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夢の中で。
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夢を見ていた。
まだこうやって前世を思い出す前の夢。
夢の中で、ああこれは夢だなぁとなんとなく自覚する。
幼いあたしはパトリック様が主催するお茶会によばれ、妹マリアンネと共に参加していた。
あたしが10歳、マリアンネが8歳ぐらいだろうか、他にも同じような年代の貴族の子女が多く参加した盛大な催しだった。
あたしはパトリック様のお隣の席、特別なそんな席に座らせてもらい、幸せな気分で過ごしていた。
両家の婚約披露パーティはもう済んでいたから、これはあたしがこの春から学園に入学するのにあわせ、歳の近い子供らにもそのことを知らしめるものだったのだろう。今ならよくわかる。
始終ニコニコと笑顔を崩さないあたしと裏腹に、五つ年上のパトリック様は氷のような表情を崩さずに座っていらした。
素敵な年上の王子様。
そんな大好きなパトリック様の隣に座れて嬉しくて。
そんなセリーヌの感情があたしの中に溢れてくる。
このころはまだ何も疑っていなかった。この先もずっと幸せでいられるのだと、そう信じていたのだ。
はっと夢から覚めた。
ん、身体が痛い……。
ドーナツ作りに満足して寝袋に収まったあたし。そのままぬくぬくと寝られたのは良かったけれどやっぱりこの身体はふかふかのお布団でしか寝たことが無かったせいか、床の上に寝袋で、では身体中がギシギシと痛くなってしまっている。
しょうがないから自分の体に回復魔法「キュア」をかける。
必要にせまられなかったせいかあたしが実際に使ったことのある魔法は少ししかないのだけれど、そんな中でもこのキュアは色々役にたってくれる万能魔法だった。
なんていったって回復から浄化、少々の怪我ならあっという間に治ってしまう。
あまり詳しくはないけれど前世の小説なんかでよくあるヒール魔法? みたいなものだ。
これも。
あたしの周りに浮かぶ「キュア」たちのチカラを借りている。
金色に光る粒のように見えるキュア。
時々、ほんわりと彼女らの感情が聴こえてくる気もして。
(セリーヌ好き)
(セリーヌ、呼んで)
そう囁きながらあたしの周りを飛び交うキュアはあたしにとっては幼い頃から身近にあったお友達のような存在だったのだけど、お母様におはなししても、あたしのようには見えないのだという。
ただ、「わたくしのおばあさまはやっぱりちゃんと見えたみたいだから。あなたにもそんな素養があるかもしれないわ」といって微笑んでくれたのだった。
身体の痛みもすーっと消えた。
あたしはぎゅーっと背伸びをして寝袋から抜け出すとキッチンで顔を洗う。
ふふ。こういうのも貴族のセリーヌにはできなかったんだろうなぁ。と感慨にふけりつつ、夢で見たセリーヌの感情を思い出していた。
に、しても。
やっぱりどうしても許せない。
パトリック様は絶対にセリーヌの恋心に気がついていたはずなのだ。
あの夜も。
「愛していますパトリック様」
と、うるうるとした瞳で縋ったあたしに。
それでも言われたあの言葉。
「私は君を愛することができない」
この言葉はあたしの心にグサリと刺さり。
それ以降のあたしの顔からは笑顔が消えてしまった。
おまけにあたしを家の仕事で縛り利用するだけ利用して自分は他の女に手を出しまくるだなんて。
ああもう、おもいだすと今でも怒りが湧いてくる。
絶対に許せないんだから!!
まだこうやって前世を思い出す前の夢。
夢の中で、ああこれは夢だなぁとなんとなく自覚する。
幼いあたしはパトリック様が主催するお茶会によばれ、妹マリアンネと共に参加していた。
あたしが10歳、マリアンネが8歳ぐらいだろうか、他にも同じような年代の貴族の子女が多く参加した盛大な催しだった。
あたしはパトリック様のお隣の席、特別なそんな席に座らせてもらい、幸せな気分で過ごしていた。
両家の婚約披露パーティはもう済んでいたから、これはあたしがこの春から学園に入学するのにあわせ、歳の近い子供らにもそのことを知らしめるものだったのだろう。今ならよくわかる。
始終ニコニコと笑顔を崩さないあたしと裏腹に、五つ年上のパトリック様は氷のような表情を崩さずに座っていらした。
素敵な年上の王子様。
そんな大好きなパトリック様の隣に座れて嬉しくて。
そんなセリーヌの感情があたしの中に溢れてくる。
このころはまだ何も疑っていなかった。この先もずっと幸せでいられるのだと、そう信じていたのだ。
はっと夢から覚めた。
ん、身体が痛い……。
ドーナツ作りに満足して寝袋に収まったあたし。そのままぬくぬくと寝られたのは良かったけれどやっぱりこの身体はふかふかのお布団でしか寝たことが無かったせいか、床の上に寝袋で、では身体中がギシギシと痛くなってしまっている。
しょうがないから自分の体に回復魔法「キュア」をかける。
必要にせまられなかったせいかあたしが実際に使ったことのある魔法は少ししかないのだけれど、そんな中でもこのキュアは色々役にたってくれる万能魔法だった。
なんていったって回復から浄化、少々の怪我ならあっという間に治ってしまう。
あまり詳しくはないけれど前世の小説なんかでよくあるヒール魔法? みたいなものだ。
これも。
あたしの周りに浮かぶ「キュア」たちのチカラを借りている。
金色に光る粒のように見えるキュア。
時々、ほんわりと彼女らの感情が聴こえてくる気もして。
(セリーヌ好き)
(セリーヌ、呼んで)
そう囁きながらあたしの周りを飛び交うキュアはあたしにとっては幼い頃から身近にあったお友達のような存在だったのだけど、お母様におはなししても、あたしのようには見えないのだという。
ただ、「わたくしのおばあさまはやっぱりちゃんと見えたみたいだから。あなたにもそんな素養があるかもしれないわ」といって微笑んでくれたのだった。
身体の痛みもすーっと消えた。
あたしはぎゅーっと背伸びをして寝袋から抜け出すとキッチンで顔を洗う。
ふふ。こういうのも貴族のセリーヌにはできなかったんだろうなぁ。と感慨にふけりつつ、夢で見たセリーヌの感情を思い出していた。
に、しても。
やっぱりどうしても許せない。
パトリック様は絶対にセリーヌの恋心に気がついていたはずなのだ。
あの夜も。
「愛していますパトリック様」
と、うるうるとした瞳で縋ったあたしに。
それでも言われたあの言葉。
「私は君を愛することができない」
この言葉はあたしの心にグサリと刺さり。
それ以降のあたしの顔からは笑顔が消えてしまった。
おまけにあたしを家の仕事で縛り利用するだけ利用して自分は他の女に手を出しまくるだなんて。
ああもう、おもいだすと今でも怒りが湧いてくる。
絶対に許せないんだから!!
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