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洞窟の奥で。
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「ふむ、岩盤が崩れ落ちるなどをした形跡もどうやらありませんし、こんな入り口近くにこれだけの野獣が集まっているところを見ると、ナクル少年はこの赤髪狐から逃れ奥まで行ってしまい出てこられなくなった可能性もありますね」
「そうだな、旦那のいうように周囲の壁に異常は無い。岩盤がどこかで崩れて出られなくなった可能性よりも、野獣が入り口を塞いでて帰れなくなったって考える方がいいかもな。まあ、あの赤髪狐にやられてしまった可能性もないではないが……」
「そんな……」
——うん? この奥右手の道をもっと奥まで行ったあたりに誰かの魔力紋を感じるよ。ナクルくんかも?
はう、ほんと? ファフナ。
——さっきまで赤髪狐の反応が大きすぎて気が付かなかったけど、あれは人間だと思う!
ありがとう!!
「みなさん! この奥の右手側に人がいるのを感じます! ナクルくんかもしれません。急ぎましょう」
わたくしのその言葉にみなさん、
「聖女さまがそうおっしゃるなら間違いねえ」
「ああ、急ごうぜ」
と、そう足を進めました。
入り口からしばらくは広めの坑道が続いていて、特に赤髪狐が屯していた場所は少し広い場所になっていましたが、基本的にここまではずっと一本道でした。
それでもその先は坑道の分岐が続いて。
わたくしはファフナの指し示してくれる方向に、みなさんを誘導し、何とか人の気配がする方へと向かいます。
——ん? 前方にいる人、一人じゃないみたい。割と大勢? どういう事?
え?
それって。
「みなさん、ごめんなさい。前方にいる人、どうやら一人じゃないみたいです。ちょっと気をつけて進みましょう」
前にいる人がもしも悪い人たちだったら困ります。
どうしましょう。
ううん、それでもそこにナクルくんがいるかもしれないのです。
「侵入者が他にも?」
「盗掘にきたのか?」
動揺の声。
念のために、もう一度みなさんにバフをかけます。
キュア! アウラ! お願いね!
泥棒さんの人ならいきなりこちらを攻撃してくることも考えなきゃですし。
「にいさま、気をつけてください」
わたくしはにいさまの腕に触れ、そう小声で呟いて。
「ああ、大丈夫だよ。お嬢様は私が命に変えても守るから」
そうこちらを見て微笑むセバスリーにいさま。
もう。わたくしはそういう無理をしてほしくないだけなのに。
——しょうがないわ。貴女、愛されているもの。
はう、ファフナ。
ずっとわたくしの肩に乗ったままのファフナ。
その小さな体は全然重くはないのですけど、時々頭を頬に擦り付けてくれて。
ふふ。くすぐったいわ。ファフナ。
——にゃぁ。時々こうしないと落ち着かないのよー。元々のファフナの心があなたを好きで好きでしょうがないって言ってるわ。
もう、そういうこと言われると気が緩んじゃう。
——良いのよ。危険だ危険だって思って体を固くしているより、そうしてリラックスしていた方が冷静な判断ができるのだから。
にいさまの微笑みと、ファフナのそんなもふもふに。
わたくしの心はすっかりと癒されて。
目の前を冷静に眺めることができるようになってみると。
道の奥に、3人の少年が固まって座っているのが見えました。
って、あれ? 嘘! どうして!!?
ううん、でも間違いない。
わたくしが見間違いなんかするわけがない。
でもどうして!
どうしてレムレス殿下がこんなところにいるの!?
どうして!?
「そうだな、旦那のいうように周囲の壁に異常は無い。岩盤がどこかで崩れて出られなくなった可能性よりも、野獣が入り口を塞いでて帰れなくなったって考える方がいいかもな。まあ、あの赤髪狐にやられてしまった可能性もないではないが……」
「そんな……」
——うん? この奥右手の道をもっと奥まで行ったあたりに誰かの魔力紋を感じるよ。ナクルくんかも?
はう、ほんと? ファフナ。
——さっきまで赤髪狐の反応が大きすぎて気が付かなかったけど、あれは人間だと思う!
ありがとう!!
「みなさん! この奥の右手側に人がいるのを感じます! ナクルくんかもしれません。急ぎましょう」
わたくしのその言葉にみなさん、
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「ああ、急ごうぜ」
と、そう足を進めました。
入り口からしばらくは広めの坑道が続いていて、特に赤髪狐が屯していた場所は少し広い場所になっていましたが、基本的にここまではずっと一本道でした。
それでもその先は坑道の分岐が続いて。
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——ん? 前方にいる人、一人じゃないみたい。割と大勢? どういう事?
え?
それって。
「みなさん、ごめんなさい。前方にいる人、どうやら一人じゃないみたいです。ちょっと気をつけて進みましょう」
前にいる人がもしも悪い人たちだったら困ります。
どうしましょう。
ううん、それでもそこにナクルくんがいるかもしれないのです。
「侵入者が他にも?」
「盗掘にきたのか?」
動揺の声。
念のために、もう一度みなさんにバフをかけます。
キュア! アウラ! お願いね!
泥棒さんの人ならいきなりこちらを攻撃してくることも考えなきゃですし。
「にいさま、気をつけてください」
わたくしはにいさまの腕に触れ、そう小声で呟いて。
「ああ、大丈夫だよ。お嬢様は私が命に変えても守るから」
そうこちらを見て微笑むセバスリーにいさま。
もう。わたくしはそういう無理をしてほしくないだけなのに。
——しょうがないわ。貴女、愛されているもの。
はう、ファフナ。
ずっとわたくしの肩に乗ったままのファフナ。
その小さな体は全然重くはないのですけど、時々頭を頬に擦り付けてくれて。
ふふ。くすぐったいわ。ファフナ。
——にゃぁ。時々こうしないと落ち着かないのよー。元々のファフナの心があなたを好きで好きでしょうがないって言ってるわ。
もう、そういうこと言われると気が緩んじゃう。
——良いのよ。危険だ危険だって思って体を固くしているより、そうしてリラックスしていた方が冷静な判断ができるのだから。
にいさまの微笑みと、ファフナのそんなもふもふに。
わたくしの心はすっかりと癒されて。
目の前を冷静に眺めることができるようになってみると。
道の奥に、3人の少年が固まって座っているのが見えました。
って、あれ? 嘘! どうして!!?
ううん、でも間違いない。
わたくしが見間違いなんかするわけがない。
でもどうして!
どうしてレムレス殿下がこんなところにいるの!?
どうして!?
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