していく魔獣たち。
「魔獣たちが……」
粒子となって消え去っていく魔獣たちを見つめながら思わず声が出ていた。
それでも。
踏みとどまっているものがいる。
中心にいた、ひときわ大きな個体。
あたしをブレスで吹き飛ばした、あの。
「ああ、アースドラゴンか」
ギディオン様がそう魔獣の名を呼んだ。
伝説の竜種、七色竜は神の如く強大な力を持つ。
それはギディオン様が使ったギア・ブラドの権能を持つ、黒竜ブラドのように。
災厄竜とも言われるブラドはその計り知れない力ゆえに、ひとたび暴れれば人の世界など簡単に崩壊してしまうと言われるほどだ。
黒褐色の嵐も黒竜ブラドのブレスの一つ。
それを擬似的にではあるけれど、ギディオン様はその権能を行使することが可能なのだろう。
そんな伝説の竜種と見かけは似ているけれど、アースドラゴンは魔獣の一種。
竜種と比較にはなるわけはなかったけれど、その力はかなり強大だった。
「ドラゴニア!!」
掛け声と共にギディオン様の体が黒褐色の粒子によって覆われていく。
ギディオン様、その体を巨大なドラゴンの姿に変え、アースドラゴンに襲いかかった。
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