35 / 74
ドラゴン。
しおりを挟む
光が溢れ漆黒の液面に降り注ぐ。
繋いだ手からお姉様の力があたしの中にも流れ込み、ぐるぐると体の中を巡りまた流れ出ていく。
多分、お姉様にもあたしから出た魔力が流れ込んでいるのだろう。
光の循環が熾り、そしてそれはどんどんと増幅していく。
ぐるぐると巡るマナからあぶれた力が、月の光に溶け漆黒に降り注いで。
心のゲート、っていうものがある。
心の、魂の奥底にずっと潜っていくと、ふっと底に穴があるのがわかる。
それがゲート。
魂の中に蓄えられたマナを体の外に出すのもここ。
魔法を使うときにもこのゲートからちゃんとマナを出すことができなければ、せっかくギアたちが近くにいても力を発揮することもできない。
あたしの場合、きっとこのゲートが不安定だったんだなって、そう自覚した。
っていうか、こんなふうにお姉様とゲートを繋いでいるとよくわかる。
いかにお姉様のゲートが大きく安定しているのかってこと。
不安定なあたしを導くように流れるお姉様の力。
ああ。心地いい。
お姉様のマナも、ギディオン様と一緒だった。
心地よくて優しくて。
あたしはそんなお姉様のマナに溶けてしまいそうになっていく……。
「もういいわ。魔溜りは消え去ったから」
ハッと気がつくとお姉様がこちらをじっと見ていた。優しいそのお顔。なんだか少しお母様みたいな表情にも見える。っていうか、お姉様ってお母様と似ている?
「あたし……」
「まだちょっとマナ酔いしてる? ごめんね。でもありがとう。貴女のおかげで次元の裂け目までもが消え去ったわ」
お姉様、そう言うとギディオン様に向き直った。
「さあ、あとは貴方の出番よギディオン。あんな魔獣たちなんか薙ぎ払ってしまって」
「ああ。任せておけニーア。ジーニアス! 騎士団撤退だ! 距離をとれ!!」
ギディオン様、左手をまっすぐ魔獣の方向に伸ばす。
片手盾のサイズの竜の鱗が四枚出現し、彼の左手を覆うように被さった。
まるで、左手に大砲が繋がったかのような、そんな光景の、その中心にマナが落ちる。
キュルキュル、キュルキュルと音を立てマナの粒子が加速していく。
これって!!
「黒褐色の嵐!!」
漆黒の粒子が嵐となって魔獣たちに襲いかかる。
その激しさと裏腹に、さらさらとまるで砂の彫像が崩れるかのように、崩壊していく魔獣たち。
「魔獣たちが……」
粒子となって消え去っていく魔獣たちを見つめながら思わず声が出ていた。
それでも。
踏みとどまっているものがいる。
中心にいた、ひときわ大きな個体。
あたしをブレスで吹き飛ばした、あの。
「ああ、アースドラゴンか」
ギディオン様がそう魔獣の名を呼んだ。
伝説の竜種、七色竜は神の如く強大な力を持つ。
それはギディオン様が使ったギア・ブラドの権能を持つ、黒竜ブラドのように。
災厄竜とも言われるブラドはその計り知れない力ゆえに、ひとたび暴れれば人の世界など簡単に崩壊してしまうと言われるほどだ。
黒褐色の嵐も黒竜ブラドのブレスの一つ。
それを擬似的にではあるけれど、ギディオン様はその権能を行使することが可能なのだろう。
そんな伝説の竜種と見かけは似ているけれど、アースドラゴンは魔獣の一種。
竜種と比較にはなるわけはなかったけれど、その力はかなり強大だった。
「ドラゴニア!!」
掛け声と共にギディオン様の体が黒褐色の粒子によって覆われていく。
ギディオン様、その体を巨大なドラゴンの姿に変え、アースドラゴンに襲いかかった。
繋いだ手からお姉様の力があたしの中にも流れ込み、ぐるぐると体の中を巡りまた流れ出ていく。
多分、お姉様にもあたしから出た魔力が流れ込んでいるのだろう。
光の循環が熾り、そしてそれはどんどんと増幅していく。
ぐるぐると巡るマナからあぶれた力が、月の光に溶け漆黒に降り注いで。
心のゲート、っていうものがある。
心の、魂の奥底にずっと潜っていくと、ふっと底に穴があるのがわかる。
それがゲート。
魂の中に蓄えられたマナを体の外に出すのもここ。
魔法を使うときにもこのゲートからちゃんとマナを出すことができなければ、せっかくギアたちが近くにいても力を発揮することもできない。
あたしの場合、きっとこのゲートが不安定だったんだなって、そう自覚した。
っていうか、こんなふうにお姉様とゲートを繋いでいるとよくわかる。
いかにお姉様のゲートが大きく安定しているのかってこと。
不安定なあたしを導くように流れるお姉様の力。
ああ。心地いい。
お姉様のマナも、ギディオン様と一緒だった。
心地よくて優しくて。
あたしはそんなお姉様のマナに溶けてしまいそうになっていく……。
「もういいわ。魔溜りは消え去ったから」
ハッと気がつくとお姉様がこちらをじっと見ていた。優しいそのお顔。なんだか少しお母様みたいな表情にも見える。っていうか、お姉様ってお母様と似ている?
「あたし……」
「まだちょっとマナ酔いしてる? ごめんね。でもありがとう。貴女のおかげで次元の裂け目までもが消え去ったわ」
お姉様、そう言うとギディオン様に向き直った。
「さあ、あとは貴方の出番よギディオン。あんな魔獣たちなんか薙ぎ払ってしまって」
「ああ。任せておけニーア。ジーニアス! 騎士団撤退だ! 距離をとれ!!」
ギディオン様、左手をまっすぐ魔獣の方向に伸ばす。
片手盾のサイズの竜の鱗が四枚出現し、彼の左手を覆うように被さった。
まるで、左手に大砲が繋がったかのような、そんな光景の、その中心にマナが落ちる。
キュルキュル、キュルキュルと音を立てマナの粒子が加速していく。
これって!!
「黒褐色の嵐!!」
漆黒の粒子が嵐となって魔獣たちに襲いかかる。
その激しさと裏腹に、さらさらとまるで砂の彫像が崩れるかのように、崩壊していく魔獣たち。
「魔獣たちが……」
粒子となって消え去っていく魔獣たちを見つめながら思わず声が出ていた。
それでも。
踏みとどまっているものがいる。
中心にいた、ひときわ大きな個体。
あたしをブレスで吹き飛ばした、あの。
「ああ、アースドラゴンか」
ギディオン様がそう魔獣の名を呼んだ。
伝説の竜種、七色竜は神の如く強大な力を持つ。
それはギディオン様が使ったギア・ブラドの権能を持つ、黒竜ブラドのように。
災厄竜とも言われるブラドはその計り知れない力ゆえに、ひとたび暴れれば人の世界など簡単に崩壊してしまうと言われるほどだ。
黒褐色の嵐も黒竜ブラドのブレスの一つ。
それを擬似的にではあるけれど、ギディオン様はその権能を行使することが可能なのだろう。
そんな伝説の竜種と見かけは似ているけれど、アースドラゴンは魔獣の一種。
竜種と比較にはなるわけはなかったけれど、その力はかなり強大だった。
「ドラゴニア!!」
掛け声と共にギディオン様の体が黒褐色の粒子によって覆われていく。
ギディオン様、その体を巨大なドラゴンの姿に変え、アースドラゴンに襲いかかった。
215
お気に入りに追加
2,858
あなたにおすすめの小説
記憶を失くした彼女の手紙 消えてしまった完璧な令嬢と、王子の遅すぎた後悔の話
甘糖むい
恋愛
婚約者であるシェルニア公爵令嬢が記憶喪失となった。
王子はひっそりと喜んだ。これで愛するクロエ男爵令嬢と堂々と結婚できると。
その時、王子の元に一通の手紙が届いた。
そこに書かれていたのは3つの願いと1つの真実。
王子は絶望感に苛まれ後悔をする。

【完結】仰る通り、貴方の子ではありません
ユユ
恋愛
辛い悪阻と難産を経て産まれたのは
私に似た待望の男児だった。
なのに認められず、
不貞の濡れ衣を着せられ、
追い出されてしまった。
実家からも勘当され
息子と2人で生きていくことにした。
* 作り話です
* 暇つぶしにどうぞ
* 4万文字未満
* 完結保証付き
* 少し大人表現あり

【完結】偽りの婚約のつもりが愛されていました
ユユ
恋愛
可憐な妹に何度も婚約者を奪われて生きてきた。
だけど私は子爵家の跡継ぎ。
騒ぎ立てることはしなかった。
子爵家の仕事を手伝い、婚約者を持つ令嬢として
慎ましく振る舞ってきた。
五人目の婚約者と妹は体を重ねた。
妹は身籠った。
父は跡継ぎと婚約相手を妹に変えて
私を今更嫁に出すと言った。
全てを奪われた私はもう我慢を止めた。
* 作り話です。
* 短めの話にするつもりです
* 暇つぶしにどうぞ
婚約「解消」ではなく「破棄」ですか? いいでしょう、お受けしますよ?
ピコっぴ
恋愛
7歳の時から婚姻契約にある我が婚約者は、どんな努力をしても私に全く関心を見せなかった。
13歳の時、寄り添った夫婦になる事を諦めた。夜会のエスコートすらしてくれなくなったから。
16歳の現在、シャンパンゴールドの人形のような可愛らしい令嬢を伴って夜会に現れ、婚約破棄すると宣う婚約者。
そちらが歩み寄ろうともせず、無視を決め込んだ挙句に、王命での婚姻契約を一方的に「破棄」ですか?
ただ素直に「解消」すればいいものを⋯⋯
婚約者との関係を諦めていた私はともかく、まわりが怒り心頭、許してはくれないようです。
恋愛らしい恋愛小説が上手く書けず、試行錯誤中なのですが、一話あたり短めにしてあるので、サクッと読めるはず? デス🙇
お飾りの側妃ですね?わかりました。どうぞ私のことは放っといてください!
水川サキ
恋愛
クオーツ伯爵家の長女アクアは17歳のとき、王宮に側妃として迎えられる。
シルバークリス王国の新しい王シエルは戦闘能力がずば抜けており、戦の神(野蛮な王)と呼ばれている男。
緊張しながら迎えた謁見の日。
シエルから言われた。
「俺がお前を愛することはない」
ああ、そうですか。
結構です。
白い結婚大歓迎!
私もあなたを愛するつもりなど毛頭ありません。
私はただ王宮でひっそり楽しく過ごしたいだけなのです。

【完結】断罪された悪役令嬢は、全てを捨てる事にした
miniko
恋愛
悪役令嬢に生まれ変わったのだと気付いた時、私は既に王太子の婚約者になった後だった。
婚約回避は手遅れだったが、思いの外、彼と円満な関係を築く。
(ゲーム通りになるとは限らないのかも)
・・・とか思ってたら、学園入学後に状況は激変。
周囲に疎まれる様になり、まんまと卒業パーティーで断罪&婚約破棄のテンプレ展開。
馬鹿馬鹿しい。こんな国、こっちから捨ててやろう。
冤罪を晴らして、意気揚々と単身で出国しようとするのだが、ある人物に捕まって・・・。
強制力と言う名の運命に翻弄される私は、幸せになれるのか!?
※感想欄はネタバレあり/なし の振り分けをしていません。本編より先にお読みになる場合はご注意ください。

氷の貴婦人
羊
恋愛
ソフィは幸せな結婚を目の前に控えていた。弾んでいた心を打ち砕かれたのは、結婚相手のアトレーと姉がベッドに居る姿を見た時だった。
呆然としたまま結婚式の日を迎え、その日から彼女の心は壊れていく。
感情が麻痺してしまい、すべてがかすみ越しの出来事に思える。そして、あんなに好きだったアトレーを見ると吐き気をもよおすようになった。
毒の強めなお話で、大人向けテイストです。

もう、愛はいりませんから
さくたろう
恋愛
ローザリア王国公爵令嬢ルクレティア・フォルセティに、ある日突然、未来の記憶が蘇った。
王子リーヴァイの愛する人を殺害しようとした罪により投獄され、兄に差し出された毒を煽り死んだ記憶だ。それが未来の出来事だと確信したルクレティアは、そんな未来に怯えるが、その記憶のおかしさに気がつき、謎を探ることにする。そうしてやがて、ある人のひたむきな愛を知ることになる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる