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ネットワーク。
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「まさかセバスリー様が冒険者登録をなさるとは思いませんでしたわ」
カウンターの中からそう笑顔で話すルミーナさん。
ああでも彼女、セバスリーにいさまの事ご存じだったのですね。
「まあ、その。お嬢様の社会勉強も兼ねて、ですけどね。冒険者登録自体は後々役に立つだろうというのは本音ですよ」
「あら、ではこちらが領主様のお嬢様? ふふ。お母様と似てらしてとってもチャーミングなお嬢様ね。セバスリー様ったらいっつもお嬢様自慢をされてましたし」
「ルミーナさん!」
「まあまぁ、ごめんなさいね、でも、冒険者登録をしてくださるのなら常時依頼分の野獣も冒険者価格で買い取ることも可能にはなりますから。セバスリー様が持ち込む野獣を安値で引き取るのはこちらも気が引けていましたから」
「しかし通常はEランクから登録となるはずでしょう? ランクが低いうちはせいぜい薬草の買い取りくらいしか常時依頼といえども受けられないのでは?」
「それはもちろん、セバスリー様ほどの実力者であれば飛び級での登録となりますわ。私の権限でまずはCランクからということでいかがでしょう?」
「え? 良いのですかそんなこと」
「もちろんです。私の見立てではセバスリー様の実力はBランク、いえ、Aにも届くかと思われますが、流石にまったく功績のない方をそこまで押し上げるのは周囲に悪影響を与えかねない為、Cランクよりのスタートとさせていただきました。申し訳ありませんがご納得下さいますよう」
ルミーナさんはそのボリューミーな綺麗な巻毛をふわさっとかきあげ、こちらを見て笑みをこぼす。その妖艶な微笑みはとても綺麗で。
はうう。会話を聞いている限りではやっぱりこのお方ただの受付のお姉さんには思えないかも。
「ルミーナ様って……」
不思議すぎて思わずそう口走ってしまって。わたくしの疑問に応えるようににいさま。
「お嬢様、この方はこちらの冒険者ギルドのギルド長をなさっているルミーナ・バッケンバウワー様です。お父上のブラン様は騎士爵で騎士団の要職についていらっしゃいます」
「ギルド長様!!」
「ふふ、アナスターシア様。ギルド長と言っても私はまだまだ若輩ですから。ベテランの方々に助けていただいて何とかやっているところですわ」
「そういって、ルミーナ様はかなりのやり手ですからね。ギルド内の改革に手をつけたり悪徳冒険者の摘発をしたりとこの数年でかなり風通しをよくしてくれてますよ。あたしたちはそれで随分と助かっています」
ルミーナさんの背後から受付のお姉さんポイ方がそう声をあげて。
「そうですね。こちらのギルドが円滑に運営されているのはルミーナ様のおかげですよね。領内で冒険者同士の諍いもほとんどありませんし」
そう、にいさまも。
やっぱりすごい方なのねと尊敬の眼差しで見つめてしまうわたくし。
「みなさん、褒めすぎよ。お嬢様が勘違いなさるわ」
と、照れたように微笑むルミーナ様もすごく可愛らしくて素敵でした。
♢ ♢ ♢
■冒険者登録は一生のうち一回のみ可能。魔力紋を登録する為例え別の街であっても出自を偽り登録しようとするべからず。
■罪を犯したものはその罪の償いが終了するまで登録は不可能である。また、ギルド登録メンバーが罪を犯した場合、その罪に応じて資格停止等の処分が下される。
■ギルドカードを紛失したものは速やかに申し出、再度発行すること。
■他人のギルドカードを自分の物と偽り使用しようとする者は、その後永久的に資格停止とする。
随分と厳しいことが書かれた注意事項の紙。
にいさまは一緒に渡された登録用紙に必要事項を記入しカウンターまで持って行く。
「ではこの石板に手を置いてくださいませ」
ルミーナさんと交代したさっきの受付嬢さんが、そう言いながら真っ黒の平べったい板を目の前に置いて。
すごく滑らかな、ガラスのような光沢のある漆黒の板。
これが登録の石板でしょうか。
ご本人の魔力紋をこれを使って登録するのでしょう。
でも、その魔力紋の情報をどうやって遠く離れたギルド間で共有するのでしょうか?
——これも『ギア』でできてるわね。プランクブレーンを通じて一度『マザー』に接続して、そこから全世界のタブレットギアと接続してる感じ。
はう、ファフナ。わかるのですか?
——接続を媒介してるのも真那だしね。うん。でもほんと興味深いね。多重世界のこんな場所にもここまでのネットワークを組んでるなんて。
え? ファフナ?
カウンターの中からそう笑顔で話すルミーナさん。
ああでも彼女、セバスリーにいさまの事ご存じだったのですね。
「まあ、その。お嬢様の社会勉強も兼ねて、ですけどね。冒険者登録自体は後々役に立つだろうというのは本音ですよ」
「あら、ではこちらが領主様のお嬢様? ふふ。お母様と似てらしてとってもチャーミングなお嬢様ね。セバスリー様ったらいっつもお嬢様自慢をされてましたし」
「ルミーナさん!」
「まあまぁ、ごめんなさいね、でも、冒険者登録をしてくださるのなら常時依頼分の野獣も冒険者価格で買い取ることも可能にはなりますから。セバスリー様が持ち込む野獣を安値で引き取るのはこちらも気が引けていましたから」
「しかし通常はEランクから登録となるはずでしょう? ランクが低いうちはせいぜい薬草の買い取りくらいしか常時依頼といえども受けられないのでは?」
「それはもちろん、セバスリー様ほどの実力者であれば飛び級での登録となりますわ。私の権限でまずはCランクからということでいかがでしょう?」
「え? 良いのですかそんなこと」
「もちろんです。私の見立てではセバスリー様の実力はBランク、いえ、Aにも届くかと思われますが、流石にまったく功績のない方をそこまで押し上げるのは周囲に悪影響を与えかねない為、Cランクよりのスタートとさせていただきました。申し訳ありませんがご納得下さいますよう」
ルミーナさんはそのボリューミーな綺麗な巻毛をふわさっとかきあげ、こちらを見て笑みをこぼす。その妖艶な微笑みはとても綺麗で。
はうう。会話を聞いている限りではやっぱりこのお方ただの受付のお姉さんには思えないかも。
「ルミーナ様って……」
不思議すぎて思わずそう口走ってしまって。わたくしの疑問に応えるようににいさま。
「お嬢様、この方はこちらの冒険者ギルドのギルド長をなさっているルミーナ・バッケンバウワー様です。お父上のブラン様は騎士爵で騎士団の要職についていらっしゃいます」
「ギルド長様!!」
「ふふ、アナスターシア様。ギルド長と言っても私はまだまだ若輩ですから。ベテランの方々に助けていただいて何とかやっているところですわ」
「そういって、ルミーナ様はかなりのやり手ですからね。ギルド内の改革に手をつけたり悪徳冒険者の摘発をしたりとこの数年でかなり風通しをよくしてくれてますよ。あたしたちはそれで随分と助かっています」
ルミーナさんの背後から受付のお姉さんポイ方がそう声をあげて。
「そうですね。こちらのギルドが円滑に運営されているのはルミーナ様のおかげですよね。領内で冒険者同士の諍いもほとんどありませんし」
そう、にいさまも。
やっぱりすごい方なのねと尊敬の眼差しで見つめてしまうわたくし。
「みなさん、褒めすぎよ。お嬢様が勘違いなさるわ」
と、照れたように微笑むルミーナ様もすごく可愛らしくて素敵でした。
♢ ♢ ♢
■冒険者登録は一生のうち一回のみ可能。魔力紋を登録する為例え別の街であっても出自を偽り登録しようとするべからず。
■罪を犯したものはその罪の償いが終了するまで登録は不可能である。また、ギルド登録メンバーが罪を犯した場合、その罪に応じて資格停止等の処分が下される。
■ギルドカードを紛失したものは速やかに申し出、再度発行すること。
■他人のギルドカードを自分の物と偽り使用しようとする者は、その後永久的に資格停止とする。
随分と厳しいことが書かれた注意事項の紙。
にいさまは一緒に渡された登録用紙に必要事項を記入しカウンターまで持って行く。
「ではこの石板に手を置いてくださいませ」
ルミーナさんと交代したさっきの受付嬢さんが、そう言いながら真っ黒の平べったい板を目の前に置いて。
すごく滑らかな、ガラスのような光沢のある漆黒の板。
これが登録の石板でしょうか。
ご本人の魔力紋をこれを使って登録するのでしょう。
でも、その魔力紋の情報をどうやって遠く離れたギルド間で共有するのでしょうか?
——これも『ギア』でできてるわね。プランクブレーンを通じて一度『マザー』に接続して、そこから全世界のタブレットギアと接続してる感じ。
はう、ファフナ。わかるのですか?
——接続を媒介してるのも真那だしね。うん。でもほんと興味深いね。多重世界のこんな場所にもここまでのネットワークを組んでるなんて。
え? ファフナ?
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