14 / 74
お金の単位。
しおりを挟む
「いらっしゃい!」
「お召し上がりですか? お持ち帰りですか?」
威勢のいい店長さんの掛け声に振り向くと、ショーケースの前に立っているお客さん。
あたしはニコニコと笑顔を振りまき声をかける。
「これとこれは食べていきます。残りは持ち帰りで」
「ご一緒にお飲み物はいかがですか? 今日のおすすめは甘々なアップルティーです。とっても美味しいんですよ」
「じゃぁそれにしようかな。あ、あたたかい方でお願いしますね」
「はい。それでは合計で6オンスになりますね。ありがとうございます。ご用意しますのでお席で少々お待ちくださいませ」
笑顔をふりまき接客してお客さんが選んだドーナツを袋に詰めて。
トレイにアップルティーを用意して店内で飲食するドーナツをお皿に載せお客さんの席まで運んだ。
「お待たせいたしました。ごゆっくりお召し上がりくださいませ」
にっこり笑顔でそう商品の載ったトレイをお客さんの席のテーブルに置くと、
「ありがとう」
そう笑顔で返してくれた。
ふふふ。なんだかとっても嬉しい。
ハニーグレイズとシュガードーナツも好評だ。
ここのところあの悪い人たちも現れなくて、お客さんも戻ってきたみたい。少しずつだけど売り上げもあがってきた。
口コミでおいしいドーナツの噂を聞きつけたのだろう。とくに若い女性のお客様が多い。
あきらかにメイドさん風で、ご主人のためのお使いに来たついでに自分も少しだけ食べて帰るって、そんな人もいた。
壊れたショーケースはガラス部分をとっぱらい、お客さんが自由に好きなドーナツを取れるようにした。
入り口にトレイとトングを置いて、それを持って並んでもらう。
レジの所で他の注文も一緒にお伺いする形?
前世の日本だと割とそういうセルフ形式も増えてたけど、この世界でもすでにモックパンさんが同じような販売方法を行っているらしいからお客さんには違和感なく受け入れられた。
今までのようにお客さんがこれだのあれだの言うのを店員が取ってトレイに載せる方式だと、ドーナツに名前の表示がないこのお店では効率が悪すぎた。
文字が読めなくても、今ならお客さんが自由に好きなものを取っててくれるから、あとはそれを袋に詰めたりお皿に載せたりするだけだから楽だしね。
お値段も簡単。
ドーナツもマフィンも一個1オンス。
ドリンクも一杯1オンス。
ドーナツ5個にドリンク一杯で6オンス。
銅貨6枚になる。ね? 簡単でしょ?
「オンス」とはこの世界のお金の単位。前世の世界の重さの単位に響きが似てるけどまったく別物だ。1オンスがだいたい日本の物価で300円くらいの価格で流通している。その下の単位が「オン」で、100オンで1オンスとなる。銅貨一枚が1オンス。10オンスが銀貨。100オンスで金貨一枚になるかな。金貨一枚で3万円くらいと思えばわかりやすい?
その下の単位は1オンが黄銅貨、10オンが青銅貨、50オンが白銅貨。
これらは全て帝国の金融局で作られて帝国内の各国で統一されたものが使われている。
まあそれもこの100年くらいな話らしいけど。それまではギルとかゴールドとかいろんな地方でいろんなお金があったって習ったかな。
それが統一されたのは、商人がけっこう力をつけてきたおかげだというの。
各国をまたぐ商人ギルド。あっちの国でもこっちの国でも同じブランドを展開する大商会。
そういった経済活動がスムーズにできるように考えられたのがこうした貨幣の統一なのだそう。
この硬貨、金銀などをまったく同じ含有量で作るには微妙に製造原価の方が高くなる事から偽造をするような国家等は基本出ない仕組みになっている。
もちろんそれでも含有量を減らした偽硬貨を作るやからはどこの世界にもいるもので、そういうものが流通しないような工夫も実はある。
全ての硬貨には特殊な魔法印が押してあり、判別用の魔法具を翳せばすぐにわかるのだ。
両替商などや商人ギルドでは常にそういった検査を行っている。
やっぱり硬貨の価値が毀損したら困るものね。
あたしという店番がいることで、アランさんはドーナツ作りに精を出すことができた。
以前よりたくさんつくってもそれがどんどん捌けていくので本当に嬉しい。
もともとマロンさんが店番を手伝っていたんだけど、マロンさんにも夜の食材の買い出しとかドリンク作ったりとかお仕事いっぱいあって大変だったみたい。
役にたててるならほんと嬉しいなぁ。
マロンさんがせめてと言って、毎食の賄いと部屋代は出してくれることになったからお店の床で眠らなくてもよくはなった。なかなか熟睡もできなくて困ってたから素直に受けて。
今度はトッピングドーナツも提案しようかな。もっともっと繁盛してくれるといいな。
そんなふうににまにま考えていた時だった。
「やぁセレナ。楽しそうだね」
そう、ふんわりと笑みを浮かべながら金色の騎士様がお店に入ってきた。
「お召し上がりですか? お持ち帰りですか?」
威勢のいい店長さんの掛け声に振り向くと、ショーケースの前に立っているお客さん。
あたしはニコニコと笑顔を振りまき声をかける。
「これとこれは食べていきます。残りは持ち帰りで」
「ご一緒にお飲み物はいかがですか? 今日のおすすめは甘々なアップルティーです。とっても美味しいんですよ」
「じゃぁそれにしようかな。あ、あたたかい方でお願いしますね」
「はい。それでは合計で6オンスになりますね。ありがとうございます。ご用意しますのでお席で少々お待ちくださいませ」
笑顔をふりまき接客してお客さんが選んだドーナツを袋に詰めて。
トレイにアップルティーを用意して店内で飲食するドーナツをお皿に載せお客さんの席まで運んだ。
「お待たせいたしました。ごゆっくりお召し上がりくださいませ」
にっこり笑顔でそう商品の載ったトレイをお客さんの席のテーブルに置くと、
「ありがとう」
そう笑顔で返してくれた。
ふふふ。なんだかとっても嬉しい。
ハニーグレイズとシュガードーナツも好評だ。
ここのところあの悪い人たちも現れなくて、お客さんも戻ってきたみたい。少しずつだけど売り上げもあがってきた。
口コミでおいしいドーナツの噂を聞きつけたのだろう。とくに若い女性のお客様が多い。
あきらかにメイドさん風で、ご主人のためのお使いに来たついでに自分も少しだけ食べて帰るって、そんな人もいた。
壊れたショーケースはガラス部分をとっぱらい、お客さんが自由に好きなドーナツを取れるようにした。
入り口にトレイとトングを置いて、それを持って並んでもらう。
レジの所で他の注文も一緒にお伺いする形?
前世の日本だと割とそういうセルフ形式も増えてたけど、この世界でもすでにモックパンさんが同じような販売方法を行っているらしいからお客さんには違和感なく受け入れられた。
今までのようにお客さんがこれだのあれだの言うのを店員が取ってトレイに載せる方式だと、ドーナツに名前の表示がないこのお店では効率が悪すぎた。
文字が読めなくても、今ならお客さんが自由に好きなものを取っててくれるから、あとはそれを袋に詰めたりお皿に載せたりするだけだから楽だしね。
お値段も簡単。
ドーナツもマフィンも一個1オンス。
ドリンクも一杯1オンス。
ドーナツ5個にドリンク一杯で6オンス。
銅貨6枚になる。ね? 簡単でしょ?
「オンス」とはこの世界のお金の単位。前世の世界の重さの単位に響きが似てるけどまったく別物だ。1オンスがだいたい日本の物価で300円くらいの価格で流通している。その下の単位が「オン」で、100オンで1オンスとなる。銅貨一枚が1オンス。10オンスが銀貨。100オンスで金貨一枚になるかな。金貨一枚で3万円くらいと思えばわかりやすい?
その下の単位は1オンが黄銅貨、10オンが青銅貨、50オンが白銅貨。
これらは全て帝国の金融局で作られて帝国内の各国で統一されたものが使われている。
まあそれもこの100年くらいな話らしいけど。それまではギルとかゴールドとかいろんな地方でいろんなお金があったって習ったかな。
それが統一されたのは、商人がけっこう力をつけてきたおかげだというの。
各国をまたぐ商人ギルド。あっちの国でもこっちの国でも同じブランドを展開する大商会。
そういった経済活動がスムーズにできるように考えられたのがこうした貨幣の統一なのだそう。
この硬貨、金銀などをまったく同じ含有量で作るには微妙に製造原価の方が高くなる事から偽造をするような国家等は基本出ない仕組みになっている。
もちろんそれでも含有量を減らした偽硬貨を作るやからはどこの世界にもいるもので、そういうものが流通しないような工夫も実はある。
全ての硬貨には特殊な魔法印が押してあり、判別用の魔法具を翳せばすぐにわかるのだ。
両替商などや商人ギルドでは常にそういった検査を行っている。
やっぱり硬貨の価値が毀損したら困るものね。
あたしという店番がいることで、アランさんはドーナツ作りに精を出すことができた。
以前よりたくさんつくってもそれがどんどん捌けていくので本当に嬉しい。
もともとマロンさんが店番を手伝っていたんだけど、マロンさんにも夜の食材の買い出しとかドリンク作ったりとかお仕事いっぱいあって大変だったみたい。
役にたててるならほんと嬉しいなぁ。
マロンさんがせめてと言って、毎食の賄いと部屋代は出してくれることになったからお店の床で眠らなくてもよくはなった。なかなか熟睡もできなくて困ってたから素直に受けて。
今度はトッピングドーナツも提案しようかな。もっともっと繁盛してくれるといいな。
そんなふうににまにま考えていた時だった。
「やぁセレナ。楽しそうだね」
そう、ふんわりと笑みを浮かべながら金色の騎士様がお店に入ってきた。
210
お気に入りに追加
2,861
あなたにおすすめの小説
忘却令嬢〜そう言われましても記憶にございません〜【完】
雪乃
恋愛
ほんの一瞬、躊躇ってしまった手。
誰よりも愛していた彼女なのに傷付けてしまった。
ずっと傷付けていると理解っていたのに、振り払ってしまった。
彼女は深い碧色に絶望を映しながら微笑んだ。
※読んでくださりありがとうございます。
ゆるふわ設定です。タグをころころ変えてます。何でも許せる方向け。
【完結】もう辛い片想いは卒業して結婚相手を探そうと思います
ユユ
恋愛
大家族で大富豪の伯爵家に産まれた令嬢には
好きな人がいた。
彼からすれば誰にでも向ける微笑みだったが
令嬢はそれで恋に落ちてしまった。
だけど彼は私を利用するだけで
振り向いてはくれない。
ある日、薬の過剰摂取をして
彼から離れようとした令嬢の話。
* 完結保証付き
* 3万文字未満
* 暇つぶしにご利用下さい
【完結】偽りの婚約のつもりが愛されていました
ユユ
恋愛
可憐な妹に何度も婚約者を奪われて生きてきた。
だけど私は子爵家の跡継ぎ。
騒ぎ立てることはしなかった。
子爵家の仕事を手伝い、婚約者を持つ令嬢として
慎ましく振る舞ってきた。
五人目の婚約者と妹は体を重ねた。
妹は身籠った。
父は跡継ぎと婚約相手を妹に変えて
私を今更嫁に出すと言った。
全てを奪われた私はもう我慢を止めた。
* 作り話です。
* 短めの話にするつもりです
* 暇つぶしにどうぞ
田舎者とバカにされたけど、都会に染まった婚約者様は破滅しました
さこの
恋愛
田舎の子爵家の令嬢セイラと男爵家のレオは幼馴染。両家とも仲が良く、領地が隣り合わせで小さい頃から結婚の約束をしていた。
時が経ちセイラより一つ上のレオが王立学園に入学することになった。
手紙のやり取りが少なくなってきて不安になるセイラ。
ようやく学園に入学することになるのだが、そこには変わり果てたレオの姿が……
「田舎の色気のない女より、都会の洗練された女はいい」と友人に吹聴していた
ホットランキング入りありがとうございます
2021/06/17
【完結】さようなら、婚約者様。私を騙していたあなたの顔など二度と見たくありません
ゆうき@初書籍化作品発売中
恋愛
婚約者とその家族に虐げられる日々を送っていたアイリーンは、赤ん坊の頃に森に捨てられていたところを、貧乏なのに拾って育ててくれた家族のために、つらい毎日を耐える日々を送っていた。
そんなアイリーンには、密かな夢があった。それは、世界的に有名な魔法学園に入学して勉強をし、宮廷魔術師になり、両親を楽させてあげたいというものだった。
婚約を結ぶ際に、両親を支援する約束をしていたアイリーンだったが、夢自体は諦めきれずに過ごしていたある日、別の女性と恋に落ちていた婚約者は、アイリーンなど体のいい使用人程度にしか思っておらず、支援も行っていないことを知る。
どういうことか問い詰めると、お前とは婚約破棄をすると言われてしまったアイリーンは、ついに我慢の限界に達し、婚約者に別れを告げてから婚約者の家を飛び出した。
実家に帰ってきたアイリーンは、唯一の知人で特別な男性であるエルヴィンから、とあることを提案される。
それは、特待生として魔法学園の編入試験を受けてみないかというものだった。
これは一人の少女が、夢を掴むために奮闘し、時には婚約者達の妨害に立ち向かいながら、幸せを手に入れる物語。
☆すでに最終話まで執筆、予約投稿済みの作品となっております☆
理想の女性を見つけた時には、運命の人を愛人にして白い結婚を宣言していました
ぺきぺき
恋愛
王家の次男として生まれたヨーゼフには幼い頃から決められていた婚約者がいた。兄の補佐として育てられ、兄の息子が立太子した後には臣籍降下し大公になるよていだった。
このヨーゼフ、優秀な頭脳を持ち、立派な大公となることが期待されていたが、幼い頃に見た絵本のお姫様を理想の女性として探し続けているという残念なところがあった。
そしてついに貴族学園で絵本のお姫様とそっくりな令嬢に出会う。
ーーーー
若気の至りでやらかしたことに苦しめられる主人公が最後になんとか幸せになる話。
作者別作品『二人のエリーと遅れてあらわれるヒーローたち』のスピンオフになっていますが、単体でも読めます。
完結まで執筆済み。毎日四話更新で4/24に完結予定。
第一章 無計画な婚約破棄
第二章 無計画な白い結婚
第三章 無計画な告白
第四章 無計画なプロポーズ
第五章 無計画な真実の愛
エピローグ
今から婚約者に会いに行きます。〜私は運命の相手ではないから
毛蟹葵葉
恋愛
婚約者が王立学園の卒業を間近に控えていたある日。
ポーリーンのところに、婚約者の恋人だと名乗る女性がやってきた。
彼女は別れろ。と、一方的に迫り。
最後には暴言を吐いた。
「ああ、本当に嫌だわ。こんな田舎。肥溜めの臭いがするみたい。……貴女からも漂ってるわよ」
洗練された都会に住む自分の方がトリスタンにふさわしい。と、言わんばかりに彼女は微笑んだ。
「ねえ、卒業パーティーには来ないでね。恥をかくのは貴女よ。婚約破棄されてもまだ間に合うでしょう?早く相手を見つけたら?」
彼女が去ると、ポーリーンはある事を考えた。
ちゃんと、別れ話をしようと。
ポーリーンはこっそりと屋敷から抜け出して、婚約者のところへと向かった。
【完結】高嶺の花がいなくなった日。
紺
恋愛
侯爵令嬢ルノア=ダリッジは誰もが認める高嶺の花。
清く、正しく、美しくーーそんな彼女がある日忽然と姿を消した。
婚約者である王太子、友人の子爵令嬢、教師や使用人たちは彼女の失踪を機に大きく人生が変わることとなった。
※ざまぁ展開多め、後半に恋愛要素あり。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる