「あなたのことはもう忘れることにします。 探さないでください」〜 お飾りの妻だなんてまっぴらごめんです!

友坂 悠

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 どうしよう。
 あたしにも何かできること……。


 陽はすでに落ちて、辺りは濃い赤紫に染まっている。
 魔獣の姿も見え辛くなって戦いにくくなっていく。
 それに。
 魔獣は倒されても倒されてもその屍を乗り越え騎士団に向かってくる。
 体力的にもきついはず。
 魔獣の攻撃を避けきれず怪我をする人も増えてきた。
 そういった人はすぐ他の人に庇われ後方に移動して回復ポーションを飲んで、そしてまた戦線に復帰する。
 そんな流れの中、まだ致命的な脱落者は出ていない様子だけど……。それも時間の問題だろう。

 うん。もう、ばれちゃってもかまうもんか。
 見てるだけなんてできるわけなかったよ!

「キュア、おねがい! 体力回復! 身体強化! そこにいる騎士様全員に!」

 魔法の名前なんか覚えてない。でも、うん、できるはず! そう確信する。
 ポーション作る時と一緒だもの。だから。

 金色の粒子が放たれ舞う。
 無数のギア・キュアたちが騎士団の団員たちに降りかかり、その身体に吸い込まれるように入っていく。

「お願い、キュア。頑張って、みなさま」

 そう呟くと次は。

 あたしは空に浮きながら位置を九十度変える。
 魔獣の群れと騎士団の相対する線上の真横まで移動したところで。

「ウオーターバレット!!」

 空中に無数の水流の槍を生み出し、それを一斉に放つ。
 荒れ狂う風に巻かれドリルのように回転する水流は、弾丸のように飛び出し魔獣たちの体を貫いていく。

 ギャオー!!
 そう断末魔をあげ倒れていく魔獣達に、騎士団の人たちも流石にこちらに気がついたのか、驚愕の表情を浮かべていた。
 うん、でも。
 魔獣の意識を逸らす事には成功した。

 圧が減ったのか、騎士団の攻撃が効いている。
 魔獣はどんどん後退していく。
 うん。これなら。

 もう一度攻撃しよう。
 今度は反対側からだ!

 あたしは漆黒の丘のようになった魔獣の群れを飛び越えて向こう側に渡ろうと、空を蹴った。


 なるべく高く、魔獣の攻撃が当たらない高さへ。
 魔獣の中には熱流のブレスを吐くものもいる。
 だからそれに狙われないような高さを飛んだつもりだった。

 え!?

 いきなり強く感じる魔素の気配。
 魔獣の中心に真っ赤な魔力が興る!
 そして。

 ドドドドドドッツ!!!

 ギディオン様のドラゴノバのような、そんな竜のブレスが一直線にあたしに向かって。

 避けられない!

 空中の、ちょうど頂点に上がったところを狙い撃たれるように放たれたそんなブレス。

 ああ、だめ。
 アウラ、お願い!

 あたしはその体にアウラの結界を強化し纏う。
 そのまま体を丸くして衝撃に備えた。
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