31 / 74
ドラゴン・ノバ!
しおりを挟む
キュイ
キュイ
あれは、怪鳥ラクラスの鳴き声だろうか。
魔物の一種ではあるけど、こうした森によく生息している鳥とトカゲの合いの子みたいな生き物だ。
まあそこまで脅威じゃない。
ただ、森に入る人を見つけるとああして声で周囲に知らせるたちの悪いトカゲだ。
騎士団は30数名ほど。馬ではこの森に入れないことから、皆重装備のまま歩いて進軍している。
あたしはそんな彼らの少し後ろを空中に浮かびながらついていく。
一応、アウラの結界で空気の壁を作り纏っていることで、周囲にはあたしの気配は漏れていないはず。
このまま騎士団が何事もなく魔獣を退治すればよし、危険になるのであれば手助けしたいと思って。
あたしの聖魔法はきっと彼らの役に立ってくれるはず。
ギディオン様のいう通り、あたしは実戦で攻撃魔法なんて使ったことはない。
多分、練習すればちゃんとできるようにはなるかもしれない。だけど、今は、時間がないもの。
アウラの壁、結界だって、上手く使えば彼らを守ることくらいできるはず。
アランさんを助けた時のような、あんな失敗はもうしない。
あれから夜な夜な少しずつだけどマナを放出する練習はしてきたんだから。
ギディオン様に連れられ空を飛んだ時だって、上手くできたもの。
だから、きっと。
大丈夫。
前方に大量の魔獣の気配。
一箇所に集まってくれているのは幸いだ。
はぐれ個体がいくつか騎士団と遭遇したけど、それは難なく退治できたみたい。
デッドボア。
ホーンドウルフ。
あ、オーガもいる。
小型の魔獣は少ないな。っていうか、あれだけの魔獣がひしめき合っていたら、体の小さな個体は大きい個体に喰われ魔力の足しになってしまうのかも。
必然的に残った個体は大型魔獣ばかりになっていく。そんな感じなのか。
魔素が充満している魔溜りは、もう少し奥にあるみたい。
だけど。
そろそろと。騎士団の目の前は魔獣の壁のようなもので塞がれ。
奥に、やっぱりとんでもないほどの魔力の塊があるのを感じる。
あれは……魔王?
ううん、違う。
もっと違う何か。
吹き荒ぶ魔素の嵐。
せめて、と、あたしは前方の風に干渉する。
騎士団の面々が直接魔素の嵐にあてられないように、上空に魔素を逃して。
戦端が開かれた。
ギディオン様がさっと先頭に立つ。
左腕を魔獣にむけ、興したマナを放った。
「ドラゴン・ノバ!!」
そう叫ぶ声が聞こえ、ギディオン様の前方が真っ赤な炎の嵐に包まれた。
その炎が戦闘開始の合図となった。
まずギディオン様の魔法で先頭の魔獣を薙ぎ払い、その後各個撃破に移る。
それが騎士団の作戦だったのだろう。
大きな魔法を使える魔道士部隊のようなものはどうやらいない。
魔法攻撃はもっぱらギディオン様の役目?
「ファイヤバレット!」
弾丸のように炎の塊を飛ばすギディオン様。
そして弱った敵を切り裂く騎士のヤイバ。
先制したことで最初のうちは騎士団有利にことを運んでいるようにも見えていた。
でも。
数に勝る魔獣の圧が、だんだんと大きくなっていく。
明らかに、押され始めているのがあたしにもわかってきた。
キュイ
あれは、怪鳥ラクラスの鳴き声だろうか。
魔物の一種ではあるけど、こうした森によく生息している鳥とトカゲの合いの子みたいな生き物だ。
まあそこまで脅威じゃない。
ただ、森に入る人を見つけるとああして声で周囲に知らせるたちの悪いトカゲだ。
騎士団は30数名ほど。馬ではこの森に入れないことから、皆重装備のまま歩いて進軍している。
あたしはそんな彼らの少し後ろを空中に浮かびながらついていく。
一応、アウラの結界で空気の壁を作り纏っていることで、周囲にはあたしの気配は漏れていないはず。
このまま騎士団が何事もなく魔獣を退治すればよし、危険になるのであれば手助けしたいと思って。
あたしの聖魔法はきっと彼らの役に立ってくれるはず。
ギディオン様のいう通り、あたしは実戦で攻撃魔法なんて使ったことはない。
多分、練習すればちゃんとできるようにはなるかもしれない。だけど、今は、時間がないもの。
アウラの壁、結界だって、上手く使えば彼らを守ることくらいできるはず。
アランさんを助けた時のような、あんな失敗はもうしない。
あれから夜な夜な少しずつだけどマナを放出する練習はしてきたんだから。
ギディオン様に連れられ空を飛んだ時だって、上手くできたもの。
だから、きっと。
大丈夫。
前方に大量の魔獣の気配。
一箇所に集まってくれているのは幸いだ。
はぐれ個体がいくつか騎士団と遭遇したけど、それは難なく退治できたみたい。
デッドボア。
ホーンドウルフ。
あ、オーガもいる。
小型の魔獣は少ないな。っていうか、あれだけの魔獣がひしめき合っていたら、体の小さな個体は大きい個体に喰われ魔力の足しになってしまうのかも。
必然的に残った個体は大型魔獣ばかりになっていく。そんな感じなのか。
魔素が充満している魔溜りは、もう少し奥にあるみたい。
だけど。
そろそろと。騎士団の目の前は魔獣の壁のようなもので塞がれ。
奥に、やっぱりとんでもないほどの魔力の塊があるのを感じる。
あれは……魔王?
ううん、違う。
もっと違う何か。
吹き荒ぶ魔素の嵐。
せめて、と、あたしは前方の風に干渉する。
騎士団の面々が直接魔素の嵐にあてられないように、上空に魔素を逃して。
戦端が開かれた。
ギディオン様がさっと先頭に立つ。
左腕を魔獣にむけ、興したマナを放った。
「ドラゴン・ノバ!!」
そう叫ぶ声が聞こえ、ギディオン様の前方が真っ赤な炎の嵐に包まれた。
その炎が戦闘開始の合図となった。
まずギディオン様の魔法で先頭の魔獣を薙ぎ払い、その後各個撃破に移る。
それが騎士団の作戦だったのだろう。
大きな魔法を使える魔道士部隊のようなものはどうやらいない。
魔法攻撃はもっぱらギディオン様の役目?
「ファイヤバレット!」
弾丸のように炎の塊を飛ばすギディオン様。
そして弱った敵を切り裂く騎士のヤイバ。
先制したことで最初のうちは騎士団有利にことを運んでいるようにも見えていた。
でも。
数に勝る魔獣の圧が、だんだんと大きくなっていく。
明らかに、押され始めているのがあたしにもわかってきた。
221
お気に入りに追加
2,858
あなたにおすすめの小説

【完結】もう辛い片想いは卒業して結婚相手を探そうと思います
ユユ
恋愛
大家族で大富豪の伯爵家に産まれた令嬢には
好きな人がいた。
彼からすれば誰にでも向ける微笑みだったが
令嬢はそれで恋に落ちてしまった。
だけど彼は私を利用するだけで
振り向いてはくれない。
ある日、薬の過剰摂取をして
彼から離れようとした令嬢の話。
* 完結保証付き
* 3万文字未満
* 暇つぶしにご利用下さい

《完結》愛する人と結婚するだけが愛じゃない
ぜらいす黒糖
恋愛
オリビアはジェームズとこのまま結婚するだろうと思っていた。
ある日、可愛がっていた後輩のマリアから「先輩と別れて下さい」とオリビアは言われた。
ジェームズに確かめようと部屋に行くと、そこにはジェームズとマリアがベッドで抱き合っていた。
ショックのあまり部屋を飛び出したオリビアだったが、気がつくと走る馬車の前を歩いていた。
記憶を失くした彼女の手紙 消えてしまった完璧な令嬢と、王子の遅すぎた後悔の話
甘糖むい
恋愛
婚約者であるシェルニア公爵令嬢が記憶喪失となった。
王子はひっそりと喜んだ。これで愛するクロエ男爵令嬢と堂々と結婚できると。
その時、王子の元に一通の手紙が届いた。
そこに書かれていたのは3つの願いと1つの真実。
王子は絶望感に苛まれ後悔をする。

【完結】偽りの婚約のつもりが愛されていました
ユユ
恋愛
可憐な妹に何度も婚約者を奪われて生きてきた。
だけど私は子爵家の跡継ぎ。
騒ぎ立てることはしなかった。
子爵家の仕事を手伝い、婚約者を持つ令嬢として
慎ましく振る舞ってきた。
五人目の婚約者と妹は体を重ねた。
妹は身籠った。
父は跡継ぎと婚約相手を妹に変えて
私を今更嫁に出すと言った。
全てを奪われた私はもう我慢を止めた。
* 作り話です。
* 短めの話にするつもりです
* 暇つぶしにどうぞ
婚姻契約には愛情は含まれていません。 旦那様には愛人がいるのですから十分でしょう?
すもも
恋愛
伯爵令嬢エーファの最も嫌いなものは善人……そう思っていた。
人を救う事に生き甲斐を感じていた両親が、陥った罠によって借金まみれとなった我が家。
これでは領民が冬を越せない!!
善良で善人で、人に尽くすのが好きな両親は何の迷いもなくこう言った。
『エーファ、君の結婚が決まったんだよ!! 君が嫁ぐなら、お金をくれるそうだ!! 領民のために尽くすのは領主として当然の事。 多くの命が救えるなんて最高の幸福だろう。 それに公爵家に嫁げばお前も幸福になるに違いない。 これは全員が幸福になれる機会なんだ、当然嫁いでくれるよな?』
と……。
そして、夫となる男の屋敷にいたのは……三人の愛人だった。
婚約「解消」ではなく「破棄」ですか? いいでしょう、お受けしますよ?
ピコっぴ
恋愛
7歳の時から婚姻契約にある我が婚約者は、どんな努力をしても私に全く関心を見せなかった。
13歳の時、寄り添った夫婦になる事を諦めた。夜会のエスコートすらしてくれなくなったから。
16歳の現在、シャンパンゴールドの人形のような可愛らしい令嬢を伴って夜会に現れ、婚約破棄すると宣う婚約者。
そちらが歩み寄ろうともせず、無視を決め込んだ挙句に、王命での婚姻契約を一方的に「破棄」ですか?
ただ素直に「解消」すればいいものを⋯⋯
婚約者との関係を諦めていた私はともかく、まわりが怒り心頭、許してはくれないようです。
恋愛らしい恋愛小説が上手く書けず、試行錯誤中なのですが、一話あたり短めにしてあるので、サクッと読めるはず? デス🙇
【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?
アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。
泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。
16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。
マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。
あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に…
もう…我慢しなくても良いですよね?
この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。
前作の登場人物達も多数登場する予定です。
マーテルリアのイラストを変更致しました。

もう、愛はいりませんから
さくたろう
恋愛
ローザリア王国公爵令嬢ルクレティア・フォルセティに、ある日突然、未来の記憶が蘇った。
王子リーヴァイの愛する人を殺害しようとした罪により投獄され、兄に差し出された毒を煽り死んだ記憶だ。それが未来の出来事だと確信したルクレティアは、そんな未来に怯えるが、その記憶のおかしさに気がつき、謎を探ることにする。そうしてやがて、ある人のひたむきな愛を知ることになる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる