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男爵家の地下。
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「ロッテンマイヤー男爵家の地下?」
「ええ、ナリス様。地下に空洞があるとのことで」
「しかしそんな物、以前の報告では無かったように思うが」
「元々地下室があることは確認されておりました。しかしさほど重要な物とは思われなかったのです。出入りする者も確認出来ず、ほぼ開かずの間でありましたから。実際、潜入捜査の最中記憶が消える以前の男爵家の一員がそこに入り込んでいる事実は確認しておりません。魔法陣に関する証拠等につきましても、そちらに隠されたという可能性はほぼゼロであると思われておりました。何せその地下室に唯一繋がる扉がここ数ヶ月のレベルで開閉された形跡がありませんでしたから」
「では何故、今更になって問題視する?」
「ロンジェット鋼の反応がありました。それも、これはかなりの量にのぼるものと思われます。そう、未発掘の中規模な鉱山一山に該当するだけの」
「それがその地下室にあると?」
「いえ。正確にはかの男爵家の地下に、それだけのロンジェット鋼が眠っている可能性があるとの採掘技師からの報告です。そしてその場所を特定するための魔法探査を行ったところ、どうやらかの男爵家の地下にはかなりの広さの空洞があることがわかりました」
「ふむ。それだけであれば、国として男爵家の館を買い取り採掘を開始するだけで済む話だが。ヴァレリウス。貴様がそうやってわざわざこのタイミングで報告をあげてくるということは、事はそれだけではないということか?」
「はい。ナリス様。かの場所は現在、通常の龍脈の流れ的にはあり得ないほどの真那が急激に増幅しております」
大きすぎる真那はやがて魔となりこの世界に災を呼ぶ。
空間をを歪めるそれは、魔力災害と呼ばれ度々大きな被害をもたらしてきた。
先般起こった魔力災害は国内のかなりの広範囲に広がり、作物を枯らし生命をも蝕んだ。
大聖女となったシルフィーナの尽力が無かったら、国家が滅んでいてもおかしくは無かったそれ。
それが再び起ころうというのか。
そう背筋に冷たいものを感じ。ナリスはガタンと椅子を鳴らし立ち上がり叫ぶ。
「まさか、その地下に禁忌の魔法陣があるというのか!!」
「その可能性があります。この度の真那の急激な増幅はどう見ても自然に起こるものではあり得ません」
「いくぞ、ヴァレリウス」
「しかし、ナリス様」
「このまま放置しておけるものでは無い。すぐに王にも連絡を。まずはわたしが現地に乗り込むと」
「了解いたしました。しかし今回ばかりはアグリッパ様にも助力をお願いしてみては」
「そうだな、しかしあの大叔父が素直に腰を上げるとは思えないがな」
「今私の手の者で屋敷を囲んで調べておりますが、不穏な動きはまだありません。地下室の入り口も閉じたままとのこと。かの入り口は男爵家には似つかわしくないほどの魔法結界で閉じておりましたから、突入するには少々荒事となるやもと」
「ふむ」
「あの屋敷は築500年は経つ古くからの貴族のもので、男爵家が入る以前は当時の伯爵家の所有でした。どうやら魔法結界はその当時からあるもののようですから」
「なるほど。しかしそれでは尚のこと、以前のカナリヤや男爵が放置していたとも思えないな」
「ええ。申し訳ありません。もっと早くに調べるべきでした」
「まあいいさ。今からでも遅くはない。先触れを出して男爵は黙らせておけ。王室の権限で強制的に調べることとする」
「ええ、ナリス様。地下に空洞があるとのことで」
「しかしそんな物、以前の報告では無かったように思うが」
「元々地下室があることは確認されておりました。しかしさほど重要な物とは思われなかったのです。出入りする者も確認出来ず、ほぼ開かずの間でありましたから。実際、潜入捜査の最中記憶が消える以前の男爵家の一員がそこに入り込んでいる事実は確認しておりません。魔法陣に関する証拠等につきましても、そちらに隠されたという可能性はほぼゼロであると思われておりました。何せその地下室に唯一繋がる扉がここ数ヶ月のレベルで開閉された形跡がありませんでしたから」
「では何故、今更になって問題視する?」
「ロンジェット鋼の反応がありました。それも、これはかなりの量にのぼるものと思われます。そう、未発掘の中規模な鉱山一山に該当するだけの」
「それがその地下室にあると?」
「いえ。正確にはかの男爵家の地下に、それだけのロンジェット鋼が眠っている可能性があるとの採掘技師からの報告です。そしてその場所を特定するための魔法探査を行ったところ、どうやらかの男爵家の地下にはかなりの広さの空洞があることがわかりました」
「ふむ。それだけであれば、国として男爵家の館を買い取り採掘を開始するだけで済む話だが。ヴァレリウス。貴様がそうやってわざわざこのタイミングで報告をあげてくるということは、事はそれだけではないということか?」
「はい。ナリス様。かの場所は現在、通常の龍脈の流れ的にはあり得ないほどの真那が急激に増幅しております」
大きすぎる真那はやがて魔となりこの世界に災を呼ぶ。
空間をを歪めるそれは、魔力災害と呼ばれ度々大きな被害をもたらしてきた。
先般起こった魔力災害は国内のかなりの広範囲に広がり、作物を枯らし生命をも蝕んだ。
大聖女となったシルフィーナの尽力が無かったら、国家が滅んでいてもおかしくは無かったそれ。
それが再び起ころうというのか。
そう背筋に冷たいものを感じ。ナリスはガタンと椅子を鳴らし立ち上がり叫ぶ。
「まさか、その地下に禁忌の魔法陣があるというのか!!」
「その可能性があります。この度の真那の急激な増幅はどう見ても自然に起こるものではあり得ません」
「いくぞ、ヴァレリウス」
「しかし、ナリス様」
「このまま放置しておけるものでは無い。すぐに王にも連絡を。まずはわたしが現地に乗り込むと」
「了解いたしました。しかし今回ばかりはアグリッパ様にも助力をお願いしてみては」
「そうだな、しかしあの大叔父が素直に腰を上げるとは思えないがな」
「今私の手の者で屋敷を囲んで調べておりますが、不穏な動きはまだありません。地下室の入り口も閉じたままとのこと。かの入り口は男爵家には似つかわしくないほどの魔法結界で閉じておりましたから、突入するには少々荒事となるやもと」
「ふむ」
「あの屋敷は築500年は経つ古くからの貴族のもので、男爵家が入る以前は当時の伯爵家の所有でした。どうやら魔法結界はその当時からあるもののようですから」
「なるほど。しかしそれでは尚のこと、以前のカナリヤや男爵が放置していたとも思えないな」
「ええ。申し訳ありません。もっと早くに調べるべきでした」
「まあいいさ。今からでも遅くはない。先触れを出して男爵は黙らせておけ。王室の権限で強制的に調べることとする」
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