21 / 74
王都のお屋敷。
しおりを挟む
馬に乗るって初めてで、それも騎士様の前に乗せてもらうだなんて。
きっとお尻も痛くなっちゃうんだろう。
きっとあまりの揺れに気持ち悪くなっちゃうんだろう。
この姿勢で小一時間もあたし、もつのかな。
ギディオン様に迷惑かけちゃったらどうしよう。
そんなことばっかり考えていたけど、なんだかとっても快適な道中ですこし拍子抜け。
多分、ギディオン様の魔法。
あまり揺れないようにふんわりと浮いているようなそんな感覚。
これ、重力魔法?
黒魔法の一種ではあるけど、悪い意味じゃなくてとっても強力な魔法。
ギア・ブラドが操るそんな特殊な魔法だ。
最上位の重力魔法は確かブラックホールをも生み出しちゃう。って聞いた。
まあそこまでいくと人智を超える。もう神の領域ではあるよね。
あと。
触れてみてわかった彼の魔力。
膨大なその魔力量。
多分、マグナカルロの他のどんな貴族よりもその身に秘める魔力は膨大で。
多分、魔法でギディオン様に敵う人なんていないんじゃ無いか、そう思わせる。
最初は馬に乗るのも騎士様に身体を委ねるのもすごく怖かった。
だけど。
なんていうか、心地よいの。
ものすごく肌が合う。
馬上で寝てしまいそうになっちゃったくらい気持ちよくて。
パトリック様に触れるのは怖かった。どこか、拒否? されているような壁を感じて。
ピリピリとした肌触りっていったらいいのかな。反面、それでいてねっとり絡みつくような違和感もあった。好きじゃなかったら耐えられなかったかもしれない。
これって魔力の質みたいなものの差だろうか? パトリック様以外の人にこうして深く触れたことなんかなかったから気が付かなかった。
だったらパトリック様も同じように感じていたのだろうか?
だとしたら……。
愛されなくって当然だったのか……。
嫌われても仕方がなかったのか……。
ああ、ダメ。考えれば考えるほどどんどん落ち込んでいく。
「どうしたの? 大丈夫?」
「あ、ごめんなさい。ちょっと考え事をしてしまって……」
「あまり思い詰めないほうがいいよ。君の魔力が悲しみに染まっていくのがわかるから心配で。魔力はね、感情の影響を受けやすいんだ。そしてその感情に染まった魔力が精神にかえってくる。強い感情はどんどん増幅して取り返しのつかないことにもなりかねないからね」
「え……、ギディオンさま?」
「私は君の優しい魔力が好きだよ。君はそんなふうに思い詰めているよりも、明るく笑っているときのほうがかわいいからね」
はうあうあうあうあう。
心臓の鼓動が跳ね上がる。
彼のそのイケメンすぎるセリフにあてられたのか、あたしの顔は恥ずかしくてたまらなくて火照っていく。
もう恋なんてしないって、そう誓ったはずだったのに。
あたし、惚れっぽいのかな。
わかんない。
前世でも恋愛経験なんてそんなに無かった。っていうか恋愛小説はいっぱい読んだけど、現実にはぜんぜんダメで。
男性と触れ合った経験なんて無かったもの!
こんなにも近くにイケメンなお顔があること自体、人生初の体験かもしれなくって……。
ああダメ。意識が飛びそう。
あたしに魔力があるってことがバレたことも、今のドキドキで頭がいっぱいになっちゃってそれ以上考えられなかった。
そんなふうにクラクラしているうちに、どうやら王都に到着したらしい。
ギディオン様の操る馬は、そのまま王都中心部の貴族街へと向かって。
(あれ? ジャン・ロックのお店は流石にこっちには無いよね?)
そう思った時には貴族街最奥の豪奢なお屋敷のエントランスにまで乗り付けていた。
「ごめん。まずは着替えないとね。流石にその格好で一流店が立ち並ぶ場所に行くと場違いに思われてしまう。私も少しラフな格好に着替えるから」
そう言って優しくあたしを降ろしてくれるギディオン様……。
って、ここって、ここって……。
ああああああ。
ここってベルクマール侯爵家。
あたしのお母様の従兄弟、お母様が輿入れする際にご一緒にこのマグナカルロにいらっしゃった当時のベルクマール大公のご子息で、この国で侯爵位を賜ったジョアス・ベルクマール侯爵のお屋敷のはず。
幼い頃に来たことがある。間違いないよ!
だったら、ギディオン様って、まさか……。
きっとお尻も痛くなっちゃうんだろう。
きっとあまりの揺れに気持ち悪くなっちゃうんだろう。
この姿勢で小一時間もあたし、もつのかな。
ギディオン様に迷惑かけちゃったらどうしよう。
そんなことばっかり考えていたけど、なんだかとっても快適な道中ですこし拍子抜け。
多分、ギディオン様の魔法。
あまり揺れないようにふんわりと浮いているようなそんな感覚。
これ、重力魔法?
黒魔法の一種ではあるけど、悪い意味じゃなくてとっても強力な魔法。
ギア・ブラドが操るそんな特殊な魔法だ。
最上位の重力魔法は確かブラックホールをも生み出しちゃう。って聞いた。
まあそこまでいくと人智を超える。もう神の領域ではあるよね。
あと。
触れてみてわかった彼の魔力。
膨大なその魔力量。
多分、マグナカルロの他のどんな貴族よりもその身に秘める魔力は膨大で。
多分、魔法でギディオン様に敵う人なんていないんじゃ無いか、そう思わせる。
最初は馬に乗るのも騎士様に身体を委ねるのもすごく怖かった。
だけど。
なんていうか、心地よいの。
ものすごく肌が合う。
馬上で寝てしまいそうになっちゃったくらい気持ちよくて。
パトリック様に触れるのは怖かった。どこか、拒否? されているような壁を感じて。
ピリピリとした肌触りっていったらいいのかな。反面、それでいてねっとり絡みつくような違和感もあった。好きじゃなかったら耐えられなかったかもしれない。
これって魔力の質みたいなものの差だろうか? パトリック様以外の人にこうして深く触れたことなんかなかったから気が付かなかった。
だったらパトリック様も同じように感じていたのだろうか?
だとしたら……。
愛されなくって当然だったのか……。
嫌われても仕方がなかったのか……。
ああ、ダメ。考えれば考えるほどどんどん落ち込んでいく。
「どうしたの? 大丈夫?」
「あ、ごめんなさい。ちょっと考え事をしてしまって……」
「あまり思い詰めないほうがいいよ。君の魔力が悲しみに染まっていくのがわかるから心配で。魔力はね、感情の影響を受けやすいんだ。そしてその感情に染まった魔力が精神にかえってくる。強い感情はどんどん増幅して取り返しのつかないことにもなりかねないからね」
「え……、ギディオンさま?」
「私は君の優しい魔力が好きだよ。君はそんなふうに思い詰めているよりも、明るく笑っているときのほうがかわいいからね」
はうあうあうあうあう。
心臓の鼓動が跳ね上がる。
彼のそのイケメンすぎるセリフにあてられたのか、あたしの顔は恥ずかしくてたまらなくて火照っていく。
もう恋なんてしないって、そう誓ったはずだったのに。
あたし、惚れっぽいのかな。
わかんない。
前世でも恋愛経験なんてそんなに無かった。っていうか恋愛小説はいっぱい読んだけど、現実にはぜんぜんダメで。
男性と触れ合った経験なんて無かったもの!
こんなにも近くにイケメンなお顔があること自体、人生初の体験かもしれなくって……。
ああダメ。意識が飛びそう。
あたしに魔力があるってことがバレたことも、今のドキドキで頭がいっぱいになっちゃってそれ以上考えられなかった。
そんなふうにクラクラしているうちに、どうやら王都に到着したらしい。
ギディオン様の操る馬は、そのまま王都中心部の貴族街へと向かって。
(あれ? ジャン・ロックのお店は流石にこっちには無いよね?)
そう思った時には貴族街最奥の豪奢なお屋敷のエントランスにまで乗り付けていた。
「ごめん。まずは着替えないとね。流石にその格好で一流店が立ち並ぶ場所に行くと場違いに思われてしまう。私も少しラフな格好に着替えるから」
そう言って優しくあたしを降ろしてくれるギディオン様……。
って、ここって、ここって……。
ああああああ。
ここってベルクマール侯爵家。
あたしのお母様の従兄弟、お母様が輿入れする際にご一緒にこのマグナカルロにいらっしゃった当時のベルクマール大公のご子息で、この国で侯爵位を賜ったジョアス・ベルクマール侯爵のお屋敷のはず。
幼い頃に来たことがある。間違いないよ!
だったら、ギディオン様って、まさか……。
220
お気に入りに追加
2,858
あなたにおすすめの小説

忘却令嬢〜そう言われましても記憶にございません〜【完】
雪乃
恋愛
ほんの一瞬、躊躇ってしまった手。
誰よりも愛していた彼女なのに傷付けてしまった。
ずっと傷付けていると理解っていたのに、振り払ってしまった。
彼女は深い碧色に絶望を映しながら微笑んだ。
※読んでくださりありがとうございます。
ゆるふわ設定です。タグをころころ変えてます。何でも許せる方向け。

【完結】もう辛い片想いは卒業して結婚相手を探そうと思います
ユユ
恋愛
大家族で大富豪の伯爵家に産まれた令嬢には
好きな人がいた。
彼からすれば誰にでも向ける微笑みだったが
令嬢はそれで恋に落ちてしまった。
だけど彼は私を利用するだけで
振り向いてはくれない。
ある日、薬の過剰摂取をして
彼から離れようとした令嬢の話。
* 完結保証付き
* 3万文字未満
* 暇つぶしにご利用下さい
記憶を失くした彼女の手紙 消えてしまった完璧な令嬢と、王子の遅すぎた後悔の話
甘糖むい
恋愛
婚約者であるシェルニア公爵令嬢が記憶喪失となった。
王子はひっそりと喜んだ。これで愛するクロエ男爵令嬢と堂々と結婚できると。
その時、王子の元に一通の手紙が届いた。
そこに書かれていたのは3つの願いと1つの真実。
王子は絶望感に苛まれ後悔をする。

《完結》愛する人と結婚するだけが愛じゃない
ぜらいす黒糖
恋愛
オリビアはジェームズとこのまま結婚するだろうと思っていた。
ある日、可愛がっていた後輩のマリアから「先輩と別れて下さい」とオリビアは言われた。
ジェームズに確かめようと部屋に行くと、そこにはジェームズとマリアがベッドで抱き合っていた。
ショックのあまり部屋を飛び出したオリビアだったが、気がつくと走る馬車の前を歩いていた。

【完結】仰る通り、貴方の子ではありません
ユユ
恋愛
辛い悪阻と難産を経て産まれたのは
私に似た待望の男児だった。
なのに認められず、
不貞の濡れ衣を着せられ、
追い出されてしまった。
実家からも勘当され
息子と2人で生きていくことにした。
* 作り話です
* 暇つぶしにどうぞ
* 4万文字未満
* 完結保証付き
* 少し大人表現あり
王太子妃は離婚したい
凛江
恋愛
アルゴン国の第二王女フレイアは、婚約者であり、幼い頃より想いを寄せていた隣国テルルの王太子セレンに嫁ぐ。
だが、期待を胸に臨んだ婚姻の日、待っていたのは夫セレンの冷たい瞳だった。
※この作品は、読んでいただいた皆さまのおかげで書籍化することができました。
綺麗なイラストまでつけていただき感無量です。
これまで応援いただき、本当にありがとうございました。
レジーナのサイトで番外編が読めますので、そちらものぞいていただけると嬉しいです。
https://www.regina-books.com/extra/login

【完結】偽りの婚約のつもりが愛されていました
ユユ
恋愛
可憐な妹に何度も婚約者を奪われて生きてきた。
だけど私は子爵家の跡継ぎ。
騒ぎ立てることはしなかった。
子爵家の仕事を手伝い、婚約者を持つ令嬢として
慎ましく振る舞ってきた。
五人目の婚約者と妹は体を重ねた。
妹は身籠った。
父は跡継ぎと婚約相手を妹に変えて
私を今更嫁に出すと言った。
全てを奪われた私はもう我慢を止めた。
* 作り話です。
* 短めの話にするつもりです
* 暇つぶしにどうぞ
【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?
アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。
泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。
16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。
マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。
あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に…
もう…我慢しなくても良いですよね?
この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。
前作の登場人物達も多数登場する予定です。
マーテルリアのイラストを変更致しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる