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加護。
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ナリス様は優しい。
わたくしには勿体無いほどの殿方だと思う。
わたくしのことを愛してくださっていたとわかった時には本当に嬉しかったし、結婚のお約束をくださるなんてとその時には幸せで頭の中がいっぱいでそれ以上考えられなくなっていました。
けれど。
冷静に考えてみると、そう簡単には物事は運ばないのだなぁと。
そう半分諦めも入ってしまっています。
こうしてスタンフォード侯爵家のお屋敷に帰ってきてしまったわたくしには、もうあまり積極的に彼に会いにお伺いすることもできずで。
「ああごめんよ私の可愛いアナスターシア。お前をあんな王子と婚約させたことは私にとって痛恨の極みだった。もう王族に嫁げなどとは言わないよ。お前はこの家で好きなだけ過ごせばいいのだからね。なーに、王家からの横槍など私が跳ね返してあげるから。心配しなくていいんだよ」
おうちに帰るなり事情を聞いたお父様がわたくしを抱きしめてそうおっしゃったかと思うと。
それ以降、そのままずっとお部屋で過ごしているわたくし。
幸いファフナがいたから話し相手には困らなかったけれど、あの後色々とどうなったのかも聞きそびれ。
わたくし宛に来るお手紙は、どうやら皆執事のセバスがお父様のところに持っていってしまうみたいで。
はああ。
流石にこれはやりすぎじゃぁないかしらと抗議に行くと。
「あんなことがあったんだ。心無い手紙がもし届いてお前が悲しんだりするのは私は耐えられないからね。いいんだよアナスターシア。お前は何も考えなくとも。ゆっくり養生しておくれ」
と、耳を貸してくださらなくて。
お母様も、その隣で静かに微笑んでいるだけなのですもの。もうどうしたらいいのかしら?
お母様の白銀の艶やかな髪は今でもとても素敵で。
ファフナが天使モードになった時の髪とその色艶はそっくりに見える。
正直、ファフナに生えている猫耳がなければ、顔形もその瞳もきっとお母様の子供の頃とそっくりなのだろう。
これがコレット家の血筋なのかどうかはわからないけど、ナリス様のお母様のフランソワ様も、お母様のお母様であるおばあさまも、そしてお母様のお姉様のアルテイア様も、どことなく皆ファフナと顔立ちが似ているのだ。
ああ、実はもちろんこのわたくしも。
そんな中でも、髪色まで全くファフナと一緒なのはお母様だけ。
きっと、お母様はまだお婆さまのお腹の中にいる時から、グラムスレイヤーの影響を受けていたのかな?
人としての枷が外され、加護が限界まで解放された状態。
それがあの白銀の髪となっているのではないだろうか?
そんな気もする。
お母様が子供の頃から魔力特性値がほぼ無限大に近いレベルで高かったというのは、今や伝説の域に達している。
先日のわたくしはファフナによって少し鍵を開けてもらった状態だったけれど子供の頃からずっとそんな状態だったお母様って……。
大変だったろうな。そうも思ってしまう。
だって、鍵が開いた状態って、とっても苦しいのですもの。
わたくしがまだ慣れていないだけなのかもしれないけれど。
でも。
気をつけないとすぐ意識を失ってしまうくらいには、体に負担をかけている。
そんな状態で。
わたくしには勿体無いほどの殿方だと思う。
わたくしのことを愛してくださっていたとわかった時には本当に嬉しかったし、結婚のお約束をくださるなんてとその時には幸せで頭の中がいっぱいでそれ以上考えられなくなっていました。
けれど。
冷静に考えてみると、そう簡単には物事は運ばないのだなぁと。
そう半分諦めも入ってしまっています。
こうしてスタンフォード侯爵家のお屋敷に帰ってきてしまったわたくしには、もうあまり積極的に彼に会いにお伺いすることもできずで。
「ああごめんよ私の可愛いアナスターシア。お前をあんな王子と婚約させたことは私にとって痛恨の極みだった。もう王族に嫁げなどとは言わないよ。お前はこの家で好きなだけ過ごせばいいのだからね。なーに、王家からの横槍など私が跳ね返してあげるから。心配しなくていいんだよ」
おうちに帰るなり事情を聞いたお父様がわたくしを抱きしめてそうおっしゃったかと思うと。
それ以降、そのままずっとお部屋で過ごしているわたくし。
幸いファフナがいたから話し相手には困らなかったけれど、あの後色々とどうなったのかも聞きそびれ。
わたくし宛に来るお手紙は、どうやら皆執事のセバスがお父様のところに持っていってしまうみたいで。
はああ。
流石にこれはやりすぎじゃぁないかしらと抗議に行くと。
「あんなことがあったんだ。心無い手紙がもし届いてお前が悲しんだりするのは私は耐えられないからね。いいんだよアナスターシア。お前は何も考えなくとも。ゆっくり養生しておくれ」
と、耳を貸してくださらなくて。
お母様も、その隣で静かに微笑んでいるだけなのですもの。もうどうしたらいいのかしら?
お母様の白銀の艶やかな髪は今でもとても素敵で。
ファフナが天使モードになった時の髪とその色艶はそっくりに見える。
正直、ファフナに生えている猫耳がなければ、顔形もその瞳もきっとお母様の子供の頃とそっくりなのだろう。
これがコレット家の血筋なのかどうかはわからないけど、ナリス様のお母様のフランソワ様も、お母様のお母様であるおばあさまも、そしてお母様のお姉様のアルテイア様も、どことなく皆ファフナと顔立ちが似ているのだ。
ああ、実はもちろんこのわたくしも。
そんな中でも、髪色まで全くファフナと一緒なのはお母様だけ。
きっと、お母様はまだお婆さまのお腹の中にいる時から、グラムスレイヤーの影響を受けていたのかな?
人としての枷が外され、加護が限界まで解放された状態。
それがあの白銀の髪となっているのではないだろうか?
そんな気もする。
お母様が子供の頃から魔力特性値がほぼ無限大に近いレベルで高かったというのは、今や伝説の域に達している。
先日のわたくしはファフナによって少し鍵を開けてもらった状態だったけれど子供の頃からずっとそんな状態だったお母様って……。
大変だったろうな。そうも思ってしまう。
だって、鍵が開いた状態って、とっても苦しいのですもの。
わたくしがまだ慣れていないだけなのかもしれないけれど。
でも。
気をつけないとすぐ意識を失ってしまうくらいには、体に負担をかけている。
そんな状態で。
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